共有

第348話 おやすみなさい

白芷は驚き、目元に一抹の落胆を浮かべた。

「そんなにかかるの?ゆみたちを楽しませたいのに」

紀美子は白芷の手を引き、

「そうだよ、まだまだかかるから、まずは寝ようか?」

明日は白芷を会社に連れて行く予定だったので、あまり遅くに寝たくなかった。

白芷は紀美子に祈るように目を向けた。

「紀美子、秋山先生がいなくなって、一人で寝たくないの」

紀美子は笑って、

「いいよ、一緒に寝よう」

白芷の顔がパッと明るくなり、紀美子の手をギュッと握った。

「うん、部屋に行こう!」

夜の10時、カフェ。

静恵はサングラスをかけ、記者と個室で話していた。

静恵はコーヒーを一口すすりながら、

「概ねこんな感じだよ」

記者はキーボードを打ちながら、

「狛村さん、もう一度確認させていただきます。

つまり、森川会長の晋太郎さんの母親は援助交際で、森川爺と結婚した後も次郎さんにちょっかいをかけて、次郎さんが国外に逃げる結果を招いたということですね」

静恵は不機嫌そうにカップを置いた。

「もっと大切なことが一つあるんだけど」

記者は笑って、

「狛村さん、焦らないで。Tycの女会長を絡めたいのは分かっています。

でも、事実は事実、誹謗中傷は訴えられるリスクがあるから注意が必要ですよ」

静恵は鼻で笑った。

「お金が欲しいだけなんでしょ?」

「それは厳しい言い方ですが、事実です」

「見栄えが悪いわね。いくら?いつまでに公開できるの?」

「遅くても来週には公開できます」

「早くしてちょうだい。待つのは好きじゃないわ。200万円でいい?」

「十分です、十分です!」

お金を手渡すと、記者は静恵に手を差し伸べた。

「狛村さん、今後ともよろしくお願いします!」

静恵は軽蔑の視線を向け、バッグをつかんで立ち去った。

病室では。

晋太郎はベッドで横になり、眠れずにいた。手に持った携帯電話からは何の連絡もない。

彼は紀美子があまりにも冷酷で非情だと思った。去った途端、まるで別人のように振る舞う。

彼の体の傷は彼女によるものだ。せめて一言の安否確認がそんなに難しいのか?

胸の痛みを堪えながら、晋太郎は強がって起き上がり、苛立ちを抑えきれずに携帯電話を開いて紀美子とのメッセージのやりとりを見た。

怒りを込めてメッセージを送った。

「寝てるのか?」

ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status