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第3話

さすがに気まずいと思いながらも、私は鈴木時矢についていくしかなかった。

一日中、射撃場には私と鈴木時矢の二人だけだった。

彼は私の隣に立ち、体を密着させていた。

「両手でしっかり握って、腕を伸ばして、的を見て。

呼吸を整えて、目線は前方へ。

そんなに緊張しないで」

鈴木時矢は私の手を両手で包み込み、胸が私の背中にぴったりとくっついていた。彼の熱い息が耳元にかかる。

「集中して。そうしないと、的が外れるよ」

私たちがあまりにも近くにいるせいか、思わず不適切な感情が湧き上がってきた。

しかし、どういうわけか、この妙に懐かしい感覚が、目の前の彼が誰なのか思い出せない原因になっていた。

私は心の中で自分を叱った。

イケメンを見かけただけで見覚えがあるなんて、こんな古臭いナンパ手法はもう通用しないのに。

その瞬間、気づいた時には、鈴木時矢はすでに私の手を操り、一発撃っていた。

「バン!」という音とともに、弾丸は的の中心を捉えた。

私は顔を上げて、興奮したまま彼の深い瞳を見つめた。

彼も私を見下ろし、その瞬間、空気が一気に甘くなった。

おそらくはその眩暈にも似た雰囲気に酔ったせいだろうし、彼があまりにも魅力的だったせいもあるだろう。

私は一瞬、自制心を失った。

鈴木時矢の襟元を引っ張り、そのまま彼を引き寄せて唇を重ねた。

本当は軽く触れるだけのつもりだった。

しかし、鈴木時矢は目が恐ろしいほど暗くなり、一方的に私の腰を掴み、そのまま深くキスしてきた。

混乱と情熱が入り混じる中で、私は鈴木時矢に抱き上げられ、そのまま近くの休憩室へと運ばれていった。

休憩室のシャワーからは、水音が響いていた。

私は壁に押し付けられ、その甘美な雰囲気はどんどん熱を帯びていった。

彼のキスは所有欲に満ちていて、私の体に次々と痕跡を残していく。

私は耐え切れず、彼の首に腕を回して少しでも呼吸を整えようとした。

しかし、その動作が彼をさらに刺激したようで、突然私を抱き上げるとタオルで軽く拭き取り、そのままベッドへと運んだ。

一線を越える瞬間で、彼は突然動きを止め、低く掠れた声で言った。

「覚悟はいいか?俺と一緒になるなら、もう離れられないぞ」

私は息を切らしながらも朦朧とした意識で頷いた。

「うん......離れない」

彼は満足そうに頷き、その瞳には熱烈な愛情が溢れていて、それはまるで全身を舐め尽くす炎のようだった。

「いい子だ......」

彼は再び唇を重ね、その手つきはますます激しくなり、私は徐々に耐え切れなくなってシーツを掴みながら彼の名前を呼んだ。

「時矢......」

鈴木時矢は耳元で囁くように微笑みながら言った。

それは呟きにも似た低い声だった。

「今度こそ…もう永遠に離れないからな」

しかし、その言葉さえも私は彼のキスによって意識が朦朧として聞き取ることができず、頭の中まで霞むような感覚だった。

全身の感覚が一点に集中していき、それはやがて頂点へと達した......

海外で過ごしたこの1ヶ月、中村家から次々と人々が訪ねてきて、高橋との和解を求めていた。

しかし私は全て断った。

その結果として電話もひっきりなしにかかってきたが、それも次々とブロックしていった。

そしてこの日、夜9時。

もし以前なら、この時間には決して寝ることなどなかっただろう。

だが、一時間もの「運動」の後では指一本動かすことすらできず、枕を抱えて深い眠りについてしまった。

その時、私のスマホには一通のメッセージが届いていた。

「中村さん、お元気ですか?あの日の話、本当に冗談だったんです!早く戻ってきてください、高橋さんもずっと探していますよ!」

鈴木時矢は私のスマホ画面に表示されたメッセージを見るや否や、迷うことなく返信した。

「華蓮は死んだ。エッフェル塔から飛び降りて粉々になったんだ。今すぐ探しに行けば?早くしないと遺体も見つけられないかもしれないぞ」

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