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第415話

優子は悠人と一緒に信也を救うために島へ向かうことにしていたが、その前に重要な用事を済ませる必要があった。

車が海辺に止まると、悠人は不思議そうに言った。「優子姉さん、一体何をするつもり?」

「何でもないわ。ある人ときっちり決着をつけるだけ」そう言うと、優子はドアを勢いよく閉めた。

彼女の毅然とした背中を見て、悠人の胸には不安がよぎった。再会してからの優子は驚くほど冷静で、まるで別人のようだった。

まさか彼女は葵に会いに行くのか?だめだ、葵はまるで悪魔だ。優子姉さんには絶対に勝てない!

「優子姉さん、バカなことはしないで!」悠人は窓ガラスを叩いたが、優子は戻ってこなかった。

優子はこれが葵を殺す唯一の機会だと知っていた。

今日が終われば、彼女は完全に霧ヶ峰市を離れるつもりだった。今後、癌で死のうが別の理由で死のうが、峻介とは一切の縁を断つ覚悟があった。

その頃、峻介はちょうど重要な会議を終え、疲れた顔で眉間を揉みながら言った。「今何時だ?」

「もうすぐ5時です。佐藤総裁、今日は家に帰って食事をされますか?」

家に帰る?最近の峻介は優子のことを考えるだけで罪悪感に苛まれ、彼女とどう向き合えばいいのかわからなかった。

「いや、いい」

その時、昇から電話がかかってきた。峻介が電話を取る。「何かあったか?」

「佐藤総裁、奥様が今日ショッピングに行かれたのですが、突然行方が分からなくなりました。彼女がまたこの機会に逃げ出したのでは?」

逃げる?彼女は一体どこへ行ったのか?

「よく探せ。彼女が今のタイミングで出て行くはずがない」

優子は今、孤立無援で、霧ヶ峰市に残って真相を突き止めようとしているはずだ。彼女がここを去るわけがない。

「かしこまりました」

峻介は優子を探しに行こうと動き出したが、その矢先にボディガードから電話が入った。「佐藤総裁、お嬢様が古城を出ました」

「彼女を追え。僕もすぐに向かう」

この数日間、峻介は葵に接近する機会を探していたが、ようやくそのチャンスが訪れた。

彼は昇に連絡し、指示を出した。「優子ちゃんに危険が及ばないよう、しっかり見張ってくれ」

「承知いたしました、佐藤総裁」

その頃、葵は白い長袖のワンピースを身にまとい、腕の傷跡を袖で隠して海辺を歩いていた。まるでくちなしの花のように清らかで美しかった。

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