Beranda / 恋愛 / 『願わくば……』 / 第11話 ◇父親の修羅場

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第11話 ◇父親の修羅場

Penulis: 設樂理沙
last update Terakhir Diperbarui: 2025-04-04 13:43:01
11.

(更に引き続き5年前の過去の話)

 その後、事態は実に泥沼化して長男の同級生の父親の

知るところとなり、夫は浮気相手女の旦那から慰謝料請求

されることとなった。

 その同級生の母親は旦那さんから離婚され、ほとんど

身ひとつで家から追い出されたらしい。

『ご愁傷様ぁ~』

 親権は取れずというか、うちの息子20才の同級生なの

だから同じく20才なわけで、父親の気持ちに添う形で

母親とは絶縁したらしい。

 当時、我が息子たちの父親は絶賛モテモテ中で、長男同級生

母親42才浮気相手からも、独身28才浮気相手からも、正妻

(わたしのことだよぉ~)と別れて自分たちと結婚してと、毎日のようにプロポーズ

されていたのだ。呆れるわぁ。

 「「「お幸せにぃ~」」」

 気がついたらかなり本気モードでそんな言葉を呟いていた。

          ◇ ◇ ◇ ◇

 今、思い出しても笑える。

 当時は結構わたしの気持ちも上がったり下がったりして

ジェットコースターに乗ったような気分だった。

 悲しみとか苦しみとか……『はっ、なんだそれっ』

て感じかな。なんかそういうの超越してたと思う。

 あれだけ家族を巻き込み、周囲に迷惑をかけ

自分も慰謝料を取られ、相手方から詰られたというのに

全く懲りない男(おっと)。

 結局あれからも今回の宣言まで他所の女との付き合いは

止めなかった。

 早く、どんだけ自分が人としてクズなのか

気付いてほしいものだ。

 ちなみに騒動の時、浮気相手(28才独身女性)とその親が

帰ったあと、自分たちの部屋から出て来た息子たちは私と目が合う

と揃って両手を半分挙げてお手上げのポーズで

「かあさん、いつから家政婦になったん?

笑ってまったやろぉ~ 笑わせんといてぇ~っ」と

楽しげに話しかけて来た。

『あんなアフォ~なヤツの妻やなんて恥ずかし過ぎるヤン。

家政婦がいい落しどころやと思ったんやもん』

 何かこんなふうな会話していたのを思い出す。

それぞれが心中穏やかではなかったと思うけれど

誰ひとり、深刻ぶったりはしなかった。

 もうその頃、私たち3人にとって夫は

そんな存在だったのだと思う。
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    Terakhir Diperbarui : 2025-04-08
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    25. 私は家を出る日、わざと夫が仕事に出掛けている時間帯を選んだ。 下の息子に車で最寄の駅まで送ってもらった。 大きな荷物はコウ(猫)のいるキャンプ場で受け取ってもらえるよう先に送っているので、手荷物はその分半減。 電車と新幹線を乗り継いで旅先へと向かった。「母さんが新しい場所で落ち着いたら兄貴と一緒に遊びに行くよ」 『夏季休暇使って来れたらいいね。それまで半年ぐらいあるから、何とかキャンプ場の仕事の他に通訳の仕事も見つけて、落ち着けたらいいんだけどね』 兄の賢也は忙しいらしく、今日は休日出勤でどうしても駅まで私を見送りに来ることができなかった。 会社に出勤する前に、気を付けて後のことはちゃんと上手くやるからと、励ましてくれていた。 息子たちふたりが今の私には支えだった。 彼らの静かな応援は私の力となった。 その日の内に信州の地に降り立った私はコウのいるキャンプ場に向かった。 キャンプ場で何泊かの宿泊の予約を取り、キャンプ場での調理の仕事のことなども、翌日話をすることにしてその日は周りの山々の景色を見ながら散歩を楽しんだ。 散歩から戻って来るとコウたち猫ちゃん軍団もゾロゾロと散歩を終えて戻って来たところだった。   ヨタヨタ……ヨタヨタ……でもコウは今日もちゃんとお散歩したようだ。 キャンプ場のオーナーの沙織さんと猫チャンたちの話をしていて、恋する位コウのことが気になってとコウのことを熱弁していたら、すごい申し出を受けてしまった。  そんなにコウのことを気に入ってもらったのだったらコウを譲ってくださるというものだった。 ひょぇーーーーっ、ひょぇーーーっ?? 私の胸の内は、あまりの、そして突然の、幸運に言葉にならない動揺が走ったのだった。 ただ一頭飼いは寂しい思いをするかもしれないので仕事で出勤している間は連れて来てほしいとお願いされた。 私の仕事が終わるまでの間、ここに居る猫ちゃんたちと過ごせるからと。 私も大賛成で異論のあろうはずがない。 コウもひとりで私の帰るのを待っているなどと寂しい思いをしなくていいし。 自宅ではコウとふたりきりになれるなんて、すごくすごく幸せ! 私は沙織さんに何度もお礼を言った。 調理の仕事は次の土曜日の繁忙期から入ることになったのででき

  • 『願わくば……』   第24話 ◇マイブームは猫

    24.「今まで旅行なんてめったに行かなかったのに先月に続いてまた行くのかい?」「うん、今私のマイブームが猫でね。いろいろ情報探して猫を追いかけて行こうかと思ってるの」「場所は決まってんの?」「TV番組で見たんだけど、何かね北海道にも極寒の中息づいてる猫たちがいるみたいで、行ってみたいと思ってるの」「そんな寒い土地にも猫っているんだ!」「私も驚いたけど、外で普通に暮らしてるの。               寒い所にいるからやっぱり毛はフサフサしてて長めなのよ」「君がそんなに猫に嵌ってるなんて知らなかった」              「フフッ、嵌ったのつい最近だから」「君が帰って来たらネコSHOPへ仔猫見に行こうか!」「仔猫、可愛いでしょうね」 夫には、次の旅行へ行く話を上手く取り付けた。 あっちで、新しい生活の場で飼うよ、猫。 きっと……。そう呟いた。 夫の耳には届かない私の胸のうちで。             ◇ ◇ ◇ ◇  私は調査旅行から約1ヵ月後、片道切符しか必要のない新たな旅に出た。 夫には適当なことを言っただけ、行き先はもちろん北海道などではない。 あれから小野寺祐子とは会っていない。 私は教室を止めた。 流石に? 彼女、自宅までは出張って来なかった。 夫が何か手を打ったのか? 私は彼に何も聞かないし、夫もまたその後何も私に言ってはこない。 まぁ、今更だけどね。  私は再び旅に出る。 失敗して例え帰宅することになったとしても、しばらくの間は家を留守にするわけで、またきっと夫は羽を伸ばすに違いない。 そんな状況だから、小野寺祐子に言い寄られればすぐに復縁するかもしれない。 まっ、好きにすればいいっわよ……フンっ! いざ、行かん! 私はもう2度とこの家に、夫の元に戻って来ない覚悟でいろいろなモノを処分し間に合わなかったモノはメモして息子たちに託した。 まだあちらでの新居を決めていないので、持って行きたい大きめのモノはコンテナの倉庫に預けている。 これは後から息子たちに送ってもらうつもり。 あんまり部屋を空っぽにしてしまうとまずいし、帰って来ないこと前提の旅の準備って難しい。 旅というより、家出といったほうが正解なんだけども。 大体の目星を付けているせいか、不安よりもワク

  • 『願わくば……』   第23話 ◇独りになりたい

    23. 一度現地調査のため、1泊2日で現地へと出掛けてみることにした。 そこは信州方面の山の中。 駐車場があって、バーベキューなどもでき、広い敷地はにテントを張り宿泊することもできる場所。 コウは体調を崩しやすい猫chanだから心配、、今も元気でいてくれるだろうか。 果たして……             コウに会えた。 奇跡に思えた。 コウ、いいお顔してるね。 イケメンくんだ。 ちょうど調理の募集があり、ピザとかも作れると尚、良いとのこと。 体力がないから短時間で交渉したところ、実際働くのは1ヶ月先でも良いとのことでOKを貰えた。 キャンプ場には泊まれるバンカーもあるのでこちらに来てから住む所はじっくり見てから決めることにした。 コウや自然からかごいパワーを貰った。 女のことも夫の今までの所業もいつの間にか頭の中から消えていた。 コウがいるのは信州の山の中だ。 結構自然災害が多く、特に地震などが心配。   地震が来たら津波などもあると相当ヤバイかも……なんてふと思った。 その時はその時。 人は生まれて来る時もひとり、死に行く時もおひとりさまでいいやって。 誰にも心を残さず行けたら本望だ。 その時はコウのことを想うかも。 馬鹿みたい、最愛の息子たちだっているのにね。 私は夫と結婚して長く一緒にいたことで人間不信になってしまった。 最愛の息子たちのことさえ、他人のように見えるとは相当重症かもしれない。            ◇ ◇ ◇ ◇ 私は調査旅行から帰宅すると、今度は帰って来ない可能性の高い旅に出るための準備に取り掛かった。  息子たちには正直に話した。    生活を軌道に乗せられて上手くいきそうだったらその地で第2の人生を生きてみようと思っていることを。 私は上手くいかなかった場合のことも考えていて家を出て行くとか、離婚をして下さいとか言うのではなくあくまでも旅行に出るということにするつもりだ。 これは自分を経済的に守るための保険。 できるかできないか、予測の付かないことに危ない橋を渡るわけにはいかないもの。 長期に亘って帰らずとも、あくまでも旅で押し通すつもり。 籍を抜くとかはあまり今のところ考えていない。まずは地盤固めが先だから。 そして、とにかく独り

  • 『願わくば……』   第22話 ◇どこへ行こうか

    22.  今更な時期に私たちの目の前に現れた女(小野寺祐子)のことも心の繋がらない夫のことも、すっきりしようと思った。  手持ちの預貯金をざっと計算。 この日のために溜めてきたヘソクリやバイト代を併せるとすでに8桁越え。 もう父親は鬼籍に入っているが生前贈与や遺産、母からの数回に亘るお小遣いという名目の生前贈与など併せると左端の数字が2にまでなりそうだ。 新天地で仕事を見つければなんとかなりそうだ。 慎ましく年金満額受給できる年まで何とか乗り切れば。 息子たちのことを当てにするつもりはないけれど、万が一のことになっても動いてくれる人間はひとまず2人いる。 いつ動くのか? 今でしょ……って林先生なら言ってくれるよね。 新天地よ、新天地、どこへ行こうか……。 実はもう目星はつけてある。 私は猫が好きでよく猫の出てくる番組を見ている。 その中でも強烈に印象の残っている猫がいる。 コウという8才の雄猫。 産まれた時から身体に麻痺があって歩くのもやっとなんだけれどイクメンでその家にやって来た仔猫たちを大事によく面倒を見て育てている。  その飼い主さんによるとコウは何度も死に掛けては復活を遂げているらしい。 仔猫を育てることで自分も生きる活力を貰っているように見えるとのこと。  コウは某番組で紹介されていてそれで知ったのだけれどその番組を見て私は泣いた。   ティッシュ10枚は使うほどに。   コウの動いている姿、静止している時の顔の表情体調の悪い時の様子、画面から目が離せず食い入るように見たことが思い出される。 他の猫たちから、付かず離れず見守られているその姿は見る者の心を深く強く抉(えぐ)る。 あなたは何のために生まれてきたの? それは自分への問いかけにも代わるもので……。知らず知らずの内に、気が付くと自分に問い掛けていた。 私は何のために生まれてきたの? 私は夫からこんなに散々理不尽なことをされるために生まれてきたんじゃない。  誰かを愛し、誰かに愛されるために生まれてきたのだ。 私はこの猫chanのいるキャンプ場のある街へ行くことに決めた。   当座生活する資金はあるけど、仕事もできれば早い時期に見つけたい。 とにかく、ここに留まっていてはいけない。 もう誰にも私を悩ませたり

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