「なんかすごく運命的じゃない?」 「……偶然って怖いよね」 勝手に盛り上がる史香とは対照的に、私は溜め息混じりの冷めた口調になった。「咲羅、なんでそんなテンション低いの?」 私としては、ここでテンションを上げる意味がわからない。 最初の出会いが衝撃すぎたから、正直この再会には戸惑いの気持ちのほうが大きい。「八木沢さんは社内で絶対モテると思う。咲羅は最初から一歩リードしてるよ!」 「……リード?」 そう言われても困ってしまう。 彼を見ていると、あのバーでのことが思い出されて、仕事がしづらいのだ。「もしかして、あんなイケメンを狙わないつもり? 向こうも偶然再会した咲羅を意識してるかもしれないのに」 「狙わないよ」 「なんで? 私にわかるように理由を言いなさい」 史香の言葉に素直に従い、自分なりにそれはなぜかと考えてみた。 体型は高身長で筋肉質だからストライクだし、顔はどちらかというと好みのタイプだ。 性格については合わないと決めつけるほど、まだ彼を知らない。「理由はとくにないかな。でも、史香だってあの人に興味ないんでしょ?」 「私は、二課の長谷川さん狙いだもの」 忘れていたけれど、彼女は最近、営業二課の男性社員である長谷川さんにかなりご執心だった。「ちゃんとした彼氏がいればさ、本城みたいな男に引っかからないで済むんじゃないの?」 史香の意見はもっともすぎて、反論の余地はない。 いくらその場の雰囲気に流されたとはいえ、一夜限りでも本城と関係を持ったのは大きな失敗だった。 だからといって、八木沢さんがいいのかどうかはまだわからない。 もちろん、本城と比べたら月とスッポンで、ずいぶんとマシな男性なのは間違いないだろう。 私を助けてくれたとき、ヒーローのように思えたから。 だけど私が一夜限りの男性と修羅場になっている場面を、彼は一部始終見ていたのだし、そんな女性は向こうがお断りのはず。 八木沢さんが転勤してきて一週間が過ぎた。 予想に反して、彼からなにも言ってはこなかった。 会話があるとすれば仕事の話ばかりで、バーで会ったことを微塵も感じさせない彼の態度に、やっぱり人違いだったのかもと疑いたくなってくる。 だけどこの日、私が仕事を終えて帰り支度をしているところに、八木沢さんが静かに歩み寄ってきた
ปรับปรุงล่าสุด : 2025-04-03 อ่านเพิ่มเติม