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第51話

昨晩のことだった。桜子は密かにバーで酒に溺れていた成谷を訪ね、翌日の記者会見で澤馭が自分を守るために必ず彼を売り渡すだろうと告げた。

「あり得ない!お前......俺を利用して証人にさせようだなんて、そんな手には乗らないぞ、俺はそんなに馬鹿じゃない!」

「もしまだそんなふうに自分を騙し続けるなら、それこそ本当の馬鹿だぞ」

こうして昨晩桜子と成谷は取引を交わした。

「正直に言うわ。私の手元には、あなたと金原澤馭が密かに取引をしていた証拠がある。今までそれを検察に提出していないのは、かつてあなたが私の父の元で働いていたことを考慮して、最後のチャンスを与えるためよ」

成谷は自分が歩んできた二十年の道のりを振り返った。宴会場の小さな管理者から一歩一歩副部長の地位まで登りつめた。それは自分の努力だけでなく、高城社長の重用と支援があってこそだった。

しかし権力を手に入れてからは自己を見失い、最終的には自らの行いに縛られてこのような結果に至ったことを彼は後悔し、そして罪悪感に苛まれた。

「明日の記者会見でもし金原澤馭があなたを売り渡さなかった場合、この資料を私は検察に手渡し全て公正に処理されることになる。

しかし彼が私の言う通りにあなたを切り捨てて自分を守ろうとした場合、あなた自身が検察に彼の全ての罪を告発することになるの。過ちを認め、改めるなら私は最高の弁護士を雇って、あなたの刑罰を最小限に抑えるよう尽力する。

どちらが重いか軽いか、自分で選ぶことね」

桜子の威圧と誘惑によって、成谷は証拠を自ら持ち込み、証人として転じた。そしてそれは金原グループに致命的な一撃を加えた。

彼女は高城万霆が常に言っていた四字熟語を思い出していた——「囲師必阙」

たとえ優位に立っていても、相手を追い詰めすぎるべきではない、さもなくば逆効果になるということだ。

......

高城栩は検察庁に戻って案件の処理に取りかかり、桜子もホテルの仕事に戻るため、兄妹はしばしの別れを告げた。

車で半ばまで進んだところで翔太はバックミラーに映る後を追うマイバッハを鋭く見つけた。

「お嬢様、私たち尾行されています!警察に通報しますか?」

桜子は薄く眉を寄せ後ろのミラーを見つめた。心が少しだけ震えた。

それは宮沢隼人の車だった。

ということは、彼もさっきの記者会見にいたのだろう。ただ
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