「もう。さっき、まだ話してる途中だったのに。なんで出て行ったのさ〜」陣内くんがこちらに近づいたので、反射的に彼から距離を取る。「そんな警戒しなくても、何も取って食ったりしないよーっ」だったら、私にいちいち近づかないで欲しい……!陣内くんの手がこちらに伸びてきたため、また何かされるのかと思っていたら。「はい、これ」陣内くんが私に差し出した大きな手のひらには、星の髪飾りが。「それ……」自分の頭の右側に手をやると、今朝つけてきたはずの髪飾りがなかった。「これ、梶間さんのでしょ?さっき部屋を出て行くときに、落ちたのが見えたから」もしかして陣内くん、髪飾りを拾って届けるために、私を追いかけてきてくれたの?「あ、ありがとう」「俺、母親がアメリカ人で、小学生まではアメリカに住んでたんだけど。そのせいか、ボディタッチが激しいとか、距離が近いってよく言われるんだよね」そうだったんだ。「だから、もし梶間さんに嫌な思いをさせちゃってたら、ごめんね?」「ううん」「でも、梶間さんのことを可愛いって思ってるのは本当だよ」陣内くんが、パチンと片目を閉じる。私のことを可愛いだなんて。陣内くんって、目が悪いんじゃ?!「そうだ。さっきの非礼のお詫びに、その髪飾りは俺がつけてあげるよ」「え?いや、私、自分でつけられるから」「いいのいいの。遠慮しないで」私が持っていた星の髪飾りを、陣内くんに取られてしまった。「さあさあ、梶間さん前向いて!」陣内くんに両肩を掴まれ、私は半ば強引にくるっと前を向かされた。そして、私の髪に陣内くんの手が触れ、すうっと指で髪の毛を梳かれる。「梶間さんの髪ってきれいだね~。めっちゃサラサラじゃん」ちょっ、触られるなんて嫌だ。ただ、髪飾りをつけるだけなのに。わざわざ髪の毛を、手櫛でとく必要ある!?陣内くん。さっきは落とし物を届けてくれて、少しは良いところもあるのかもって思ったのに。やっぱりこの人のことは、苦手かもしれない。私がこの場から逃げ出したいと思い、目をきつく閉じたそのとき……突然、腕をガシッと誰かに掴まれた。「はぁ……萌果ちゃん、探したよ。ここにいたんだ」私の左腕を掴み、私たちの間に入ってきたのは……藍だった。えっ、どうして藍がここに!?高校の制服姿の藍は、前髪が少し乱れていて。変装のつもりなのかメガネをかけ、
Last Updated : 2025-03-27 Read more