再会した元カレ上司は、私の愛娘の父親でした
数年ぶりの再会は、会社の会議室でのことだった。
立花遥(たちばな はるか)の目の前に現れたのは、かつての恋人で、子供の父親でもある九条湊(くじょう みなと)だ。
子供を奪われるかもしれない。そして、今の生活を壊されたくもない――遥はただ、逃げ出したい一心だった。
「俺たちの関係はただの遊びだ」と、湊は言った事がある。だから遥は彼とあくまで上司と部下という関係を保つことにした。
周囲の女たちが湊に媚びを売ろうとも、彼が冷ややかな目で誰にもなびかない様子を、遥はただ他人事のように見つめていた。
一方、湊は誤解していた。遥が自分を捨て、すぐに他の男と結婚し、子供まで作ったのだと。
裏切られた憎しみで、湊は彼女を追い詰め、後悔させてやろうと画策した。
しかし、彼女が窮地にある姿を見ると、湊は隙をついて彼女に近づき、いっそ子供ごと自分のそばに置いて暮らしたいという衝動に駆られた。
湊は、真実を知った日、自分がしていた復讐は結局自分自身を傷つけていただけだと悟った。
「距離を置くって、あなたが言ったのよ」
そう言い返す遥の顎を強引にすくい上げ、湊は妖しく目を細めた。
「距離か、ゼロ距離にしてやってもいいんだぞ」