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第290話

弁護士という仕事柄、実言は他の人よりも細かいところに気を配っている。

その外国人たちが車で離れていくのを見て、彼はひそかに後を追った。

一方、啓司は自らハンドルを握り、紗枝は助手席に座っていた。

法廷で紗枝が語った言葉を思い出しながら、啓司は口を開いた。「本当に離婚したいのか?」

結末が分かっていても、彼はもう一度確認したかった。

「ええ」紗枝はうなずき、続けて言った。「あなたが離婚に同意してくれれば、私は何も要求しない。ただ自由が欲しいだけ」

啓司の喉が詰まるような感覚があった。

彼はその話題を続けることなく、別の質問をした。「法廷で言っていたこと、あれは本当なのか?」

紗枝は少し間を置いてから答えた。「もうそれは関係ないでしょう?」

彼女は啓司を見つめ、さらに言った。「もしあなたが離婚を拒むなら、私は本当に全世界に、私がもう別の人と一緒にいると告げます」

紗枝はこれが最悪の手段であることを知っていた。

啓司は面子を何よりも大事にし、築き上げた会社がこのようなスキャンダルで影響を受けることを許さないだろう。

「俺を脅す人間がどうなるか、分かっているか?」啓司は冷静に言った。

紗枝の唇が硬く閉ざされた。

彼は続けた。「前に、不動産の社長が土地と引き換えに数億のプロジェクトを要求してきた。断れば会社に押しかけると言っていた」

「最後には、そいつは川から引き揚げられた」

紗枝はそのことを思い出した。二人が結婚していた頃、ある時期啓司は不機嫌でよく怒っていた。

ある日の早朝、彼女はニュースでその不動産社長が川で見つかったという報道を見て、啓司の機嫌が良くなったのを覚えている。

紗枝の瞳には驚愕が浮かんだ。彼女は冷静を装いながら言った。

「私はただ、離婚したいだけ」

「でも、俺はしたくない!」啓司は冷たく言った。

二人が話している間、前方の曲がり角から一台の大型トラックがこちらに猛スピードで迫ってくることに、彼らは気づいていなかった。

啓司が最初にトラックに気づき、紗枝を見る間もなく急いでハンドルを切った。

しかし、すでに手遅れだった。

トラックが衝突してくる瞬間、啓司は全身で紗枝を守るように覆いかぶさった。

「ドン!」という大きな衝撃音。

その瞬間、紗枝は何かが自分の顔に飛び散るのを感じた。

視界は真っ赤に染まっ
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