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第5話

息子が亡くなったのは彼のせいであり、久佳が倒れたのは私のせいでない。

前回の出来事を前田修一も目の当たりにしていたが、私は決して久佳に力を加えていなかった。

言い換えれば、前田修一は私の味方をするつもりなどなく、ただ無条件で彼女を愛していただけだ。

息子の死という重大な出来事がどうして久佳と絡むことができるのか、私はずっと理解できなかった。

前田修一の折れる姿を目の前にしても、私の心には何の感情も湧かなかった。

彼が突然振り返ることは、かつて私が最も望んでいたものだった。

しかし、息子はもういない。今さら彼が振り返ったところで、私には何の価値もない。

私が突然冷たい態度を取るのを見て、前田修一も受け入れられないようだった。

彼は私の体を何度も揺さぶり、以前のように自分を愛してくれるよう試みていた。

「瞳、どうして今、俺に何の感情も見せないんだ?それとも外でより良い選択肢を見つけたのか?」

「僕が本気で離婚に同意したら、君は家を失うことになるんだ、信じるか?」

私は肩に置かれた前田修一の手を振り払った。

今日に至るまで、彼は私が彼なしでは生きていけず、自力で生き抜く力がないと思っている。

浮気をしたのは彼であり、妻子を捨てたのも彼で、私ではない。

だが、私が専業主婦になったのは、彼の「温かい家が欲しい」という言葉のためだった。

私は耳に付けていたイヤリングを外し、前田修一の前に置いた。

これは彼が事業を始めたばかりの頃、私に贈ってくれた最初の贈り物だった。

その頃の彼は「一生君を大切にする」と約束してくれたが、その約束は愛している時だけのものだった。

これまでの長い年月、私はそのイヤリングを宝物のように大切にしてきた。彼が完全に成功しても、そのイヤリングを捨てなかった。

それは私にとって特別な意味があったからだ。

しかし今、そのわずかに残っていた情も前田修一の手で全て壊されてしまった。

以前、会社の年会に参加した時、富裕な妻たちはいつも私に「なぜまだそのイヤリングを付けているのか」と尋ねてきた。

私はいつも笑顔で答えていた。「これは私にとって特別な絆を象徴しています」と。

私は前田修一の人生で最も暗い時を共に歩んだ。

だが、彼が成功して最初にしたことは私を捨てることだった。

今回は、前田修一が何を言おうと、私は心に決め
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