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第56話

唐沢梅は車に乗り込んだが、唐沢武たちは車に乗らず、戻ることにした。江本辰也は車を運転し、軍区へと向かった。

しばらくして、彼は唐沢家の車列に追いついた。しかし、彼は焦らず、ゆっくりとその後を追った。

唐沢家は二流の一族とはいえ、少しばかりの財力はある。家族が乗っているのはすべて高級車で、柳太一も家から高級車を出して、唐沢家の面目を保とうとしていた。

唐沢家の車列は豪華で、見栄えが素晴らしかった。数十台の車が連なり、太鼓の音が鳴り響き、非常に賑やかだった。

特に車列の先頭に掲げられた横断幕が目を引き、通りすがりの人々の注目を集めた。多くの人がスマートフォンを取り出し、この光景を撮影してインスタにアップし、大きな話題となった。

「唐沢家はすごいな」

「星野市の大きな家族ですら招待状をもらえなかったのに、唐沢家がもらえるとは」

「良い婿を見つけたおかげだな」

多くの人が口々に語った。

唐沢健介はベンツの後部座席に座り、周りの見物人を眺めながら、顔に笑みを浮かべ、口が閉じられないほど喜んでいた。

唐沢家の者たちも誇りを感じていた。

明王の就任式に参加するということは、唐沢家が明王に認められ、本当の意味での名門になったことを意味していた。

「あなた、ありがとう」唐沢麻衣は喜びに満ちた表情で、運転している柳太一に思わずキスをした。彼が運転しているのはフェラーリのスーパーカーで、家から借りてきたものだった。

柳太一は誇らしげな表情を浮かべた。「麻衣、俺は君に恥をかかせないって言っただろ?どうだい、嘘じゃなかっただろ?唐沢家の顔を立てたよな?」

「うん」唐沢麻衣は感激して涙ぐみそうだった。

「でも、父さんが言うには、この1億円じゃ手配するのに全然足りないんだって」

「後でおじいちゃんに言って、もう少し出してもらうよ」

「麻衣、俺はそういう意味で言ったんじゃない」

「あなた、私たちに大きな助けをしてくれたのに、柳家にお金を負担させるわけにはいかないわ。安心して、このくらいなら、うちの家でも何とかできるから」

その言葉を聞いて、柳太一の顔に喜びが浮かんだ。

車列は豪華に進み、太鼓の音は途絶えることなく鳴り響き、道路の両側にいる見物人たちはみなスマートフォンを取り出して撮影していた。

やがて、車列は軍区に到着した。

就任式はまだ始まっておらず、
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