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第206話

杏奈はすぐに応えた。「はい、霜村さん。すぐにお迎えに参ります」

霜村冷司が電話を切った後、冷酷で血の渇望を漂わせる眼差しを上げ、外に広がる街灯で照らされた邸宅を見つめた。

その灯りを通して、まるで九条家の古い屋敷が見えてくるようで、彼の瞳には一瞬で憎悪が満ち溢れた。

「九条夜空、私は父に誓ってお前を殺さないと約束したが、お前が私の大切なものを壊すのなら、私もお前の大切なものを壊してやる。」

「遊ぶなら、しっかり遊んでやろう……」

彼は血で染まった包帯を再び巻き直し、黒い革の手袋を無理やりはめ込んだ。

その後、衣装部屋に向かい、カジュアルな服に着替え、きちんと整えた髪をわざと乱した。

すべての準備を終えると、彼は面具を手に取り、ゆっくりと階段を降りていった……

新井は彼のその姿に少し不安を覚えた。「若旦那、本当に奥様に宣戦布告をするのですか?」

九条家も財閥であり、霜村家にはやや劣るとはいえ、ほぼ同等の勢力を誇る。

さらに九条家の当主は狂気を秘めており、何をするかわからない。若旦那が彼女に宣戦布告すれば、かつてのようにまた血生臭い戦いが繰り返されるのではないかと彼は危惧していた。

霜村冷司は彼を一瞥し、薄く唇を開いた。「私じゃない、俺だ」

そう言い、視線を手に持った面具に移した。夜さんとして彼女の大切な人々を破滅させれば、彼女の桐生志越や白石沙耶香に影響が及ぶこともない。

もっとも、今はもう一人、自分の正体で片付けるべき相手がいる。

彼は新井を見つめ、冷たく命じた。「俺を追跡している奴の脚をへし折って、九条家に送りつけろ」

新井は彼の身を案じていたが、命令されたことは必ず実行する。「かしこまりました、すぐに手配いたします。」

霜村冷司は視線を戻し、冷たい表情で邸宅を後にした。

沢田はすでに門の外で待機しており、彼が出てくると黒いリンカーンをすぐに彼の前に移動させた。

霜村冷司が車に乗り込むと、沢田はすばやくエンジンをかけ、後ろに続く十数台の高級車も一斉に動き出した。

曲がり角に潜んでいた白い小型車がついていこうとしたが、突然現れた新井さんに驚いて急ブレーキを踏んだ。

ドライバーが反応する間もなく、黒い服を着た数人の護衛が車のドアを開け、彼を引きずり出した。

護衛たちが彼を地面に押さえつけると、新井さんは手に持った鉄の棒を振り上
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