31. ともかく、自分は今まで散々好き放題してきたのに漸く自由を自分の時間を持てるようになって自由を満喫するために旅立った葵に、早く帰って来いだとかどうしてるんだとか、ちまちましたことは言いたくないのが本心だ。 デーンと構えて帰って来た時にCOOLにカッコ良く出迎えたい。 そんな体裁ばかり気にしてじっと待っていたのだが2ヶ月を過ぎようかという頃になっても葵が帰って来る気配はなかった。痺れを切らした俺は彼女の暮らしている町へ行ってみることにした。 心情的にもうカッコ付けてる場合じゃなくなっていた。 自分の中でもしかしたら姉の言っていたように葵が帰って来ない片道切符で出掛けたのでは? と多少なりとも思うようになっていたから。 いちども葵の方から近況等についての簡潔なメールさえ来ないのだ。 それについても不可解だった。 何らかの意志でもって、俺に近況のメールさえ送って来ないのではないか。― 西島と葵の畑交流 ― 西島さんの畑仕事は玄人跣(くろうとはだし)に見える。 本を読んだり、畑を耕している先人たちとの交流を広げたりと自らも学び、そしてまたいろいろと教えを請うてきたようだ。 私の場合、室内やベランダでちょちょいとプチトマトあたりを育ててみる、みたいな感覚でやれればいいなぁ~と思っていたので、西島さんからほんの少し間借りできたのはLuckyだった。 それに私が畑に行くと2回に1回の割合で西島さんがいるので先生(←栽培の先生)もすぐ側にいて更にLucky感が半端ない。 美しい自然に囲まれた静寂の中、身体を動かすって何て素敵! 開放感が半端ない。 会話するにはもってこいなのだ。 レストランや喫茶店のように飲食店等で向かい合っているのとは断然違う心地良さがある。 気持ちの持ちようが違う。 他者と向き合う時にそれは異性であれば特に……。 まず、沈黙する時間に気まずさがない。 最初の頃は、私が分からないことを聞いて教えてもらうくらいの会話だったけれど、今は結構くだらないことも話す。 もっぱら無口な西島さんは聞き役なんだけどね。 世代が同じなので古(いにしえ)の芸能人だとか政治家アスリート、様々な分野で活躍していた人たちの話をしてもあ・う・んの呼吸で通じるのが心地よい。 昔のアニ
Last Updated : 2025-04-12 Read more