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蝋で閉ざされた心
蝋で閉ざされた心
Author: 七月安楽

第1話

林原光一は業界で公認される蝋人形の名手だった。試合を準備するために展覧会を見学してインスピレーションを探していた。

隅にある一つの女性蝋人形が彼の注意を引いた。

この蝋人形は生きている人のようにリアルだった。

滑らかな蝋の下に淡い青紫の血管が透けて見え、十本の指にはわずかに模様が見えた。

林原光一は驚いて二歩後退し、蝋人形の栗色の瞳がとてもなじみ深いと感じた。

彼はすぐに携帯を取り出して従妹の林原千代の電話をかけた。

電話は長い間鳴ってやっとつながり、林原光一は長い息を吐いたが、声の焦りは消えなかった。

「千代ちゃん、どこにいる?」

「どうしたの、お兄ちゃん。何かあった?」

「いや、ただ......確認したかっただけ」

電話の向こう側の声は愛らしく、長い尻尾を引いて甘えているようだった。「お兄ちゃん、私のことを思ってくれたんだね......」

林原光一は彼にはまだ用事があると言って電話を切り、すぐに警察に通報した。

警察は現場を封鎖し、鑑定のために林原光一の同僚を呼んだ。

同僚は蝋人形を見るや否や彼に私と連絡して安全を確認したかと尋ねた。

林原光一は顔をしかめて嫌悪感を示した。「彼女はいつも俺と千代ちゃんのことを邪魔して、理不尽なことを言って、死んだほうがいい」

私は上空に浮いて、心臓の位置に手を伸ばして触った。そこは既にえぐられているが、まだ痛みがあった。

林原光一、あなたの望む通り、もう二度と理不尽なことを言わないのだった。

私は既に死んでいたから。

私は生きている時に熱い蝋を浴びせられたため、熱い蝋液が毛穴に入り込んで肌と一体化した。

肌の表面の蝋を剥がすと、肌も一緒に剥がれ落ちた。大きな塊の皮が落ちて、真っ赤な筋肉、真っ白な骨が現れた。

この光景に、長年の経験を持つ監察医でさえ顔を背けてしまった。

林原光一は自ら手伝った。

彼はメスを一手に、ピンセットを一手に持ち、慎重に私の肌に付着した蝋を少しずつ剥がした。

動作は外科手術を行うように細心の注意を払っていた。

もし林原光一が今冷たい解剖台に横たわっている死体が私だと知っていたら、彼はまだこんなに慎重になるだろうか?

監察医は私の毛髪を採取してDNA鑑定をしようとしたが、残念ながら私の髪は全て一本一本抜かれてしまった。

彼らはまた私の爪の間の人体組織を採取して、犯人のDNAを得ようとした。

しかし、証拠を消すために、私の爪は全てペンチで生きたまま抜かれた。

私のまつげさえも一本一本抜かれて再び接着された。

私の内臓は口から入れられた金属のフックで粉砕されて排出された。

仕方なく、警察は技術専門家の井上健人を見つけて目の虹彩を鑑定して私の身元を確認した。

実は、私は井上健人のアシスタントだった。

彼は蝋人形を見るや否や吐き出し、何度も心構えをしてもまた吐き気をもよおした。

でも井上健人はその栗色の目を認識した。

「この目は菊池美奈に似ているな。もう何日も彼女を見ていない。林原光一、彼女に電話した?」

林原光一は嫌悪感を隠しきれずに首を横に振った。「この前彼女を海に連れて行かないことを不満に思って、俺と大喧嘩した。今はきっと海風を浴びて楽しんでいるだろう」

「そう?どうして旅行に行っても休暇を取らなかったの?彼女はいつも無断欠勤なんてしないのに......」

井上健人は眉をひそめて、林原光一に解剖室を出たら必ず私に電話して安全を確認するように言った。

「ここ数日菊池美奈は仕事の時いつも心ここにあらずだった。尋ねても何も言わない......」

林原光一は彼の話を遮って顔をしかめて軽蔑した。「彼女はいつもそうだ。いつも疑心暗鬼で、俺と従妹の間に何か変なことがあると思っている。実は変なのは彼女だ」

データを採取し終えて、林原光一と井上健人は一緒に立ち去った。監察医と刑事が話していた。女性の死体の右足には骨が一つ欠けていた。

「新しい怪我じゃない。古い怪我だろう」

すると、林原光一の足が止まった。

何年も前、私たち二人は一緒にスキーに行った。私は足を怪我して、骨折が治った後、米粒大きさの骨がどこにも見つからなかった。

彼は少しためらって、携帯を取り出して私の番号を押そうとしたが、林原千代の電話が入ってきた。

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