心はすでに灰のごとし
伸と結婚して5年目、鹿乃は伸の初恋が彼のスマホを使って送ってきた挑発的なボイスメッセージとベッド写真を受け取った。
「帰国して六ヶ月、ちょっと指を動かしただけで彼はもう私のもの」
「今夜、彼が私のために用意した青い花火。青は好きじゃないから、無駄にしないように、あなたたちの結婚記念日の時までとってあげる」
一ヶ月後、彼らの結婚5周年記念日。
鹿乃は窓の外に咲く青い花火を眺め、向かい側の空席を見つめた。
伸の初恋は再び挑発してきた。二人でキャンドルディナーをしている写真を送ってきたのだ。
鹿乃は泣きも騒ぎもせず、静かに離婚届に署名し、秘書に結婚式の準備を指示した。
「奥様、新郎新婦の名前は誰にいたしますか?」
「小笹伸と木暮深雪で」
7日後、彼女はノルウェーに飛び、自ら二人の結婚を見届け、祝福を贈った。