第1話

息子の後始末を終えた後、私はまるで亡霊のように家に戻った。

テーブルの上には、今日、彼のために高額で特注したケーキがまだ置かれている。

しかし、彼の誕生日はそのまま忌日に変わり、息子はもうケーキを食べることができなくなった。

彼の最期の姿が頭の中で何度も蘇り、私の涙が途切れた糸のように次々と零れ落ちた。

「僕が無力でお父さんを助けられなくてごめんね。お母さん、自分を大切にしてね」

息子がそう言ってから、腕を伸ばし、苦しそうに私の目元の涙を拭ってくれた。

しかし彼はもういない。この世で最後の肉親も私の元を去ってしまった。

外では激しい雨が降りしきり、まるで息子の今日の不公平さを代弁しているかのようだった。

しばらくして、前田修一が戻ってきた。彼の腕には、長年愛し続けてきた初恋が抱かれていた。

「リビングの電気もつけずに、ここで何をしているんだ？久佳を怖がらせないでくれ」

「そうだ、さっき外で雨が降っていて、久佳の服が少し濡れてしまった。彼女に着替える服を探してくれるか？」

彼の言葉には久佳への思いやりだけが溢れており、息子のことには一切触れていなかった。

心に長年押し込めてきた感情が、この瞬間にすべて爆発した。

「今日は息子の誕生日だ。それなのに一緒に過ごすどころか、彼を犬扱いして使ったなんて、何を考えているんだ？」

「あなたの何気ない冗談が息子にどれほどの傷を与えたか、わかっているのか！」

必死に感情を抑えようとしているのに、前田修一の冷静な様子が私をますます狂人のようにさせた。

彼は普段からずっとこんな調子で、私たち親子に無関心だった。

彼の心を揺さぶるのは、長年愛し続けてきた久佳だけだった。

息子が右脚を犠牲にしてまで修一を守った時ですら、彼は涙ひとつ流さなかった。

「何かあるならちゃんと話そう。裕也に申し訳ないと思うなら、後で彼にケーキを予約してやるよ」

「でも今大事なのは、久佳の服が雨で濡れてしまったことだ。彼女のためにスカートを探してくれないか？風邪を引かせたくないんだ」

前田修一の冷たい言葉を聞きながら、私はソファに力なく座り込んだ。

彼は息子を常に名前で呼び、恐らく彼の心の中では障害のある息子など家族に値しない存在だったのだろう。

その時、彼の腕の中の伊達久佳は挑発的な目つきで私を見てきた。まるでこう言っているかのようだった。

「見てごらん、あなたが愛してきた男が、私が指を少し動かすだけで私の周りを回っているのよ」

私は寝室に戻り、荷物を取り出して出発の準備を始めた。

「息子にあなたたち二人を楽しませるように言ったけど、もういい。今回は私が自ら離婚して、あなたたちを楽しませてあげるわ」

彼の穏やかな顔にようやく一瞬の動揺が浮かび、その直後には私への嫌悪が現れた。

「瞳、そんな風に僕の注意を引こうとする必要はない。逆に僕は君のことをもっと嫌いになってしまうよ」

私は前田修一と大学で恋に落ちた。付き合い始めた頃、彼の生活環境は決して良くなかった。

私は働きながら学び、彼の学費を補っていた。その後、彼の母親が珍しい病にかかってしまった。

私の家族も貯金を取り崩し、彼の母親の治療費を負担した。

実は私の家も裕福ではなかったが、愛し合う二人が一緒にいれば、日々は徐々に良くなると信じていた。

久佳は彼の初恋だったが、当時は彼の家の状況を嫌って、留学を口実に新しい恋人と共に去ってしまった。

「元恋人が泣けば、今の恋人は負ける」と人々は言う。

初めはそんな話を信じていなかったが、今や久佳の突然の再登場が私のすべてを奪った。

今になって、自分の立場がはっきりと見えた。前田修一の心の中で、私は彼の初恋にすら及ばないのだと。

久佳は私たちの口論が激しくなるのを見て、急いで前田修一の腕から立ち上がった。

彼女の言葉は一見、私たちの感情を和らげるようだったが、実際にはさらに矛盾を深めていた。

「瞳さん、怒らないでください。ただ、私が酔っていただけで、修一さんが送ってくれたんです」

「それに、雰囲気を和ませるためにあなたの息子と冗談を言っただけですよ。気にするなんて大げさですよ？」

久佳はそう言ってから、バッグから翡翠のブレスレットを取り出し、私のそばに差し出した。

「瞳さん、見てください。これは修一さんが特別に作った玉のブレスレットです。とても美しいでしょう？」

彼女が私の前にブレスレットを置くとき、わざと自分の手首に着けているブレスレットを揺らして見せた。

二つの翡翠のブレスレットは一見似ているが、よく見ると色合いが微妙に違っていた。

そして、目の前のブレスレットは私のサイズと合っていないことは一目瞭然で、前田修一もそれを知っているはずだった。

このブレスレットは明らかに、久佳の余り物から作られたものだった。