「俺、お世辞は言わないけど?」 私と視線を合わせたまま、斗夜は真面目な表情でポツリと言う。「こういうのは殺し文句だから、誰かれ構わずに言ってたら大変なことになる」 どうやらそれはわかっているようだ。 だとしたら、私に対する先ほどの発言も真剣だったと聞こえるけれど、それは考えすぎだろうか。「あ、でも俺……今リハビリ中だった。軽いと思われる言動は慎まなきゃ、誤解されるよな」 斗夜は眉をひそめ、残念そうに一歩あとずさりして私から距離を取った。 慎んでくれるのはありがたい。 斗夜は重症のようだから、リハビリはかなりの時間を要するだろう。『ヤバい。俺、咲羅にハマりそう』 先ほどの斗夜の言葉が頭から離れない。 爆発しそうにドキドキと鼓動している心臓が痛くて、右手でそっと胸を押さえた。 私たちは並んで歩き、ショッピングモールへと向かった。 街は日曜日なので家族連れが多く、どこの店内も混み合っていた。「何を買いたいの?」 おもむろに私が尋ねると、斗夜は「こっち」と私を手招きして一軒の雑貨屋さんへと足を踏み入れた。 お店には様々な洒落た雑貨が並んでいて、見ているだけで私も楽しくなってくる。「こういう置時計、カッコいいよな。アラーム機能も付いてるし、ベッドサイドに置いてもいいか」 斗夜はブツブツと独り言のように言いながら、気に入った時計を手に取って眺めている。「俺、朝弱いんだよ」 斗夜が参った、というような顔を私に向ける。 なんとなくだけど、斗夜の雰囲気からして夜型人間だと私は予想していた。「うん、強そうには見えない。起きる時間になっても、ずっとベッドの上でゴロゴロしてそう」 「当たってるよ。前日、真夜中までがんばりすぎたら全く起きれないんだよな」 「…………」 なにをがんばるの? などと聞かなくてもわかってしまい、溜め息が出た。「でもその時計、すごく良いデザインだよ。カッコいい」 「買おうかな。咲羅も買う?」 「なんで私まで」 「お揃いにしよう」 女子高生か! と心で突っ込みながら、差し出された置時計を「私はいらない」と押し返す。 だけど斗夜自身は購入を決めたようだ。 私たちがフラっと立ち寄ったこの雑貨店は奥行きのある造りで、意外と店内は広かった。「お、弁当箱だ」 斗夜がとある一角で、おもむろに
Terakhir Diperbarui : 2025-04-05 Baca selengkapnya