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第228話

和泉夕子は、運転手が池内蓮司に対して恭敬に振る舞っている様子を見て、少し戸惑っていた……

半ばぼんやりとした状態で車に乗り込んだ後、彼女は隣に座る池内蓮司に向かって思わず尋ねた。

「あなた、一体何をしている人なの?」

イギリスで一年一緒に過ごしたが、池内蓮司が働いているところなど一度も見たことがなかった。それなのに、帰国した途端に「池内社長」などと呼ばれているなんて。

池内蓮司は眉を少し上げ、どこか誇らしげに言った。「建築デザイナーだ」

前の席にいる運転手が振り向き、言葉を補った。「国際的に有名な建築デザイナーで、池内社長は業界で二位の評価を受けています」

和泉夕子は運転手の言葉に合わせて尋ねた。「じゃあ、一位は誰?」

運転手は急に黙り込んでしまい、池内蓮司は窓の外を眺めるだけだった。

どうやら敏感な話題に触れてしまったらしく、車内の温度が一気に冷え込んだようだった。

和泉夕子はふと考え込んだ。一位はもしかして、彼女の姉である春奈なのか?

やがて車はある別荘の前に到着し、運転手は車を車庫に停めると、荷物を下ろし始めた。

彼は荷物を押しながら二人に向かって言った。「池内社長、春奈さん、どうぞこちらへ」

池内蓮司はこの別荘にあまり馴染みがないようで、運転手が前を案内し、彼は後ろから気まぐれに歩いていた。

和泉夕子も足を揃えて別荘に入り、その中の雰囲気を見回した。イギリスにあった別荘の配置と似ているようだ。

これはきっと、池内蓮司が国外にいる間に運転手に指示して購入させたもので、姉が好んだスタイルで設計されたに違いない。

もっとも、そんなことはどうでもよく、彼女は今、沙耶香と志越に会いに行きたいだけだった。

和泉夕子は池内蓮司の目の前で二階のゲストルームを選び、待ちきれない様子で彼に尋ねた。「これで私は出かけていいの?」

池内蓮司は腕を組み、扉の枠にもたれながら、ゆっくりと尋ねた。「車の運転はできるのか?」

和泉夕子は奥歯を噛み締めながら答えた。「できるわ!」

池内蓮司は書斎に向かい、適当な鍵を取り出すと、それを和泉夕子に投げ渡した。「夜十時には戻れ。さもないと、自分で迎えに行くぞ」

和泉夕子は鍵を見つめ、そして彼を見つめた。「姉、国内で運転免許を持ってたの?」

池内蓮司はそんな愚かな質問に答える気もなさそうで、そのまま部屋に戻っ
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