All Chapters of 一通の手紙から始まる花嫁物語。: Chapter 21 - Chapter 30

32 Chapters

9話-1 婚約話。

* * *エルバートはしゃがみ、ベットに寝かせたフェリシアの手を握り締める。寝室に勝手に入ってしまったが致し方無い。少しでも帰宅が遅れていたら、彼女の命はなかっただろうと思うと胸が痛む。「フェリシア、今少しの間、このままでいさせてくれ」こうしてエルバートは暫(しば)し彼女との時を過ごした後、ディアム達を書斎(しょさい)に集めた。エルバートは椅子に座り、目の前の机に組んだ手を乗せ、向側(むこうがわ)に立つディアムからフェリシアが中庭に出た経緯をまとめた話を聞く。「フェリシア様自らリリーシャに手伝いをさせて欲しいと申し出て、ラズールに図書室までの案内をされ扉の鍵を開けてもらい、図書室の掃除を終えた後、初対面のクォーツからエルバート様のお気に入りの花を勧められ」「フェリシア様はその花を摘み、リリーシャに渡そうと台所に向かった際に魔除けのネックレスを落としたことに気づき、花だけを長机に置いて中庭へと戻り、ネックレスを探していたところ」「フェリシア様が結界に近づいた事により、結界が何かと干渉をしたのか、フェリシア様がおられる一角だけ結界が弱まり、魔が結界を破ることができ、フェリシア様は魔に襲われてしまったようです」エルバートは右手で顔を覆う。(まさか私の為に花を摘み、命を失いかけたとは)「フェリシア様の手伝いを断ればこんなことには……」リリーシャが謝ろうとすると、クォーツが止め、続けて口を開く。「エルバート様、中庭に落ちていた魔除けのネックレスにございます。花に埋もれておりました」クォーツがそう伝えると、エルバートは顔を覆うのを止め、魔除けのネックレスをクォーツから手渡しで受け取った。クォーツは後ろに下がり、ラ
last updateLast Updated : 2025-04-13
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9話-2 婚約話。

* * *「あの、ご主人さま、今から晩ご飯の支度を……」夕暮れ時になる前に目覚めたフェリシアはベットの上で起き上がりながら、エルバートに話しかける。ドレスは寝ている間にリリーシャに着替えさせたとエルバートから先程聞いたものの、まさかご迷惑を掛けた身でこんな時間まで気を失っていただなんて。魔に髪で縛り上げられていたせいで腰はまだ少し痛むけれど、晩ご飯は作らなくては。「支度の必要はない。晩ご飯ならここにある」「リリーシャが作ったものだ。さあ、飲め」エルバートはミルクと野菜のスープをスプーンですくい、口に運ぶ。「あ、あの!?」「なんだ? 冷ました方が良いか?」エルバートは息を吹きかけようとする。「そ、そのままで大丈夫です」フェリシアが口を開けると、エルバートはスプーンを中に入れ、スープを飲ませる。(雲の上のような人になんて恐れ多いことを!)そう恐縮し、目のやり場に困り、スープの入った器を見ると、隣にブルーの花が添えられていた。「あ、その花……」(ご主人さまがお気に入りの……)「私の寝室の花瓶に飾る花を摘みに中庭に出たそうだな」「は、はい、申し訳ありません」「もういい」エルバートはそう言い、フェリシアの首に魔除けのネックレスを付ける。「魔除けのネックレス、見つけて下さったのですか?」「クォーツがな」「そうですか、ありがとうございますとお伝え下さい」「分かった、伝えておく。それからこれも」エルバートはフェリシアに宝石が上品に輝くリボンのような形をしたシルバーの髪飾りを見せる。その髪飾りには2本の三日月の形をした綺麗な垂れ飾りも付いてい
last updateLast Updated : 2025-04-14
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9話-3 婚約話。

* * *その夜のこと。ブラン公爵邸の居間は凍りついたような空気に覆われていた。エルバートの母であるステラ・ブランが馬車で執事と共に駆け付けてきたからだ。腰が少し痛むフェリシアとエルバートの真向かいに座るエルバートの母は美しく、キリッとした表情でエルバートを見ている。エルバートの父は公務で忙しい方らしく、執事とふたりでここ に駆け付けてきたのだとエルバートと玄関で出迎えた際に彼女からすでに聞いており、エルバートによると、母だけでも厄介で、マナーに厳しい方らしく、面倒そうな顔をした後、 気をつけろ、良いな? と居間に入る前に念を押された。けれど、令嬢でもない自分がこの場に同席しているだけでも、すでにマナー違反な気がしてならない。「エルバート、ブラン公爵邸が魔に襲われるだなんて、一体、 どういうことなの?」エルバートの母が怪訝な顔で尋ねる。「魔が私の力を上回り、一部の結界が破られ、入り込まれた」「よって、今後は結界をより強化し、ブラン公爵邸を守っていく。それだけのことだ」「母上にご足労頂くことも、もうない」「そう」エルバートの母は冷たく返すと初めてフェリシアを見る。「貴女が花嫁候補のフェリシア・フローレンスさん?」「は、はい」エルバートの母は、にっこりと笑う。「単刀直入に言うわ。エルバートに婚約破棄をさせるから今すぐここから出て行って頂けるかしら?」フェリシアは固まり、エルバートは表情を崩さない。「エルバートには、こちらのアマリリス・シェリー嬢とご婚約して頂きたいの」エルバートの母は鞄から新聞のようなものを取り出し、スッと差し見せる。(わ、綺麗な人……)「よって、こちらの事情も兼ねて、貴女には良い額を支払う
last updateLast Updated : 2025-04-14
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10話-1 生家へ。

“婚約破棄はお受け出来ません、ここも出て行きません”フェリシアの強き覚悟の言葉にエルバートは両目を見開く。その直後、パシャッ!机に置かれていたグラスのワインをエルバートの母の手によって掛けられた。(あ、ご主人さまに仕立てて貰ったドレスが汚れて……)「私になんて物言いなの!? 身分をわきまえなさい!」「エルバートのご婚約はこちらで進めますからその心づもりで」エルバートの母は椅子から立ち上がり、居間の扉からスタスタと出て行く。「奥様! お待ち下さいませ!」「ステラ様、玄関までお送り致します!」エルバートの母の執事とラズールの声が廊下から続けて聞こえ、やがて静かになるとエルバートはフェリシアを見るなり、息を吐く。(ご主人さま、確実に怒っていらっしゃるわ。謝らなくては)フェリシアは椅子から立ち上がり、腰に少し痛みを感じながらも床に跪く。「ご主人さま、せっかく仕立てて頂いたドレスを汚してしまい申し訳ありません」「お母さまに対しても、あのようなおこがましい発言をしてしまい、大変申し訳ありません」「ですが、ご主人さまからの婚約破棄ならば仕方ありません」「ご命令に承従(しょうじゅう)し、今すぐここから出て行きます」エルバートは椅子に座ったまま、フェリシアを見据える。「ならば、命じる」(ああ、ついに婚約破棄されてしまう――――)「婚約破棄はしない、ずっとここにいろ」エルバートの命令の言葉に驚いて、声も出ない。「聞こえなかったか?」エルバートは椅子から立ち上がり、跪くフェリシアの前にしゃがむ。「私がフェリシアにここで共に暮らして欲しいんだが?」フェリシアが号泣すると、エルバートはフェリシアを抱き締める。「ご主人さまっ、ワインが付いて……」「問題ない」
last updateLast Updated : 2025-04-15
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10話-2 生家へ。

「エルバート様、どうなされたのですか!?」「はあ、フェリシア、今日も待っていたのか」「待たなくていいといつも言っているのに」確かに会話が減っている中で、エルバートはその言葉だけは常に口にしていた。きっと自分のことを気遣ってそう言い続けてくれたのだろう。なのに、胸がきゅっと痛む。「エルバート様、それはあんまりです。フェリシア様が毎日どんな想いでお待ちになられていたか分かりますか!?」「リリーシャさん、良いですから」「それより、一体何があったのですか?」「母上から宮殿に通達があり、私の生家であるブラン伯爵邸が魔に襲われ、現在、父上が庭で抗戦中とのことで助けて欲しいと頼まれた」フェリシアは両目を見開く。(ご主人さまの両親の家が魔に!?)「そして、フェリシア、命懸けで私の家を守ったお前にも来て欲しいとのことだ」「え、なぜそれを……?」「帰る際に玄関でラズールから聞いたそうだ」「正直、お前には家にいて欲しい。危ない目に合わせたくはない」「だが、私が必ず守ってみせる。だから共に付いて来てくれるか?」フェリシアは自分の胸に手を当て、強い眼差しをエルバートに向ける。「はい、お供させて頂きます」* * *その後、エルバートがリリーシャにクォーツとラズールを呼びに行かせ、全員に留守の間、ブラン公爵邸を守るように頼み、皆が承諾すると、フェリシアはエルバートと玄関から外に出て、ディアムが御者を務める馬車に乗り、エルバートの生家、ブラン伯爵邸に向けて馬車が動き始める。(どうか、おふたりとも無事でいて)フェリシアはそう馬車の中で強く願い続け、森を抜けて並木道を走り――、しばらくして緩い坂を昇った先にあるブラン伯爵邸の大きな門の前で馬車が停車した。エルバートが差し出した手に自分の手を添え、馬車を降りる。そしてディアムが施錠されていない門を
last updateLast Updated : 2025-04-15
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10話-3 生家へ。

すると煌びやかな広間のソファーに華やかな女性が座っていた。その女性はエルバートの母から以前見せてもらった新聞のご令嬢に似ており、フェリシアは息を呑む。「アマリリス嬢、なぜここに?」エルバートがそう問いかけ、もしかして、と心の中で一瞬思い浮かべたアマリリスの名が確信へと変わり、本物のアマリリス嬢なのだと理解した。「テオお父様に呼ばれましたの」アマリリス嬢が答えると、エルバートの母の執事が口を開く。「旦那様、エルバート様がご帰省なされました」広間は静寂に包まれ、コツ、コツ、と重い足音が響き渡る。マントを靡かせ、貴族服を着た凛々しき男性、エルバートの父であるテオ・ブランが中に入って来た。髪は長くないものの、エルバートと同じく、美しい銀色の髪をし、顔もエルバートによく似ている。「エルバート、やっと帰省したか」「父上、これは一体どういうことだ?」「私を騙したのか」エルバートは冷ややかな強い気を放つ。しかし、エルバートの父は動じない。「こうでもしないと、お前、帰省しないだろう?」「同じ伯爵の身分だった時はここで共に暮らしていたが、戦闘での活躍が認められ、公爵の位をもらい、家を出て屋敷を構えたきり一度も帰省しなかったお前が悪いのだ、反省しろ」「ご主人さま」フェリシアが声をかけると、エルバートは冷静になる。そして何食わぬ顔をして中に入って来たエルバートの母を一瞬、睨む。「虚言だと分かった以上、すぐにでもこの場を離れたいところだが」「ここまでして私を帰省させた誠の目的はフェリシアだったのだな」(え、わたし……?)「エルバート、さすがは察しが良いな」「フェリシアさんに一度会いたく、お前に連れてこさせたのもあるが、1番はお前の花嫁候補を、この家の当主である、テオ・ブランが正式に決める為だ」エルバートの父の目的を知っ
last updateLast Updated : 2025-04-16
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11話-1 初めての感情。

――そして、まずはエルバートとアマリリス嬢が踊ることとなり、不安げなフェリシアの袖を掴む手に触れ、見えないように優しく下ろすと、エルバートはアマリリス嬢の元に向かう。すると、エルバートの父が広間に軍楽隊を呼び、その弦楽器の美しく優雅な演奏と共にふたりは踊り始める。エルバートの踊る姿を初めて見たけれど、惚けてしまうくらい美しく、かっこいい。それにアマリリス嬢も引けを取らず、エルバートと息がぴったりと合っている。(雲の上のようなおふたり。ほんとうに絵になるわ…………)やがて、アマリリス嬢とエルバートが踊り終え、フェリシアはエルバートの元まで歩いていき、向き合った状態で足を止める。けれど、緊張で足がすくんでしまう。(せっかくクォーツさんにダンスの特訓をしてもらったのに。こんな足でちゃんと踊れるかしら…………)そう、足に目線を向けながら不安に陥った時だった。「……フェリシア、こちらを見ろ」エルバートに小声で話しかけられ、顔を見る。それだけで不安が一瞬にして消えた。「……私がリードする。だから安心して身を任せろ」「……はい」同じように小声で返すと、エルバートが手を差し出す。フェリシアはその手に自分の手を添えた。それを合図にアマリリス嬢の時と同じ軍楽隊による弦楽器の優雅な演奏が始まり、共に踊り始める。そうして少し慣れた頃、エルバートの手が腰に触れ、顔がぐっと近づく。お互いに見つめ合うと、離れ、踊り続ける。ほんの一瞬顔が近づいただけなのに、顔が熱い。(リードするってご主人さまおっしゃっていたけれど、こんなの身が持ちません)そう思いながらも、不思議と嬉しさの方が勝る。
last updateLast Updated : 2025-04-16
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11話-2 初めての感情。

フェリシアは左側から席に着き、ナプキンは2つに折り、輪を手前にして膝にかけて待つ。するとやがてエルバートの母の執事による豪華な肉料理のフルコースが始まり、白ワイン入りグラスは親指から中指の3本で持ち、薬指で固定して飲み、バラの花びらのような生ハムトマトの前菜はナイフとフォークを外側から使い、美しさを楽しむよう、いっぺんに崩さないように左側から少しずつ食べ、クリームスープはスプーンを手前から奥へ動かしてすくい、パンは手で一口大にちぎり、そのパンに少しずつバターをのせて食べ、肉料理である牛フィレのパイ包み焼きは左側の端から食べやすい大きさに切りながら頂き、デザートの華やかなケーキは固かった為、ナイフで切り、食事が終わると、ナイフとフォークを揃え、皿の右下へ置き、ナプキンはテーブルの右側へ無造作に置いて、左側から退席した。こうして、食事マナーも無事に終え、最後の料理作りとなり、フェリシアはアマリリス嬢と共に広間から台所へとエルバートの母の執事に案内され、それぞれビーフシチューを作り始める。ブラン伯爵邸の台所もまた厨房のように広かった。食事マナーを終えた時、エルバートとディアムは見守ってくれていたけれど、エルバートの両親、アマリリス嬢はまたどこか驚いた様子だった。きっと上手く出来ておらず、呆れていたのだろう。そして最後の料理作りは毒や不正が働くのを考慮し、先にディアムとエルバートの父の側近、続いてエルバートとエルバートの母が順に食べ、最後にエルバートの父が食べることになった。だから、(料理を教えてくれたリリーシャさん、そして何よりこのビーフシチューの料理を認めてくれたご主人さまに決して恥をかかせる訳にはいかないわ)そう思っていると、アマリリス嬢が話しかけてきた。「フェリシア様はやはりお料理手慣れていらっしゃるわね」「え?」話しかけられると思っていなかった為、フェリシアは驚く。
last updateLast Updated : 2025-04-17
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12話-1 正式な花嫁候補とご命令。

フェリシアはアマリリスを見つめる。「はい、わたしもエルバート様が好きです」そう、告白すると、アマリリスは優しく微笑む。「ならば、お互い負けられませんわね」「フェリシア様、お料理にそれぞれ全力を尽くしましょう」「はい」その後、しばらくして、フェリシアとアマリリスのビーフシチューが出来上がると、皿にそれぞれ少し盛り、お互いにスプーンで味見をし、台所まで来たディアムとエルバートの父の側近にはきちんと盛り付けをして、フェリシア達のビーフシチューをスプーンで食べて完食してもらい、エルバート達が食べる6皿の毒味もしてもらう。すると全皿問題ないと判断され、広間までディアムがフェリシアのビーフシチュー、エルバートの父の側近がアマリリスのビーフシチューを責任を持ってお盆で運び、エルバート、エルバートの母、エルバートの父のテーブル席にエルバートの父の側近がアマリリスのビーフシチューを一皿ずつお出ししていき、その後に続いてディアムがフェリシアのビーフシチューを同じようにお出しして、エルバート達のテーブルにそれぞれ2皿ずつ並ぶ形となった。「では私から」エルバートはそう言い、スプーンを持つ。そんなエルバートの姿を心臓をドキドキさせながら、アマリリスと一緒に見守る。エルバートはアマリリスのビーフシチューからスプーンで食べ、完食するとスプーンを自身に対し平行にして置き、普段と変わらない冷酷な表情で頷いた。隣のアマリリスをふと見ると、両目に涙を薄らと浮かべている。エルバートに初めて自分の料理を食べて貰え、更に完食して貰えたことが余程嬉しかったのだろう。アマリリスのビーフシューを先程味見したけれど、とても高貴な味で美味しかった。だからエルバートも頷くくらい美味しかったに違いない。そう思っていると、エルバートと一瞬目が合った。それを合図にエルバートはフェリシアのビーフシチューを新たなスプ
last updateLast Updated : 2025-04-18
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12話-2 正式な花嫁候補とご命令。

「正式な エルバートの 花嫁候補は、アマリリス嬢とする」エルバートの 父のその言葉を聞き、頭が真っ白になった。エルバートは冷酷な表情のまま黙ってエルバートの父をただ見つめる。「フェリシアさん、貴女には最初から最後まで驚かされた」「特に料理のビーフシチューは素晴らしかった」「だが、アマリリス嬢のビーフシチューの方が優れていると判断した」「しかしながら、努力を配慮し」「フェリシアさんには一ヶ月間、ブラン公爵邸にいる事を許す。だが、その後、ブラン公爵邸から出て行って頂くこととする」一ヶ月後は晩夏。つまり一番暑い時期に出て行けと言う。死んでもかまわないといわれたようなもの。エルバートと一ヵ月間一緒にいられるのは嬉しいけれど、(これでは すぐに出て行けと命じられた方が余程マシだわ)「父上! これはやはりフェリシアを追い出す為の口実を作る茶番であったか!」エルバートは叫び、冷ややかな物凄く強い気を放つ。しかし、エルバートの父はその気を無視して話を続ける。「異論は一切認めん」「一ヵ月後にブラン公爵邸にはアマリリス嬢に住んで頂く」その言葉を聞いたエルバートは剣に手を掛ける。いけない。魔もいないこのような場で剣を抜かせてはだめ!「分かりました」「一ヶ月後、ブラン公爵邸から出て行きます」エルバートは驚いて剣から手を放す。「フェリシア、何を」エルバートと初めて出会った日、尽くそうと、勤めを全うするしかない、どんなに嫌な顔をされようともと心を決めていたのに。「ご主人さま、力及ばず、申し訳ありません」フェリシアはそう言って頭を深く下げる。すると近くの教会の鐘の音が聞こえた。フェリシアは頭を上げ、一人、 広間から駆け出て行く。悲しいはずなのに涙も出ず、心の痛みも感じない。自分
last updateLast Updated : 2025-04-19
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