センターを譲る少女たち
デビューまでの残り二ヶ月。
グループ公演を前に、同じチームのメインダンサーが突然、私にセンターを譲ると言い出した。
私は不思議そうに尋ねた。
「メンターが綾里ちゃんの表現力を評価していたのに、どうしてこんなチャンスを手放すの?」
「山田さんの......方が......ふさわしいと思うから......」
彼女は無理に作った笑顔で答えたが、それは泣きそうな表情に見えた。
服の裾を握りしめる指が、本心ではないことを物語っていた。
彼女の様子がおかしいので、私は聞いてみた。
「ダンスの動きが大きすぎて、邪魔だった?」
すると彼女は急に体を震わせ始め、恐怖に満ちた目で私を見つめた。
しばらくの沈黙の後、やっと絞り出すような声で言った。
「お願いです......私を放っておいて......もう争いませんから」
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