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第213話

和泉夕子の命日である一七日、望月景真がA市に戻ってきた。

彼は手に書類の入った封筒を持ち、白石沙耶香のアパートに向かった。

沙耶香はちょうど夕子が好きだった料理をたくさん作り、テーブルに並べ終えたところだった。そこに望月が現れ、テーブルの料理を見て少し驚いた表情で尋ねた。「どうしてこんなにたくさん作ったんだ?」

沙耶香の目に一抹の寂しさが浮かび、「一七日には故人が戻ってくるって聞いたの。夕子が亡くなる前に私が買ったお粥も結局食べられなかったし、きっとお腹を空かせていると思って……だから、彼女が戻ってきて食べたいものを少しでも用意してあげたかったの」と答えた。

その言葉を聞いた瞬間、望月の顔は青ざめ、胸に押し寄せる激しい悲しみに息もできなくなるようだった。

そうだ、夕子は亡くなる前、何も食べることも飲むこともできないまま、この世を去ったのだ。

彼女の孤独な最期を思い出すと、望月の心は深い痛みに蝕まれ、立っているのも辛くなった。彼はテーブルの椅子に手をついて、ようやく体を支えた。

沙耶香は彼の様子に気づき、すぐに席を勧めると、キッチンへ行き、空の碗と箸を並べ、「彼女と一緒に食事をしましょう」と提案した。

望月は蒼白な顔で頷き、沙耶香が渡した箸を手に取り、料理を口に運んだが、味は全く感じられなかった。

沙耶香も喉が通らなかったが、自分を奮い立たせて食べようとした。彼女は強くならなければならなかった。江口颯太と江口香織に対する復讐を果たすためにも、立ち上がる力が必要だったのだ。

望月は数口食べた後、箸を置き、手にしていた封筒を沙耶香に差し出した。

「沙耶香さん。この中には僕の全ての不動産が入っている。全部君の名義に変更した」

「不動産以外の資産も君の口座に振り込んでおいた。具体的な金額は後で確認してくれ」

「それと、あのナイトクラブの仕事はもうやめて、もっと自分を大事にしてくれ。無理しすぎないように」

沙耶香は話を聞くうちに、彼がまるで遺言を残しているかのように感じ、不安に駆られた。「あなた、何をするつもりなの?」

望月は静かに微笑み、落ち着いた表情で言った。「心配しないで。僕はただ、夕子に君のことをちゃんと見守ると約束したから。でも、君も知っての通り、僕は望月家を経営しなければならない。君のために直接時間を割くことは難しい。だからせめて、お金
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