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第027話

「一緒に外を少し散歩しませんか?」

「え?」松本若子は自分の耳を疑った。「どこへ行きますか?」

「病院の中で、周りを少し歩くだけです。どうですか?」

「もちろんいいですよ」松本若子は答えた。「でも、それだけでいいんですか?ただ一緒に歩くだけ?」

「どうかしましたか?嫌ですか?」

「嫌なわけないですよ。でも、歩けますか?」

「歩けますよ。足は折れていませんから」遠藤西也はベッドから降りた。

しかし、二歩歩いたところで、突然胸を押さえ、眉をひそめた。

松本若子は慌てて彼を支えた。「車椅子を持ってきますか?」

「いいえ、歩きたいんです」

遠藤西也の強い意志を感じた松本若子は、何も言わず、彼を支えて歩き出した。

二人が廊下の角を曲がったところで、男女のペアが向かってくるのが見えた。

松本若子は驚いて彼らを見つめた。

藤沢修と桜井雅子、一体どうしてこんな偶然が?

藤沢修は桜井雅子を支えていた。彼女は非常に憔悴しており、顔色も悪い。

藤沢修の視線が松本若子の手に移ると、彼女が遠藤西也の腕に手をかけているのを見て、彼の目に冷たい光が走った。

四人は互いに顔を見合わせ、まるで空気が凍りついたかのように、十数秒もの間、沈黙が続いた。

「お前がここにいるのか?」藤沢修は冷たく言った。まるで彼女がここにいるのが不自然であるかのように。

松本若子は遠藤西也の腕を離そうと思ったが、藤沢修が桜井雅子を支えているのを見て、自分が何を気にする必要があるのかと思い直し、堂々と言った。「遠藤さんは私を助けてくれたが、怪我をされて、私はお見舞いに来た。あなたも桜井さんの付き添い?」

桜井雅子は慌てて言った。「誤解しないで。体調が悪くて、誰にも頼れなかったので修に電話しただけ」

松本若子は微笑んだ。「誤解なんてしていないよ、そういうことだよね?」

松本若子の軽い態度に、藤沢修は心に刺さるような不快感を覚えた。鋭い痛みではなく、じわじわと深く沁み込んでいくような痛みだ。

彼の冷たい視線は遠藤西也に向けられていたが、彼は松本若子に話しかけた。「お前はもう済んだんだろう、さっさと帰れ」

男の命令口調を聞いて、松本若子は嘲笑を浮かべた。まるで昔の時代で、女性が家から出ることを許されないかのように。

「ごめんなさいね、遠藤さんと一緒に散歩に行く約束をしているので。あな
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