Home / 恋愛 / 『願わくば……』 / Chapter 11 - Chapter 20

All Chapters of 『願わくば……』: Chapter 11 - Chapter 20

30 Chapters

第11話 ◇父親の修羅場

11. (更に引き続き5年前の過去の話)  その後、事態は実に泥沼化して長男の同級生の父親の 知るところとなり、夫は浮気相手女の旦那から慰謝料請求 されることとなった。  その同級生の母親は旦那さんから離婚され、ほとんど 身ひとつで家から追い出されたらしい。『ご愁傷様ぁ~』 親権は取れずというか、うちの息子20才の同級生なの だから同じく20才なわけで、父親の気持ちに添う形で 母親とは絶縁したらしい。  当時、我が息子たちの父親は絶賛モテモテ中で、長男同級生 母親42才浮気相手からも、独身28才浮気相手からも、正妻 (わたしのことだよぉ~)と別れて自分たちと結婚してと、毎日のようにプロポーズ されていたのだ。呆れるわぁ。 「「「お幸せにぃ~」」」 気がついたらかなり本気モードでそんな言葉を呟いていた。          ◇ ◇ ◇ ◇  今、思い出しても笑える。 当時は結構わたしの気持ちも上がったり下がったりして ジェットコースターに乗ったような気分だった。  悲しみとか苦しみとか……『はっ、なんだそれっ』 て感じかな。なんかそういうの超越してたと思う。  あれだけ家族を巻き込み、周囲に迷惑をかけ 自分も慰謝料を取られ、相手方から詰られたというのに 全く懲りない男(おっと)。  結局あれからも今回の宣言まで他所の女との付き合いは 止めなかった。  早く、どんだけ自分が人としてクズなのか 気付いてほしいものだ。  ちなみに騒動の時、浮気相手(28才独身女性)とその親が 帰ったあと、自分たちの部屋から出て来た息子たちは私と目が合う と揃って両手を半分挙げてお手上げのポーズで 「かあさん、いつから家政婦になったん?  笑ってまったやろぉ~ 笑わせんといてぇ~っ」と 楽しげに話しかけて来た。 『あんなアフォ~なヤツの妻やなんて恥ずかし過ぎるヤン。 家政婦がいい落しどころやと思ったんやもん』  何かこんなふうな会話していたのを思い出す。 それぞれが心中穏やかではなかったと思うけれど 誰ひとり、深刻ぶったりはしなかった。  もうその頃、私たち3人にとって夫は そんな存在だったのだと思う。
last updateLast Updated : 2025-04-04
Read more

第12話 ◇母さんの味方だから

12.長男(5年前の賢也目線で!) 小学生の頃から年に1~2度の頻度で親父がその都度違うきれいな女と一緒にいる所に遭遇したことがある。 別に俺に見られても親父は悪びれることなく、俺に普通に話しかけそのまま女と歩いて行ったものだ。                 近所の同級生の母親たちからはよく、賢也くんちのお父さんモデルみたいだねとか、すごくかっこいいねとかお父さんお家ではどんなふうなの? とか、とかとか、とにかく俺の父親は、おばさんたちから絶賛注目の的だった。 だから、父親が異性からモテる類の人種なんだってことは結構早くから認識していたと思う。 そのうち、どこからともなくいろいろな噂が耳に入るようになり、親父はただモテるだけじゃなく、いろんな女とヤッてるんだということも分かるようになっていった。 2才違いの弟からもちらっと親父に関することを聞かれたというか話題に上ったことがあるので、弟もたぶん感づいていると俺は踏んでいる。 ただ面白い話題ではないので、互いにちゃんと話し合ったことはないまま来た。 今回の浮気相手の凸で、もう見てみぬ振りはできない所まで来たと思った。『いい加減にしろよっ』  親父の女関係で母親から愚痴や泣き言は一切これまで聞いたことがなく、まして俺の方から聞けるようなことでもないので実際母親の心情というものを今ひとつ分からずにきていた。 だが先程の母の言葉で全てが分かってしまったのだ。 あんなアフォ~なヤツの妻なんて恥ずかし過ぎる……って言ったんだぜ。 そう言った母のあの台詞が全てを表していると俺は思っている。 母の中で父親は、あんなヤツ、扱いだからな。           『あんなヤツ』 この先俺たち家族がどんな道を辿るか分からないがいつだって俺も弟も母さんの味方だから。『この先もずっと母さんの味方だから』        俺はそっと呟いた。
last updateLast Updated : 2025-04-05
Read more

第13話 ◇息子たちは知っている

13.長男(5年前の賢也目線で! 2)  子供時代は分からなかった男女のことも思春期に入り 異性を気にするようになった頃から、親父のとっている 行動が如何に異常でパートナーに対する侮辱すべきこと であるか、俺は知った。 不倫相手の親に家政婦だと言い切った母。 親父(おっさん)、捨てられるのも時間の問題やぞ!  さっき、かあさん相手におどけたふうで話したあと 各々の部屋に戻る時、弟が言った。 「あんなクソッ、死ねばいいのに!」  おまぃ~、まだ学生だろ、ヤツが今死んで一番困るのは おまぃだぞぉ~。 だが気持ちは痛いほど分かる。 よく言った。I think so そー!!! だがもうしばらくATMで働いてもらわんとな。  直に弟に反応はしなかったが、心の中で賛同していた。  今の親父は俺たち3人にとって、ATM以上でも以下でもない。  親父ィ~、分かってンのかねぇ~。 はぁ~。          ◇ ◇ ◇ ◇・・・・(5年後) それから5年後、親父は不倫止めます宣言をした。 親父はもう57才で60才目前のことだった。 この時、もう俺も弟も成人していた。  こんな親父のことだから俺たちが自立したあと、もしかしたら 母親は今流行の熟年離婚とやらに踏み切るかもと思って いたが、周囲の状況に敏感なこの親父の言動で、はて…… 今後の母親の想いはどうなのだろう。 そんなことを思った。  このまま婚姻関係続けてをいくのか、はたまた……。
last updateLast Updated : 2025-04-06
Read more

第14話 ◇小野寺、現る

14.  今更に酷い男ずるい男と内心罵倒しつつも一方で 夫の宣言に馬鹿だなぁ~と思いながらも 絆《ほだ》されている自分もいた。 だめだよ。  今までのことは、なかったことにはできないのだから。  それに今回の宣言だって本当に守れるものかどうか 怪しい臭い200%プンプンものなんだから。 しかしねぇ、絆されてる気分をあっさりと 断ち切ってくれる事件簿がその後私の身に待ち受けていた。                                      ◇ ◇ ◇ ◇      前々から不定期で習っているパッチワーク。 その教室に半年前から来ている小野寺裕子という36才 独身女性と割と仲良しになった。 彼女は毎週ちゃんとレッスンに参加していて かなりチャーミングな女性で独身なのが不思議なくらい。  私は忙しくて不定期で参加させてもらっているけど もうパッチワーク暦は10年にもなるので、そこそこのモノは 作れる。 それで彼女からよく教えて欲しいと頼まれることがあり そこから自然に懇意になっていった。  そんな中で彼女からよく夫のこととか子供のことを興味津々に 聞かれることがあったけれど、独身故の興味なんだろうと 思っていた。 「ご主人って素敵な方ですか?」『う~ん、どうだろ……まぁフツメンかな。』「ご主人モテます?」『う~ん、どうだろ?』 イケメンと言って興味を持たれるのも疲れるので適当に 答えていた私。  イケメンだろうがモテようが、自慢する気もおこらないのよ。 あまりに突出していればね。  モテてもモテなくてもイケメンでもイケメンでなくても 私だけを見ててくれる夫であったならお惚気でモテるよ イケテルよって少しは自慢だってしたかもしれないけど。 我が家の場合、あまりの夫の行動の異常振りに 私の感性も壊れちゃってたかもしれない。 だけど、小野寺さんが私に近付いて来たのには 訳があったのだ。
last updateLast Updated : 2025-04-06
Read more

第15話 ◇イベント日

15.  キルトの展示、展覧会イベントがあった日、息子たちや夫も たまたま今回は見に来てくれていた。 前回も前々回も皆それぞれ予定があるとか言って 来なかったのにね。  全員揃って来てくれたのでびっくりしてしまった。  私の所に息子たちが寄って来ると、今回は出展してないけれど 同じ教室ということで見に来ていた小野寺さんが私の方へ 飛んで来た。  いつもオサレ《お洒落》に決めている彼女だが、今日も今日とて、前髪は センターで分け、サイドは後ろに流して止めてあり、大人感のある ヘアスタイルに真っ赤な口紅にシャドーは濃いこげ茶、くっきりと 描いた太めの眉、そこから鼻の付け根まで流しての濃淡を作りこんだ メイク、そしてスタンドのない襟もとのスッキリした柔らかい素材 のトップスと、全てに力が入っていた。 トップスの襟元と肩から腕にかけてシルバーの別素材のテープが 付いていて、ゴージャス感が半端ない。そんな彼女は『紹介してください~』感半端ないオーラを放ち私の横を陣取った。 あちゃぁ~、紹介しろってことだよね。  参るなぁ~と思いつつ あれだけ私の家庭のことに興味津々だったからスルーはできないか ……とこの状況を察し、もはや逃げられないことを私は悟った。    
last updateLast Updated : 2025-04-06
Read more

第16話 ◇爆弾発言投下

16.  その日の夜、夫から爆弾発言が投下された。「今日はお疲れ様。作品素敵だったよ。  大きな会場で展示されると、よけいに素敵に見えた」「今年は3人で見に来てくれて、うれしかったわ。  忙しいのにありがとう。  あなたが息子たちを誘ってくれたんでしょ?  あの子たち、つまんなそうだったもの」 「ま、ね。たまには母親の趣味をちゃんと鑑賞するのも  いいことだよ。家族なんだからね。知っておくべきだと思う」「ありがとう。  そういえば、あなたを小野寺さんに紹介したあと  彼女何だかそわそわしてた。 どうやら彼女もあなたのファンになったみたい。 あなたが私の所に戻って来ないものだから、途中で  私の側から居なくなっちゃって……。 あなたのこと探して行かなかった?」  「来たよ」 「えっ! まさか。 ほんとに?  ほんとにあなたに凸するとは……驚いた。  いつまでもモテモテだね」「小野寺さんとは前からの知り合いなんだ。  もちろん、今は付き合ってない。  もう随分前に手は切ってる相手だ。 俺も今日会って吃驚した。  たぶん、君と同じパッチワークの教室に入会したのも  確信犯だと思う。 復縁を迫るためのね」「何言ってるの、ひどいこと言わないで。 私にそんな話聞かせないで。    知らない、そんなこと。 私には関係ないことよ。  私を苦しめてそんなに楽しい?」『馬鹿っ』 「待って、待てって!  苦しめたくないから   誤解されたくないから  ちゃんと申告してるんじゃないか。   けど、付き合いは止めたにせよ、納得してない彼女が 俺たちの前に現れたのは俺の責任だから、そこのところは 申し訳ないと思ってる。  すまない。           つい先日君のことを大切にウンヌン宣言したばかりなの  こんなことになって申し訳ない。」  私は何だかんだ言いつつ、夫の宣言以降、迷いが生じていた ことは否めない。……というか、迷いが生じていたことを今身を持って知ったことに 気付いてしまった。  動揺しているということはそういうことだから。 動揺したために、夫に冷静な言葉を返せなかった。 悔しい! それにしても、こんなことになってもこの浮気性な夫のせいで 嫌な思いをするなんて。  今ま
last updateLast Updated : 2025-04-07
Read more

第17話 ◇元セフレ

17.  もうかれこれ付き合いを止めて2~3年になるだろうか。 しかも、付き合っていた期間は半年ぐらいで浮気相手とも 言えないようなただのセフレだった。   悪友達と一時ビリヤードに嵌り、店に足繁く通っていた ことがあって、そこの店で知合った女というだけだった。 俺の顔と身体が好みで、嵌らないクールな所が好きだと 言い、彼女の方からセフレの関係を持ちかけて来た。  半年程経った頃、他に気になるいい女が見つかり小野寺には 忙しいからとか、何とか、のらりくらりやり過ごし、俺はふたりの 関係を自然消滅させた。  それを今頃現れるとは。  しかも、どうやって調べたのか妻の趣味で通ってる教室に ちゃっかり入り、妻と知り合いになっていた。 こんな偶然があってたまるか!  確信犯だな。   今までの自分なら、大騒ぎするようなことでもなく どこ吹く風だったかもしれないが。  だが時期が時期だけに、昔の女出現なんてマズ過ぎる だろ。 ドジで間抜けな亭主にはなりたくなかったが、後で アイツ(小野寺)から妻にバラすという形で妻に 知られることだけはどうしても避けたかった。  今まさに浮気している相手でもないことだし、申告しなくて 済むならしたくはなかったが、後々のトラブルを 回避するべく、妻には本当のことを話した。 実はかなり驚いた……妻の反応に、だ。              いや、そうじゃない。  驚いたなどと反応する俺の方がクレイジーだな。 今までずっと他所の女たちとの付き合いを黙って 黙認してたからって、一度として俺が自分からこの○○と 付き合ってるなんて、申告など嘗てしたことはないのだから。  ほんとにツイてない。 皆の前で妻だけを……宣言したすぐ後に、昔の女が しかも妻本人の目の前に出現するなんて!  最悪だ!!!
last updateLast Updated : 2025-04-07
Read more

第18話 ◇帰れ、クソ女!

18.  パッチワークの品評会のあった日、俺を探し回っていた 小野寺を見つけると、彼女を妻や息子たちの目の届かない所に誘導した。  何を勘違いしているのか、そそくさと嬉しげに俺のあとを 素直に付いて来た。 人目の付かない場所に来るといきなり振り返り 俺は高飛車に言い放った。 「何しにこんな所に顔出ししてンだ! ルール違反だろう?」 「突然会わないって切られて、私、寂しかったんだからぁ。  あれからあなたのこと忘れたことなかったよ。  あなたに会いに来たに決まってるでしょ! 会いたかった~」                「何寝ぼけたことを……。  お前が付き合ってほしいと言い寄ってきた時、ちゃんと  言ってあっただろ?  俺は妻を愛してる。遊びでしか付き合えないから   俺に近付くのは止めといたほうがいいって。  1番じゃなくていい、3番でも4番でもいいから付き合って  ほしい。飽きたらもう付きまとったりしないから、ほんの  短い間だけでもいいから付き合ってほしいって、お前が  言ったんだろう。   それを今更、何言ってんだよ。妻子持ちに付き纏うなんて  オマエ、頭大丈夫か……2度と来ないでくれ。   妻には迷惑かけないのが、俺の最低限の浮気のルール  なんだよ。 こんなことされたら困るんだよ。」         「奥さんが怖いの? それとも嫌われるのが怖いの?  アンタみたいなタラシ奥さんはとっくに腹括ってるわよ。   じゃなきゃ、いつもいつもいろんな女侍らせるような旦那に  文句のひとつも言わないなんておかしいもの。  あんたに気持ちなんて、これっぽっちも向けてないのよ。   興味なんてないのよ。   あんたのように大勢の女と付き合っても、奥さんひとりの気持ちさえ 分からない……ううん分かろうともしない男っているんだ。        だけどそんサイテーな男を忘れられない私もサイテーだな。   いいから、もう一回私と付き合って。   そしたらさ、大人しくしてやるから」   「物分かりの悪い女はごめんだね。帰れ!」  「ねえ、聞いていい? あんたさ、奥さん愛してるって  言ったよね? 愛してるっていう意味、知らないんじゃねぇ?  普通妻を愛してるヤツは浮気なんかしないんだよ。
last updateLast Updated : 2025-04-08
Read more

第19話 ◇別れる切っ掛け

19.  夫の告白に心乱されたけれど、なかなか踏ん切りを つけられない情けない私にとって小野寺さんのまさかの 出現は良かったのかもしれない。 いいきっかけになった……。   自分でも馬鹿だと思うけどing形でやさしく誠実な態度を 取られると、ついつい過去を忘れ流されそうになっていた ことは否めない。  別れるという行為は、ものすごくパワーが必要なのだろう と思う。  まして老いてからの行動なのだ。若い頃とは違う。  身体と心ってかなり繋がりのある関係だと思う。  身体の調子が良くないと心も元気がなくなるもの。  だからまだ大きく動ける気力のあるうちに、後顧の憂い なきようこれから先の人生設計を立てておきたい。                『頑張るわっ』 子供を抱えて苦労する勇気がなかった。『私は意気地なし……』               だから私はならぬものに対してならぬ……と夫に宣言し 夫の元を去る決断ができなかった。 息子たちふたりが、ほぼ成人した今……決断するなら今でしょ。   今までだってさんざん夫の性関係に苦しめられてきたのに ここへきて更に夫自身の口から直接浮気女のことを申告される という屈辱を味あわされた。 過去の亡霊なんかに、こんな年になってさえも若い男女が しでかす様な色恋沙汰に巻き込まれ、本当に情けない。  こんな時に凸して来た小野寺さんにもモーレツに 腹が立った。  やることがあまりにも露骨過ぎるし、余りにも  妻である私を馬鹿にしている振る舞いだもの。          ◇ ◇ ◇ ◇ 数日後のこと……。  次のパッチワークのレッスンのある日に、退会するので 私にとっては最後の授業になる日、レッスン終了後 彼女に声を掛けた。  私は初めて夫の遊び女に怒りというものをぶつけた。
last updateLast Updated : 2025-04-08
Read more

第20話 ◇あげるわ

20. 「私、知っているのよあなたの正体。夫が吐いたわ。  あなたと関係を持っていた時の夫なら有り得ないことだけど。 人生の最終局面に近付きつつある今、散々好き勝手しておいて 私が自分から離れていくのが不安みたいよ。             先日夫がね、知人友人の前で宣言したばかりなの。 今からは余所の女には目もくれず、私だけを大切に するんですって。 散々いろんな女と遊びまくってアラ還になってから、 そんな素敵なことを言い出したのよ。           きっと、私が有難がって涙を零して喜ぶと思っていたのでしょうね。 私もほだされたってわけでもないけれど、心中複雑だったわね。 そんなこんな状況下でのあなたの凸では、夫はたぶんあなたのことむちゃくちゃ怒ってると思うわ。           夫の計画というか、思惑をぶち壊すようなことをしたのだから。 昔の清算したはずの亡霊が、しかも堂々と妻の知人というポジションで自分の目の前に現れたんですもの。 夫はあの日はさぞかし、びっくりしたことでしょう。 驚かせてくれたことには、お礼を言ってもいいかも。 夫とヨりを戻したくてこんなことをしたの? ふふっ、よく耳の穴かっぽじて聞いて! 聞き逃さないでね。   あんなクズ、ほしけりゃぁあげるわよ。 だけどあのクズ、最愛と語る妻のことさえ愛せない男なの。 そんな男に縋ったって愛してなんかくれないよ? かわいいのは自分だけなんだから。 私は、モいらないからぁ....あげるよ。どうぞ……どうぞ」               私は自分の言いたいことだけ言うと、何か言いたげな彼女をその場に置き去りにした。 言いたいことを言えるって、なかなかいいものね。 スカっとした。 小野寺さんに吐いた私の台詞は、夫の歴代の女たち全員に吐き出したかった言葉だ。           ******** すでに貴司からさんざん〆られていた小野寺祐子だったがそれでも貴司のこと、好きでいるのを止められない。 そんな小野寺は葵の捨て台詞に、貰えるものならば私はほしいよぉ~と、心の中で叫んでいた。           もう、いらないからあげるという女を大切にしていきたいと言う男。 そんな男に罵倒されても、それでもその男が恋しくて恋
last updateLast Updated : 2025-04-08
Read more
PREV
123
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status