共有

第229話

その動画が公開されると、南雲華恋の思惑通り、誰も彼女を非難することはなく、逆に同情の声が寄せられた。

【南雲華恋は本当に優しいね。こんな時でも両親のことを考えている。心が傷つかなかったら、家族との決裂なんてことにはならなかったかもしれない】

【こう言われると、何だがもっと怖くなったよ。今の状況だけでも、南雲雅美が南雲華恋を拉致したり、故意に彼女を貶めてネットで暴力を受けさせたりしていることが暴露されている。まだ出ていないことがどれだけ恐ろしいのか】

【だから南雲華恋が両親から離れたのは正しい判断だ。早く関係を断ち切って!この両親は本当に恐ろしい!】

【そう、絶対に関係を断つべき!】

【南雲華恋のこと抱きしめてあげたい、彼女は本当に可哀想だ!】

ネットのコメントを見ながら、賀茂時也は微かに笑みを浮かべた。

小早川は見て、ようやくホッとした。

彼は今日の仕事の気分が波乱万丈だった。

最初は酷く叱られると思っていたが、意外にも社長はただ無表情で、彼は少し安心して話しかけてみた。ところが、部屋の空気は再び冷え冷えとしてしまった。

しかし今、賀茂時也の顔に少し春の兆しが見えた。

「若奥様の件、解決したんですか?」小早川は思い切って尋ねた。

賀茂時也は「うん」と答え、小早川を一瞥した。「小早川、どうして汗だくなの?服も濡れてるじゃないか?」

小早川は心の中で「あなたのせいよ!」と思いつつ、口に出したのは「暑いんです、暑いせいです」

賀茂時也はデスクを軽く叩いた。「南雲グループの資料は持ってきたのか?」

「もう準備してあります。後でお持ちします」小早川は好奇心を抱いて聞いた。「なぜ急に南雲グループの資料が必要なんですか?」

以前の南雲グループには見込みがあったが、今では賀茂家に支配された空っぽの殻に過ぎなかった。小早川には、南雲グループの資料を読んでも、意味がないように思えた。

賀茂時也は怠そうに彼を見た。「余計なことを言うな、早く持って来い」

「はい」小早川は急いで催促に行き、しばらくして大量の資料を抱えて戻ってきた。「時也様」

賀茂時也は資料を広げ、真剣に読み始めた。その姿勢から、小早川は賀茂時也が南雲グループを買収しようとしているのではないかと疑った。

「いや、その必要はないでしょ」と、小早川は思った。

その時、賀茂時也の電話が鳴っ
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status