共有

第59話

翔太は少し含みのある笑みを浮かべながら言った。「さすがです、お嬢様。先見の明がありましたね。お嬢様が金原家の動向を見張るように命じてくださったおかげで、やっと手がかりを掴みました」

桜子は唇を軽く引き上げ、その笑みに自信が漂っていた。「予想通りね。宮沢家が手を出さない以上、金原家は資金を集めるために必死になるしかないわ。でも、私はもっと大きな資産を売りに出すかと思ってたけど、ただ少しばかりの宝石を売っただけね。ふふ、さすがに大きな家だと、それでもまだ持ちこたえられるのかしら」

「最後の金を燃やして命を繋いでいるだけですよ。いっそのこと、一気に終わらせた方が苦しみも少ないのに」翔太は冷たく鼻で笑った。「我々に汚名を着せようとした報いですよ」

桜子は何も言わずただ質入れ品のリストをゆっくりと眺めていた。

ほとんどの人が知らないことだが、高城家は成京と海門にそれぞれ一軒ずつ、信頼性の高い大規模な質屋を持っている。父である高城万霆は古美術品や書画、珍しい宝石などを収集するのが趣味で、秘かに質屋を設立したのも、手に入りにくい掘り出し物を見つけるためだった。

この質屋のおかげで父はここ数年でかなりの収穫を得ている。質屋に入ってきた品を取り戻せる人はごくわずかだからだ。

突然、桜子の瞳が鋭くなり、指先が微かに震えた。

リストの中に「赤焰の心」という名前を見つけた時、彼女は胸の中に沸き上がる感情を必死で抑えた。その目には嘲笑と憤りが交錯していた。

それは、隼人が柔に贈った婚約の証だった。二年前、彼がそのペンダントを見つめながらぼんやりしているのを初めて見た時、彼女はそれに一目惚れしたのだ。

その時、彼女は夢の中でもそのネックレスが自分のものであればいいと願った。隼人が彼女に贈り物をくれることをどれほど夢見たことか。たとえそれが高価なものでなくても、たとえただの石ころでも、彼女はそれを喜んで受け取っただろう。

しかし、夢は所詮夢でしかなかった。

隼人は、自分が愛する人にしか贈り物をしない。彼女を愛していない彼にとって、彼女はただの石ころさえも贈る価値がないのだ。

それなのに今、柔は彼が込めた情熱と愛情を売り払ってしまった。桜子はそれを見て笑いたくなったが瞳の奥に隠れた苦い思いは隠しきれなかった。

「隼人がこれを知ったら、どう思うかしら」

「何か言いました?
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status