襤褸
移住して五年目のこと。夫の川原昭文が、昔の恋人である村上知恵と彼女の子供を突然家に連れてきた。
「知恵たちは日本に来たばかりだから、しばらくうちに住むことになった」
私はこのことで、彼と大喧嘩になった。
私の誕生日の日、川原は離婚協議書を私の前に差し出し、せかすように言った。
「早く署名してくれ。知恵がここのビザが必要なんだ。とりあえず形だけの離婚だから」
私は眉をひそめ、事情を確かめようとした。
すると川原は私を指差しながら、情け知らずだと怒鳴った。
程なくして、村上のツイートを見つけた。
「昭文が私と子供のために離婚してくれた!やっと落ち着き先が見つかった」
私は黙って「いいね」を押し、離婚協議書にサインをした後、会社に日本への異動を申請した。