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第9話

警察の質問に対して、蒼甫は黙って頭を下げ、一切を認めた。母親は崩れ落ちて叫んだ。

「なぜ!なぜ私の娘にそんなことをしたの?あなたは人間じゃない!」

「愛理、ごめんなさい。あなたにそんなことをしてしまって……」

母親は自分の顔を何度も打った。清脆な音が警察署に響き渡ったが、私の心には何の波紋もなかった。心は母親によってすでに砕かれてしまっていた。

罪を軽減するために、蒼甫は母親が死体の心臓を盗んだことを告発した。それは職業倫理に違反する行為だった。彼らの犬猿の争いは滑稽に見えた。

幽霊となって漂い、今日が最も楽しい日となった。陽太と蒼甫は拘束され、裁判の手続きが進められた。父親は皐月と家に帰ったが、母親の罪は病院で判断されることになり、彼女は魂を失い、家に戻るのを拒んで父親の後を追って説明を求めた。

父親は罪悪感に駆られ、母親を連れて行った。母親は私が以前住んでいた部屋を開けた。そこは今では物置になっていた。彼女は物置から私の服を取り出し、胸に抱いて泣いた。探していると、返された手紙の束を見つけた。それは私が幼い頃に母親に送った手紙で、それぞれに「ママ、一度だけでも会いに来てほしい」と書いてあった。

彼女は床に座って、一枚一枚読み進めた。涙が紙を濡らし、文字は滲んで見えなくなった。

最後の手紙には、「ママ、この一生は私を愛してくれなくても、来世は必ず愛してくれるよね」と書いてあった。

窓から差し込む日光が、母親の黒い髪に金色の光を帯びさせ、彼女の目尻のシワが深く見えた。一夜で母親は十歳も老け込んだ。

彼女は手紙を丁寧にノートに挟み、バッグに入れ、まるで宝物のように扱った。

ドアを開けると、父親と皐月が朝食を食べていた。皐月は文句を言っていた。

「愛理の運が悪かっただけで、息子とは関係ない。どうせ16歳の未成年だから、警察も手出しできないだろう」

父親は困惑しながらも頷いた。

「そうだね、愛理が僕の娘だと知っていれば、彼女はもっと幸せになれたのに。でも、今は陽太を守るしかない。息子を失いたくないんだ」

母親は私と同じように無表情で、彼女の手にボールペンが握られていることに気づいた。

彼女はまず父親の頭を殴り、次に皐月を殴り倒した。その瞬間、私は母親の行動を予測した。彼女は父親と皐月の命で私を償おうとしていた。

母親は父親と皐月を歯山近く
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