21. 未だに男女の色恋沙汰で私を苦しめ続ける夫を心底憎いと思いながら、相反する心の内と向き合う私がいた。 それは……離婚して暮らしていく自信がなかったこと長年夫を心底嫌いになれなかったことどうしても断ち切れなかった未練があったこと踏ん切りをつけられず無念さを抱えながら婚姻生活を続けてきたことそんな中、熟年離婚を視野に貯蓄に励んできた。 好きな英語を活かして通訳の資格を取った。 できることをできる範囲で地味にコツコツと準備を進めてきた。 ホップ、ステップで留まっていたけれどジャンプのその時がきた。 夫から生活費は潤沢に貰っているので、時々女たちのことを調査し、書類や写真等々と証拠はその都度残して実家に保存している。 いざジャンプをすると決めたら、いろいろと過去のあれこれが走馬灯のように駆け巡る。 半分妻公認とはいえ、よもや知らん振りを決め込んでいた私がこんなに自分の女性関係を把握しているとは、思ってもいないことだろう。 夫は私にはいつだってスマートで優しい態度でいるけれど彼のその時々の素振りや雰囲気で、あぁ今すごく夢中になってる可愛くて若い子がまたまたできたんだなぁ~とか悲しいことに何となく分かってしまうのだった。 私の愛は、浮気をそれとなく公言された日に消えた。いや、違う。 静かにフェードアウトして雲散霧消していった。 私は少しほっとした。 だって、浮気を公認した妻の肩書きの上に、いろいろな女を渡り歩く男を愛するなんて、正気の沙汰じゃないもの。 愛するのを止められなかったら、自死しているかもね。 私は勇気も意気地もなくここまできたけれど、何度も自分に問うてきた道だから、後悔はしない。 次の人生があるなら、私だけを見てくれる人がいい。 そんな人と共に白髪になるまで、死がふたりを分かつまで穏やかに生きたい。 不誠実な夫が一番に愛しているのは自分(夫)だけって知ってる。 浮気相手の大勢の女たちも私も彼にとっては、ただの慰み者。 私はたまたま最初に出会い結婚し、妻の座につけただけに過ぎない。分かってた。だけど考えないようにしてた。 来世でも今の夫のような人と縁を結ぶとしたら心底たまらない。 今更行動を起こしても、夫にとっては蜂の一刺しとも思われないような瑣末なことかもしれないけれ
Dernière mise à jour : 2025-04-08 Read More