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第81話

彼は警戒したふりをした。「お婆さん、他人のプライベートを聞くのは礼儀正しくないと先生に言われましたよ」

綾子は息を詰まらせた。やっと自分が聞きすぎたことに気づいた。

でも、目の前の子供は本当に賢く、こんなに若いのに、見知らぬ人に対して警戒が高くてすごいと思った。

「ごめん!お婆さんが間違った」

彼女は景之の頭に撫でようとした。

しかし、彼はそれを避けた。

綾子の手がその場で凍りついた。

一方、明一は不快を覚えた。普段、あんまり声をかけてくれなかった綾子お婆さんが、どうして景之のことがそんなに好きだったのか分からなかった。

「お婆さん、景之と遊びに行くから、お邪魔しました」

綾子は止めなかった。「いいよ。ゆっくり遊んでて、何か用があれば、いつでも言ってね」と言った。

二人が離れた後、彼女はまだ気が済まなかった。

秘書を呼んできた。

「あの子の身分を調べて、特に親の身元」

「わかった」

この子は、子供の頃の啓司にそっくりだった。

もし啓司に子供がいれば、間違いなく彼そっくりのはずだった。

「ところで、啓司は来たのか?」

秘書は時計を見て回答した。「宴会まであと1時間ありますが、黒木社長は向かってる途中だと思います」

綾子はうなずいた。息子が来たら、若い女性にもっと注意を払ってもらおうと思った。

できるだけ早く女を見つけて、孫を産んでもらいたかった。

一方。

紗枝と唯が宴会に出席する前に、ドレスを選び始めた。

二人とも目立ちたくないと思って、普通でシンプルなドレスを選んだ。

しかし、服がシンプルで普通であればあるほど、紗枝が艶やかで美しく見えた。

唯が驚いた。「うわー、きれい」

「他の人達は服で自分を引き立てるが、君は却って服を引き立てるのだ」

紗枝は微笑み、さらに魅力的となった。

実際、唯も悪くなかった。

彼女は紗枝ほどきれいじゃなかったが、でも、見れば見るほどきれいだと分るタイプだった。

二人は出かけた。運転手さんの目を光らせた。

車で黒木家の実家へ向かった。

前に黒木家の実家に行ったのは5年前だった。

時間はあっという間に過ぎ去った。

黒木家の実家の外。

高級車ずらりと並べていた。

おお爺さんの誕生日で、桃洲市の大物はほとんど来ていた。しかもお子
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