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第21話 ◇さよならと言おう

21. 未だに男女の色恋沙汰で私を苦しめ続ける夫を心底憎いと思いながら、相反する心の内と向き合う私がいた。 それは……離婚して暮らしていく自信がなかったこと長年夫を心底嫌いになれなかったことどうしても断ち切れなかった未練があったこと踏ん切りをつけられず無念さを抱えながら婚姻生活を続けてきたことそんな中、熟年離婚を視野に貯蓄に励んできた。 好きな英語を活かして通訳の資格を取った。 できることをできる範囲で地味にコツコツと準備を進めてきた。 ホップ、ステップで留まっていたけれどジャンプのその時がきた。 夫から生活費は潤沢に貰っているので、時々女たちのことを調査し、書類や写真等々と証拠はその都度残して実家に保存している。 いざジャンプをすると決めたら、いろいろと過去のあれこれが走馬灯のように駆け巡る。 半分妻公認とはいえ、よもや知らん振りを決め込んでいた私がこんなに自分の女性関係を把握しているとは、思ってもいないことだろう。 夫は私にはいつだってスマートで優しい態度でいるけれど彼のその時々の素振りや雰囲気で、あぁ今すごく夢中になってる可愛くて若い子がまたまたできたんだなぁ~とか悲しいことに何となく分かってしまうのだった。  私の愛は、浮気をそれとなく公言された日に消えた。いや、違う。 静かにフェードアウトして雲散霧消していった。 私は少しほっとした。 だって、浮気を公認した妻の肩書きの上に、いろいろな女を渡り歩く男を愛するなんて、正気の沙汰じゃないもの。 愛するのを止められなかったら、自死しているかもね。 私は勇気も意気地もなくここまできたけれど、何度も自分に問うてきた道だから、後悔はしない。 次の人生があるなら、私だけを見てくれる人がいい。 そんな人と共に白髪になるまで、死がふたりを分かつまで穏やかに生きたい。 不誠実な夫が一番に愛しているのは自分(夫)だけって知ってる。 浮気相手の大勢の女たちも私も彼にとっては、ただの慰み者。 私はたまたま最初に出会い結婚し、妻の座につけただけに過ぎない。分かってた。だけど考えないようにしてた。 来世でも今の夫のような人と縁を結ぶとしたら心底たまらない。 今更行動を起こしても、夫にとっては蜂の一刺しとも思われないような瑣末なことかもしれないけれ
last updateDernière mise à jour : 2025-04-08
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第22話 ◇どこへ行こうか

22.  今更な時期に私たちの目の前に現れた女(小野寺祐子)のことも心の繋がらない夫のことも、すっきりしようと思った。  手持ちの預貯金をざっと計算。 この日のために溜めてきたヘソクリやバイト代を併せるとすでに8桁越え。 もう父親は鬼籍に入っているが生前贈与や遺産、母からの数回に亘るお小遣いという名目の生前贈与など併せると左端の数字が2にまでなりそうだ。 新天地で仕事を見つければなんとかなりそうだ。 慎ましく年金満額受給できる年まで何とか乗り切れば。 息子たちのことを当てにするつもりはないけれど、万が一のことになっても動いてくれる人間はひとまず2人いる。 いつ動くのか? 今でしょ……って林先生なら言ってくれるよね。 新天地よ、新天地、どこへ行こうか……。 実はもう目星はつけてある。 私は猫が好きでよく猫の出てくる番組を見ている。 その中でも強烈に印象の残っている猫がいる。 コウという8才の雄猫。 産まれた時から身体に麻痺があって歩くのもやっとなんだけれどイクメンでその家にやって来た仔猫たちを大事によく面倒を見て育てている。  その飼い主さんによるとコウは何度も死に掛けては復活を遂げているらしい。 仔猫を育てることで自分も生きる活力を貰っているように見えるとのこと。  コウは某番組で紹介されていてそれで知ったのだけれどその番組を見て私は泣いた。   ティッシュ10枚は使うほどに。   コウの動いている姿、静止している時の顔の表情体調の悪い時の様子、画面から目が離せず食い入るように見たことが思い出される。 他の猫たちから、付かず離れず見守られているその姿は見る者の心を深く強く抉(えぐ)る。 あなたは何のために生まれてきたの? それは自分への問いかけにも代わるもので……。知らず知らずの内に、気が付くと自分に問い掛けていた。 私は何のために生まれてきたの? 私は夫からこんなに散々理不尽なことをされるために生まれてきたんじゃない。  誰かを愛し、誰かに愛されるために生まれてきたのだ。 私はこの猫chanのいるキャンプ場のある街へ行くことに決めた。   当座生活する資金はあるけど、仕事もできれば早い時期に見つけたい。 とにかく、ここに留まっていてはいけない。 もう誰にも私を悩ませたり
last updateDernière mise à jour : 2025-04-09
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第23話 ◇独りになりたい

23. 一度現地調査のため、1泊2日で現地へと出掛けてみることにした。 そこは信州方面の山の中。 駐車場があって、バーベキューなどもでき、広い敷地はにテントを張り宿泊することもできる場所。 コウは体調を崩しやすい猫chanだから心配、、今も元気でいてくれるだろうか。 果たして……             コウに会えた。 奇跡に思えた。 コウ、いいお顔してるね。 イケメンくんだ。 ちょうど調理の募集があり、ピザとかも作れると尚、良いとのこと。 体力がないから短時間で交渉したところ、実際働くのは1ヶ月先でも良いとのことでOKを貰えた。 キャンプ場には泊まれるバンカーもあるのでこちらに来てから住む所はじっくり見てから決めることにした。 コウや自然からかごいパワーを貰った。 女のことも夫の今までの所業もいつの間にか頭の中から消えていた。 コウがいるのは信州の山の中だ。 結構自然災害が多く、特に地震などが心配。   地震が来たら津波などもあると相当ヤバイかも……なんてふと思った。 その時はその時。 人は生まれて来る時もひとり、死に行く時もおひとりさまでいいやって。 誰にも心を残さず行けたら本望だ。 その時はコウのことを想うかも。 馬鹿みたい、最愛の息子たちだっているのにね。 私は夫と結婚して長く一緒にいたことで人間不信になってしまった。 最愛の息子たちのことさえ、他人のように見えるとは相当重症かもしれない。            ◇ ◇ ◇ ◇ 私は調査旅行から帰宅すると、今度は帰って来ない可能性の高い旅に出るための準備に取り掛かった。  息子たちには正直に話した。    生活を軌道に乗せられて上手くいきそうだったらその地で第2の人生を生きてみようと思っていることを。 私は上手くいかなかった場合のことも考えていて家を出て行くとか、離婚をして下さいとか言うのではなくあくまでも旅行に出るということにするつもりだ。 これは自分を経済的に守るための保険。 できるかできないか、予測の付かないことに危ない橋を渡るわけにはいかないもの。 長期に亘って帰らずとも、あくまでも旅で押し通すつもり。 籍を抜くとかはあまり今のところ考えていない。まずは地盤固めが先だから。 そして、とにかく独り
last updateDernière mise à jour : 2025-04-09
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第24話 ◇マイブームは猫

24.「今まで旅行なんてめったに行かなかったのに先月に続いてまた行くのかい?」「うん、今私のマイブームが猫でね。いろいろ情報探して猫を追いかけて行こうかと思ってるの」「場所は決まってんの?」「TV番組で見たんだけど、何かね北海道にも極寒の中息づいてる猫たちがいるみたいで、行ってみたいと思ってるの」「そんな寒い土地にも猫っているんだ!」「私も驚いたけど、外で普通に暮らしてるの。               寒い所にいるからやっぱり毛はフサフサしてて長めなのよ」「君がそんなに猫に嵌ってるなんて知らなかった」              「フフッ、嵌ったのつい最近だから」「君が帰って来たらネコSHOPへ仔猫見に行こうか!」「仔猫、可愛いでしょうね」 夫には、次の旅行へ行く話を上手く取り付けた。 あっちで、新しい生活の場で飼うよ、猫。 きっと……。そう呟いた。 夫の耳には届かない私の胸のうちで。             ◇ ◇ ◇ ◇  私は調査旅行から約1ヵ月後、片道切符しか必要のない新たな旅に出た。 夫には適当なことを言っただけ、行き先はもちろん北海道などではない。 あれから小野寺祐子とは会っていない。 私は教室を止めた。 流石に? 彼女、自宅までは出張って来なかった。 夫が何か手を打ったのか? 私は彼に何も聞かないし、夫もまたその後何も私に言ってはこない。 まぁ、今更だけどね。  私は再び旅に出る。 失敗して例え帰宅することになったとしても、しばらくの間は家を留守にするわけで、またきっと夫は羽を伸ばすに違いない。 そんな状況だから、小野寺祐子に言い寄られればすぐに復縁するかもしれない。 まっ、好きにすればいいっわよ……フンっ! いざ、行かん! 私はもう2度とこの家に、夫の元に戻って来ない覚悟でいろいろなモノを処分し間に合わなかったモノはメモして息子たちに託した。 まだあちらでの新居を決めていないので、持って行きたい大きめのモノはコンテナの倉庫に預けている。 これは後から息子たちに送ってもらうつもり。 あんまり部屋を空っぽにしてしまうとまずいし、帰って来ないこと前提の旅の準備って難しい。 旅というより、家出といったほうが正解なんだけども。 大体の目星を付けているせいか、不安よりもワク
last updateDernière mise à jour : 2025-04-09
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第25話 ◇コウ(猫)のいるキャンプ場

25. 私は家を出る日、わざと夫が仕事に出掛けている時間帯を選んだ。 下の息子に車で最寄の駅まで送ってもらった。 大きな荷物はコウ(猫)のいるキャンプ場で受け取ってもらえるよう先に送っているので、手荷物はその分半減。 電車と新幹線を乗り継いで旅先へと向かった。「母さんが新しい場所で落ち着いたら兄貴と一緒に遊びに行くよ」 『夏季休暇使って来れたらいいね。それまで半年ぐらいあるから、何とかキャンプ場の仕事の他に通訳の仕事も見つけて、落ち着けたらいいんだけどね』 兄の賢也は忙しいらしく、今日は休日出勤でどうしても駅まで私を見送りに来ることができなかった。 会社に出勤する前に、気を付けて後のことはちゃんと上手くやるからと、励ましてくれていた。 息子たちふたりが今の私には支えだった。 彼らの静かな応援は私の力となった。 その日の内に信州の地に降り立った私はコウのいるキャンプ場に向かった。 キャンプ場で何泊かの宿泊の予約を取り、キャンプ場での調理の仕事のことなども、翌日話をすることにしてその日は周りの山々の景色を見ながら散歩を楽しんだ。 散歩から戻って来るとコウたち猫ちゃん軍団もゾロゾロと散歩を終えて戻って来たところだった。   ヨタヨタ……ヨタヨタ……でもコウは今日もちゃんとお散歩したようだ。 キャンプ場のオーナーの沙織さんと猫チャンたちの話をしていて、恋する位コウのことが気になってとコウのことを熱弁していたら、すごい申し出を受けてしまった。  そんなにコウのことを気に入ってもらったのだったらコウを譲ってくださるというものだった。 ひょぇーーーーっ、ひょぇーーーっ?? 私の胸の内は、あまりの、そして突然の、幸運に言葉にならない動揺が走ったのだった。 ただ一頭飼いは寂しい思いをするかもしれないので仕事で出勤している間は連れて来てほしいとお願いされた。 私の仕事が終わるまでの間、ここに居る猫ちゃんたちと過ごせるからと。 私も大賛成で異論のあろうはずがない。 コウもひとりで私の帰るのを待っているなどと寂しい思いをしなくていいし。 自宅ではコウとふたりきりになれるなんて、すごくすごく幸せ! 私は沙織さんに何度もお礼を言った。 調理の仕事は次の土曜日の繁忙期から入ることになったのででき
last updateDernière mise à jour : 2025-04-10
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第26話 ◇新しい環境で

26. TV番組で見た時からひと目で恋してしまったコウと一緒に暮らせるなんて夢のようだ。 幸先の良いスタートを切った私は、きっと今回の旅は片道切符で済むだろうことを予感した。 大丈夫だいじょうぶ、きっと私はこの地で幸せになるちゃんと暮らしていけると、不安を払拭するように改めて自分を励ました。          住居は思ったよりも早く見つかった。 この辺では顔の広いオーナーの沙織さんのお陰で。 山の麓にちょうど猫を飼える小振りの古民家があって元々住んでいた方が昨年亡くなって空き家になっていた物件。 縁者である娘や息子さんたちは別の地ですでに住居を構えていて、ずっと空き家にしておくのも本意ではなくオーナーが私の話を持って行くと、住んでくれるだけで有難いと、家も古いしということで、平屋で5ツも部屋があるのに破格の35000円で貸してもらえることになった。 うんうんっ、ほらっ……やっぱり。 この土地の神様か何だか私にこの土地で頑張りなさいって背中を押されたような気がした。 やけに単純で簡単に物事を良いように捉えすぎだろうか。今で2つめ。 良いことが3回重なったら本物だよね。 そういうわけで、私は3つめのLuckyを密かに待っていた。  私は短時間のキャンプ場での仕事をこなしながら資格を活かした通訳の仕事を探した。 長野は外国からの観光客も多く、思ったより早くに仕事が見つかった。 主に土・日・祝日にその仕事の多くを突っ込むことにした。 平日はキャンプ場での短時間のバイトだけと決めた。 年齢的にこんなところが落し所かと思ったので。  無理をしてどちらもできなくなることが一番困るのだから。 周りにも迷惑を掛けることになるし、自身も生活に支障が出るのだ。 何もかもが順調過ぎて、はっと我に返ると早2ヶ月が過ぎようとしていた。 通訳の仕事も慣れてきて、だいたい仕事のペースも固まってきた。 自然豊かなキャンプ場での仕事も猫や犬たち、動物に囲まれ客足の無い日は猫たちを相手にのんびり過ごすこともあったりで緩急があって充実していた。 反して多忙な日もあって大変なこともあるけれど身体が疲れたら小休止させてもらえるので高齢の自分でも何とか続けていけそうだ。 だから暇な日はなるべく自分で仕事を見つけて
last updateDernière mise à jour : 2025-04-10
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第27話 ◇うれしい再会

27. 仕事の合間にコウの様子を見られるのも至福のひと時だ。 コウが赤ちゃんの時からイクメンして子育てならぬ仔猫育てをしているニャン子たちが数匹いて、そのコたちがいつも身体の不自由なコウの側で見守ってる。 その様子に心癒される。 誰かが言ってた。 動物はしゃべらないからいいんだって。 そうかもしれない。 だけど時々、コウと話せたらどんなにいいだろうって思うこともある。 コウが葵のこと好きって言ってくれたら、どんなにうれしいだろう。 一生無理だけど。 けど、聞いてみたい。 そんな私はたぶん病気だなっ! そんなこんなで生活に余裕ができた頃キャンプ場のオーナー、沙織さんとご主人に連れられてお酒を飲みに出掛けた。 そこで予想もしてなかった人との再会があった。 お互いが思ったことと思うけど……。 「「なんで、ここにいるんですか?」」 だってお互いに関西の神戸に住んでいたはずだから。 その人物は長男が小学生の時の同級生の父親で、モチロン息子たちもよく診てもらってた地元の小児科医の西島薫先生だった。 もう長男も。彼此(かれこれ)27才になっていて最後に西島先生に診てもらってから15年は経っているんだけど、まぁ忘れるような関係でもなくて……。 お互い、びっくりポン状態だった。 西島さんは独りで店に来ていたみたいで私は沙織さんたちともおしゃべりしつつ、しばし西島さんとも帰るまでポツポツと会話を続けた。  ちょうど息子さんが就職した年に病気で奥さんを亡くし、それを機に田舎暮らしすることにしたらしい。 今はアルバイトで診療所で働いていて、時間のある時は畑をしているのだとか。 このまま自然に囲まれてノンビリと余生を送るのが夢らしい。 私は何故か西島さんとの会話で、畑に喰いついてしまった。 やってみたいと何度か連呼するのを聞いていた西島氏が少し畳2帖分くらいから始めてみますかと、言ってくれた。 『よぉぉ~っしゃぁ~』心の中でガッツポーズ。「ほんとですかっ、わぁー うれしいです、ありがとうございます。体力もあまりないですし、それで充分です」と早速、厚かましくも即答していた。 西島さんは結構な広さの畑を耕していたので先でもっといろいろな作物を作りたければ、もっと使ってもらってもいいですよ、と言ってくれた。 
last updateDernière mise à jour : 2025-04-11
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第28話 ◇妻は帰ってこない

28. ~葵が旅に出てからしばらくして貴司姉、美咲と貴司との会話~(貴司が葵のいる町を尋ねて行く前のこと)「その後、どうなの? 葵さんからはちゃんと連絡あるの?」「あぁ、一度だけ。旅の行く先々で楽しくプチ生活しながら、移動しているみたいだ。 もう少し、知らない町での暮らしを堪能したいから帰るのが先になりそうだと言ってきた。  お金も必要だろうから、送ったよ」「貴司、葵さんもうたぶん帰って来ないよ」「姉貴、俺の話ちゃんと聞いてた?  何でそういう話になるのさ。 俺は皆の前で去年の春頃に宣言したろ? 他の女には余所見せず、これからは葵だけを大切にしていきます、って! 家族と過ごす時間も増やして葵や息子たちともっと向き合っていくつもりだって。 なのに何で逃げ出すっていう話になるんだよ!」   「貴司、全然あなた分かってない。 まず、信じられない。同じ女性としていくら考えてもあなたのあの発言は良くないと思うよ」「周りの皆も姉貴だって、それに当人の葵息子たちもうれしそうにしていたじゃないか。 皆拍手して頑張れって言ってたじゃないか!」  「言っとくけど、周りの人たちがどんなだったかは知らないけど少なくとも葵さんや息子たちはちっともうれしそうなんなかじゃなかったから。 口角は上げてたけど3人とも、目が死んでたわよ。 このバカ! 気付きもしない野郎だからあんなふざけたこと宣言できたんだろうけど。 まぁ、あなたも自分の所業に何か思うところがあったから改心したことを発表したんでしょうが……。 あなたがしなきゃいけなかったのは、Audienceつまり友人知人親族なんかのいない所で誠心誠意3人に今までのふしだらな数々の女性関係を謝り、償いとして3人をそして妻の葵さんのために今後は全力で向き合い大切にしていきますと、謝罪宣言するべきだったのよ。 分かった? この唐変木野郎!」「ナ、何そんなカッカ熱くなってんだよ、姉貴!」「まぁ、私としてはあなたのその改心がもう10年早ければなぁと、思わずにはいられないってこと。 兎に角、妻も子もいる身で、しかも今まで普通の男が経験できないような女性遍歴があるんだし、女の尻を追いかけるの……じゃなかった、女に自分の尻を追っかけさせるようなことはもう金輪際止めなさい
last updateDernière mise à jour : 2025-04-11
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第29話 ◇姉の言うことに……

29. 「姉貴、だから葵は旅が終わったら帰って来るってぇ。連絡だってちゃんと取れてるんだし。 息子たちだってここにいるんだぜ? 姉貴の早トチリ、妄想がすご過ぎっ!」 「あ・の・ね、女を舐めンじゃないわよ!あなた葵さんが突然今回旅行に出ると言って家を出たとでも思ってるの? そう本当に思ってるならどんだけ天然のアホかと思うわ。 フンっ!]  「それ、どういうことだよっ?」 「彼女は何年も前から出て行く準備をしてたってこと。 チャンスが巡ってきたらいつでも出て行けるようにね。 旅行って言って出て行ったのは新天地で上手く暮らしていける地盤を見つけられなかった時のための保険ね、きっと。 しかし、そう考えると葵さんなかなかやるジャンねぇ?]  「分かったから、姉貴もう帰ってくれ! トンチンカンな妄想で俺を不安にさせようと煽るのはよしてくれ。ささっ……帰ったかえった」 追い立てる仕草で姉を家から追い出した。 時には頼りになる姉だが、何かにカチリと嵌るとトチ狂うウザイ姉だ。 姉の妄想予測に少し心を動かされそうになったが、妻が出て行くならもっと何年も前だろう……小さな胸騒ぎを抱えつつも、俺はそう自分を納得させた。 姉には葵と連絡だって取れてると言った。 1月の初めに出掛けて約1ヶ月経った頃、俺の方からしたメールに2回程、確かに返信があった。 信州方面から北海道まで足を延ばして、その土地その土地で短期の逗留をして、自然の中での生活を満喫していると書いて寄越している。 が、今のところ葵からのメールは一切ない。 今まで浮気相手にバンバンメールでのやりとりをしたことはあったが、思い起こしてみると、妻の葵とはほとんど業務連絡のようなメールしかしたことがないことに気付いた。 俺が外から妻にメールをして、会話を楽しむようなことはなかったし話なら大抵葵は自宅にいるので家で話すからメールでのやり取りは不要だったのだ。
last updateDernière mise à jour : 2025-04-11
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第30話 ◇帰って来るはず

30. そして更に、例え妻が遠方に行ったからといっても1日に何度もどころか1ヵ月あっても2回のメールしかできない自分に気付いてしまった。 しかも姉の美咲との言い合いで気付いたくらいで。 今のいままで何も思うことなく過ごしてた。 葵が帰って来ないかもしれないって? 何だ、それっ……。 不安を煽ったりしてきた姉に本気で腹が立ってきた。 何で今更……。 いや、実際友人たちも今更なアラ還になって皆奥さんに出て行かれてるじゃないか! 俺は昨年の春先にした宣言で今までのことを全て葵が受け止めてくれたと思ってしまっていたけれど……。 イヤイヤ……小さな不安を捻じ伏せて、俺はそんな突拍子もないことを、と姉の物言いを小馬鹿にして封じ込めた。 その内、楽しかったぁ~って元気にここへ、俺の元へ帰って来るはずだ。 そう願いつつも、葵が旅行に出る前にひと悶着あった小野寺祐子のことが頭に浮かんだ。 小野寺のことはあのまま黙ってやり過ごした方が良かったのかもしれないと今更だが少し後悔していた。 あの時は後から小野寺もしくは他の誰かから知れたらそれこそ修羅場になると思い、正直に話したのだが。 付き合い自体、もう過去のモノなのだし。 今回のニ度目の旅行、1ヶ月過ぎても一向に帰って来る気配のない妻の行動は、もしかしたら凸事件簿も多少は関係しているだろうか。 脛に疵を多く持つ身なので、流石に姉貴に葵は帰って来ないと断定された今、じわじわと胸の中に不安が押し寄せてくる。 あまり小さな男と思われるのもイヤだ。もう1ヶ月様子見をして、それでも帰って来なければ詳しい住所を聞いていちど会いに行ってみようと思っている。 しかし、息子たちが妻のことに関してうんともすんとも言わないのはどうしてなんだぁ~?   結婚してから妻とこんなに離れて暮らすのは、初めてで正直寂しい。 俺は外で好き勝手して午前様で帰ることもよくあったけれど家には妻の葵がいつもいるのが当たり前過ぎる生活だったからなぁ~。 何とも侘しくて心許ない心情だ。 年のせいだろうか?
last updateDernière mise à jour : 2025-04-11
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