All Chapters of 芸能人の幼なじみと、ナイショで同居しています: Chapter 21 - Chapter 30

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第21話

「もう。さっき、まだ話してる途中だったのに。なんで出て行ったのさ〜」陣内くんがこちらに近づいたので、反射的に彼から距離を取る。「そんな警戒しなくても、何も取って食ったりしないよーっ」だったら、私にいちいち近づかないで欲しい……!陣内くんの手がこちらに伸びてきたため、また何かされるのかと思っていたら。「はい、これ」陣内くんが私に差し出した大きな手のひらには、星の髪飾りが。「それ……」自分の頭の右側に手をやると、今朝つけてきたはずの髪飾りがなかった。「これ、梶間さんのでしょ?さっき部屋を出て行くときに、落ちたのが見えたから」もしかして陣内くん、髪飾りを拾って届けるために、私を追いかけてきてくれたの?「あ、ありがとう」「俺、母親がアメリカ人で、小学生まではアメリカに住んでたんだけど。そのせいか、ボディタッチが激しいとか、距離が近いってよく言われるんだよね」そうだったんだ。「だから、もし梶間さんに嫌な思いをさせちゃってたら、ごめんね?」「ううん」「でも、梶間さんのことを可愛いって思ってるのは本当だよ」陣内くんが、パチンと片目を閉じる。私のことを可愛いだなんて。陣内くんって、目が悪いんじゃ?!「そうだ。さっきの非礼のお詫びに、その髪飾りは俺がつけてあげるよ」「え?いや、私、自分でつけられるから」「いいのいいの。遠慮しないで」私が持っていた星の髪飾りを、陣内くんに取られてしまった。「さあさあ、梶間さん前向いて!」陣内くんに両肩を掴まれ、私は半ば強引にくるっと前を向かされた。そして、私の髪に陣内くんの手が触れ、すうっと指で髪の毛を梳かれる。「梶間さんの髪ってきれいだね~。めっちゃサラサラじゃん」ちょっ、触られるなんて嫌だ。ただ、髪飾りをつけるだけなのに。わざわざ髪の毛を、手櫛でとく必要ある!?陣内くん。さっきは落とし物を届けてくれて、少しは良いところもあるのかもって思ったのに。やっぱりこの人のことは、苦手かもしれない。私がこの場から逃げ出したいと思い、目をきつく閉じたそのとき……突然、腕をガシッと誰かに掴まれた。「はぁ……萌果ちゃん、探したよ。ここにいたんだ」私の左腕を掴み、私たちの間に入ってきたのは……藍だった。えっ、どうして藍がここに!?高校の制服姿の藍は、前髪が少し乱れていて。変装のつもりなのかメガネをかけ、
last updateLast Updated : 2025-03-27
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第22話

「ちょっと、藍……!」あれから私は、藍に腕を引かれたままカラオケ店を出て、家に帰ってきた。そのまま2階の藍の部屋まで連れて行かれ、私は二人掛けの黒のソファに座らされる。そこでようやく私は、藍に掴まれていた腕を解放された。「ねえ、さっきの何!?どうして藍があそこにいたの!?」「たまたま学校で萌果ちゃんの教室の前を通ったとき、カラオケに誘われてるのが聞こえて。なんとなく気になって、来てみたんだよ。そしたら、萌果がアイツに迫られてて。思わず声をかけたんだ」藍が、私の隣に腰をおろす。「だとしても、陣内くんの前であんなことをして……もし相手が藍だってバレたら、まずいんじゃない!?」「でも……萌果があいつに触られて、嫌な顔してるのに。ただ黙って見てるなんて、そんなの俺にはできないよ」伸びてきた指がすっと私の髪に触れ、ドキリとする。「萌果。俺に触れられるの……イヤ?」「い、嫌じゃない……」私は、首をフルフルと横に振る。「そっか。それなら良かった」藍は安心したように微笑むと、彼の長い指が私の髪を梳いていく。藍に髪を何度か梳かれた後、今度は髪の毛をひと束掬われ、藍の唇がそこに落ちた。「ら、藍?!」「アイツに触られたところ、消毒しないと」──チュッ。リップ音を立てながら、藍に繰り返し髪に口づけられる。陣内くんに触れられたときは、あんなに嫌だったのに。相手が藍だと、なぜか不思議と嫌じゃない。それは藍が幼なじみで、私にとっては弟みたいな存在だから?それとも……。「ねぇ、萌果ちゃん。そもそも今日は、学校が終わったら早く帰ってきてって、母さんに言われてたよね?それなのに、カラオケで男と遊んでたんだ?」「ち、違うの。あれは、私の親睦会をしようってクラスの子たちに誘われて、断れなくて……っ」髪に触れていた手がすぅっと背中を撫で、腕を滑り、唇に触れる。「そもそも、萌果が今日カラオケに行かなきゃ、陣内ってヤツに、ああいうことをされることもなかったんじゃないの?」「きゃ!」私はソファの座面に、ぽすんと押し倒されてしまう。「人に言われたことを守れない悪い子には、お仕置きしなくちゃね」お、お仕置きって……!藍の言葉に、ゴクリと唾を飲みこむ。お仕置きって、私一体なにをされるの!?
last updateLast Updated : 2025-03-28
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第23話

もしかして、今日の夕飯抜きとか?私があれこれと、ひとりでお仕置きについて考えていると。「ひゃっ!」藍の整った顔が近づき、ふーっと耳に息を吹きかけられた。「萌果ちゃん……耳、今も弱いんだ?」「……っ」藍の言うとおり、私は昔から耳が弱い。だから、私にとってこれは、もう十分お仕置きになる。「ふふっ。そっかぁ」藍が、楽しそうに口角を上げた。そしてカプッと耳たぶを噛まれ、身体が小さく跳ねる。「~っ。ら、藍。お願い、もうやめて……」「萌果がちゃんと反省するまで、やめてあげない」「……っん」藍に甘噛みされたまま舌で耳の縁をなぞられ、甘い痺れが走る。「やばい。涙目になってる萌果ちゃん、可愛すぎる」「っうう」私が耳が弱いことを知ってて、こんなことをしてくるなんて。藍はイジワルだ……!ほんと、いつの間にこんな子になっちゃったの?悪い子は私だけじゃなく、藍も同じじゃない!それから私の耳を解放した藍は、そのまま私の首に顔を埋めた。直後、首筋にピリッと痛みが走る。「ちょっ、ちょっと藍!今、何したの?」「何って……萌果は、俺のだっていう印をつけただけ」「……っ!」ここでようやく、私は藍にキスマークをつけられたのだと分かった。「首、もし人に見られたら……」「大丈夫。襟で隠れるところだから」藍が、楽しげに目を細める。「ていうか私、藍のものじゃないんだけど!?」私の言葉に、笑っていた藍の顔が一変。とても真剣な顔つきになった。「そうだね。今はまだだけど、俺はいつか……萌果を本当に自分のものにしたい。そして俺は、萌果のものになりたいってずっと思ってる」こちらを真っ直ぐ見つめる瞳。「俺がこんなふうに思うのは、今も昔もこれからも萌果だけだから」藍は小さく微笑み、今つけたばかりの赤い痕を指でなぞる。「大好きだよ、萌果ちゃん。俺が萌果にキスするのも、意地悪するのも……萌果のことが好きだから。これだけは、ちゃんと覚えててね?」「藍……」小学生の頃、私はあなたのことを振ったのに。高校生になって、今や人気モデルになっているというのに。それでも変わらず、ずっと私を想ってくれてるなんて。「萌果ちゃん、前向いて?髪飾りつけるから」藍に言われ、ソファに座り直して前を向くと、藍は星の髪飾りを頭につけてくれた。「ありがとう」「ううん。萌果ちゃん、可愛いよ
last updateLast Updated : 2025-03-29
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第24話

藍の部屋に来るのは、私が引っ越して来た日と、朝なかなか起きて来ない藍を一度起こしに来たあの日以来、3回目だけど。今までは、部屋をゆっくり見る余裕なんてなかったと思った私は、藍の部屋をぐるりと見渡す。白と黒で統一された、オシャレなスタイリッシュな部屋だなぁ……あっ。あれは、私の写真?私が写っている写真が数枚、壁に貼られているのを見つけた。小学生の頃に撮った藍との2ショットから、笑顔の私がひとりで写っているものまで。離れてても、私の写真をそばに置いてくれてたんだなって、嬉しくなった。「萌果ちゃーん!夕飯の準備が出来たから。下に降りてきてくれる?」「はーい」再び階下から橙子さんの声がし、私は藍の部屋を出て階段を駆け下りた。1階のリビングのドアを開けると……。パンパンッ!パーンッ!!突然クラッカーの派手な音が鳴り響いて、紙吹雪が舞う。え?!「「萌果ちゃん、お誕生日おめでとーう!!」」クラッカーを手に笑顔の藍と橙子さんを見た私は、目を大きく見開く。えっ、誕生日……?あっ、そうだ!ここに引っ越してきて、10日あまり。まだ慣れない生活にバタバタしてて、すっかり忘れていたけど……今日4月15日は、私の17歳の誕生日だ。部屋はナチュラルカラーのバルーンや、モカ色のガーランドなどで飾りつけがされていて、テーブルの上にはごちそうが並ぶ。「藍がね、萌果ちゃんに内緒で誕生日のサプライズパーティーをしようって、計画したのよ?」「うそ。藍がですか?!」「ちょっ、母さん……!」藍のほうを見ると、頬がわずかに赤らんでいる。まさか、藍が私の誕生日を覚えていてくれたなんて……嬉しいな。だから今朝、“今日は学校が終わったら早く帰ってきて”って、橙子さんが言ってたんだ。「萌果ちゃん。これ、私からのプレゼントよ」橙子さんが、化粧品セットを渡してくれる。「嬉しい。ありがとうございます!」「萌果ちゃん。俺からはこれを……」「うわぁ、すごい。キレイ!」藍が私に渡してくれたのは、白薔薇の大きな花束だった。「私、花束なんて初めてもらったかも」「萌果ちゃんだけでなく、俺にとっても今日は大切な日だから。年に一度の大切な日を、一緒にお祝いできて嬉しいよ」「藍……ありがとう」思わぬサプライズに、私は目頭が熱くなる。「ちなみに萌果ちゃんは、白薔薇の花言葉って
last updateLast Updated : 2025-03-30
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第25話

翌朝。「梶間さん。おはよう」私が登校すると、真っ先に陣内くんが声をかけてきた。「お、おはよう……」「梶間さん、昨日あれから部屋に戻って来なかったね?」──『ほら萌果ちゃん、帰るよ』昨日のカラオケでのことが、 ふと頭の中を過ぎった。私が陣内くんに絡まれて困っていたところを藍が助けてくれて、そのまま……。「もう。昨日は、せっかくの親睦会だったのに~」「えっと。昨日はちょっと頭が痛くて、先に帰らせてもらったの。柚子ちゃんには連絡したんだけど、伝わってなかった?」「あっ!そういえば、円山さんがそんなことを言ってたね〜。頭痛はもう大丈夫?」「う、うん」なんか、わざとらしい物言いだなぁ。「ていうか、あれからずっと気になってたんだけど……昨日、カラオケで梶間さんのことを連れ去った男って誰?」陣内くんに藍のことを聞かれ、ドキリとする。「……もしかして、彼氏?」「かっ、彼氏じゃないよ!えっと、あの子はちょっとした知り合いっていうか」「ふーん。知り合い、ねぇ……」陣内くんがゆっくりと、私に近づいてくる。陣内くんもいちいち私に構ってないで、友達のところに行けばいいのに。「おっ?」すると、陣内くんの視線が私の首元へ。「ねえ。それ、どうしたの?」「え?」「こーこ」陣内くんに首筋をツーッと指で撫でられ、思わず固まる。「梶間さんのここ、赤くなってるじゃん」「っ!」陣内くんに、昨日藍につけられたキスマークのことを言われているのだと気づいた私は、内心冷や汗ダラダラ。赤い跡がブラウスの襟から少し見えていたから、今朝髪の毛で隠してきたのに。まさか、速攻で気づかれちゃうなんて……!「もしかしてそれ、昨日の男にでもつけられた?」──ギクッ。「な、何言ってるの!?ち、違うから!たぶん、蚊に刺されちゃったんだと思う」「へー。蚊って、4月の今でも飛んでたかなー?」……う。こんなふうに、いちいち詮索してくるなんて。陣内くん、ほんと何なの?!「まあ、いいや。梶間さん、彼氏いないって言ってたし」陣内くんが私から離れて、ホッとしたのもつかの間。「ねえ。彼氏がいないのなら俺、これから梶間さんにアタックしても良いよね?」陣内くんに、ウインクされる。「あ、あたっく?!」「そう。俺、梶間さんのことがますます気に入っちゃったから……いいよね?」「…
last updateLast Updated : 2025-04-01
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第26話

「しーっ」聞き慣れた声がして、ハッと顔を上げると……すぐ目の前にいたのは、藍だった。「えっ、藍!?どうしてここに……?」「しー……大きい声出さないで」藍は立てた人差し指を、自分の唇に当てた。そして、小声で話し始める。「急にごめん。萌果ちゃんと、話がしたくて。でも、学校で人前で話しかけるのはダメでしょ?」そっか。だから藍は、私をこんなところに……。「あはは。でさー」廊下から複数の声と足音が聞こえ、私たちは慌ててしゃがみこむ。二人で壁際にくっつくようにして、体を縮こめる。「ねぇ、萌果ちゃん。最近、この前のカラオケのときの男と仲良くない?」「そ、そう?」まさか、最近学校で陣内くんに話しかけられてるところ、藍にも見られていたなんて。「陣内くんは、ただのクラスメイトだよ?」「ほんとに?」私の首元に、藍の人差し指が触れた。ツーッ──……上から下、下から上へと、藍が指先を滑らせる。「ひゃっ……」くすぐったさに、私は思わず身をよじらせてしまう。「ここ、前につけた痕。薄くなってきてるね。もう一度、ここに印をつけさせて?」え!?「な、なんで!?」「俺がいない間、萌果に悪い虫がついて欲しくないから」「俺がいない間って……藍、どこかに行くの?」「うん。今から早退して、撮影で沖縄に行くんだよ。2泊の予定で」「えっ、沖縄!?良いなぁ」青い海に、白い砂浜。パイナップルにソーキそば、美味しい食べ物もたくさん……羨ましい。「良くないよ。萌果に数日間会えないなんて、死ぬ」死ぬって!藍ってば、大袈裟だよ!「本音を言うなら俺、撮影なんて行きたくない」「撮影行きたくないとか、そんなこと言わないの!お仕事なんだから」「分かった。もう言わない」しょんぼりとした顔をする藍。「俺、撮影ちゃんと頑張るから……行く前に、萌果を充電させてくれない?」「じゅ、充電?」「うん。会えない日の分も、今のうちに萌果に触れておきたくて」藍の腕が伸びてきて、後ろから抱きしめられた。甘えるように首筋に擦りつかれて、くすぐったい。「ちょ、ちょっと藍……ここ、学校だよ!?」誰かが来るかもしれないというハラハラ感に、胸の鼓動が速くなっていく。「分かってる。ちょっとだけにするから……ダメ?」こてんと首を傾げて、可愛くおねだりされたら……私はもう、抱きしめられてい
last updateLast Updated : 2025-04-02
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第27話

【藍side】仕事で沖縄に来て2日目。抜けるようなコバルトブルーの空の下。俺は今、エメラルドグリーンの美しい海で、清涼飲料水のテレビCMの撮影をしている。「久住くん、ここは爽やかな笑顔で頼むよ」「はい」細かな動作を監督たちと確認し、リハーサルのあと、CM撮影が本格的に始まった。学ランの衣装に身を包んだ俺は、白い砂浜を全速力で駆け抜ける。そして海をバックに髪をかきあげ、青空の下で笑顔で清涼飲料水をゴクゴクと飲んだ。「はい、オーケー!」監督からのカットがかかり、撮影はストップする。「久住くん。君、演技もいけるねぇ。一発オーケーだったよ」「ありがとうございます」監督に褒められると、素直に嬉しい。その後、スチール撮影や雑誌のインタビューに答えたあと、CM関連の仕事は無事に終了。マネジャーと共に、宿泊するホテルに戻る準備をしていると。「おっ、お疲れ様です!あの……藍さんに、お話があるんですけど」先ほどのCM撮影で少しだけ共演したモデルの女の子が、緊張した面持ちで俺に声をかけてきた。「……話って何ですか?」そして俺は今、共演したモデルの女の子と向かい合って立っている。CMで共演したと言っても、清涼飲料水のペットボトルを彼女に渡してもらうだけだったが。「あ、あの……」俺の目の前で、顔を真っ赤に染めた女の子の名前は、AINA(アイナ)。最近、可愛いと人気急上昇中の同世代のファッションモデルだ。「あっ、あの、わたし……藍さんのことが好きなんです!」「……無理」迷わず、即答する俺。芸能界デビューしてから、学校や仕事でほぼ毎日のように誰かに告白されるけど。誰からの告白も、俺がOKすることは絶対にない。「悪いけど俺、AINAさんとは付き合えないです」「どうして!?」「……事務所から、恋愛は禁止だと言われているので」キッパリと言い切ると、俺はスタスタと歩いていく。恋愛禁止だなんて、もちろん口から出まかせ。仕事関係の人からの告白を断ってもなるべく角が立たないようにするための、断り文句みたいなものだ。本当の理由は、俺にはずっと好きな人がいるから。──梶間萌果。俺が長い間、ずっと想い続けている女の子の名前。いつから萌果が好きなのかと聞かれたら、それは分からない。俺は、物心ついたときからすでに萌果のことが好きだったから。4月生まれ
last updateLast Updated : 2025-04-03
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第28話

そして小学5年生の3月。『あのね、実は僕……萌果ちゃんのことが、ずっと好きだったんだ』震える声で何とか萌果に告白するも、彼女の答えはNO。俺は、見事に振られてしまった。『藍は家族っていうか、弟みたいに思ってたから。藍のことを、そんなふうに見たことがなかったの。だから、ごめんね』と。ショックだった。萌果とは同い年なのに、弟にしか見られていなかったなんて。萌果は『藍のことを、そんなふうに見たことがなかった』と言っていたから。萌果に弟としてではなく、一人の男として見てもらえるようになったら、もしかしたら俺にもまだチャンスがあるのでは?そう思った俺は、それ以来勉強も運動も人一倍頑張った。少しでも強くなろうと、母さんに頼んで家の近所の空手教室にも通わせてもらった。筋トレだって毎日やって、身だしなみも整えようとオシャレの研究もした。もし次に萌果と再会できたときは、弟ではなくちゃんと異性として見てもらえるように。そして、俺のことを好きになってもらって、告白のリベンジをするために。その日をひたすら夢見て、自分にできることは何だってやった。それから数年が経ち、中学2年生の頃に街中で俺は今の芸能事務所の人にスカウトされた。元々芸能界なんて全く興味がなかったけど、もし売れて知名度が上がれば、九州にいる萌果の目に入ることがあるかもしれない。そう思った俺は、ファッション誌のモデルとしてデビューしたのだった。◇そして高校2年生になった今。萌果がようやく福岡から東京に戻ってきて、ウチで同居している。ずっと離れて暮らしていた萌果が、毎日俺の家にいるなんて夢みたいだ。高校生になった萌果は、小学生の頃よりも大人っぽくなっていて。何よりすごく綺麗になっていて、びっくりした。萌果に少しでもドキドキして欲しくて、距離を縮めるとすぐに顔が真っ赤になる。男慣れしていない、そんなところも可愛い。あまりガツガツし過ぎると良くないってのは、分かってるんだけど。5年間会えなかった反動なのだろうか。萌果を前にすると、好きって気持ちが溢れてしまって。すぐに触れたくなって、ときどき歯止めがきかなくなる。この同居生活で、萌果が少しでも俺のことを意識してくれると良いんだけど。実際は、どうなんだろう……?**夜。仕事を終えてホテルの部屋に戻ってきた俺は、ベッドに思いきりダイブす
last updateLast Updated : 2025-04-04
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第29話

『えっと、実は……陣内くんに、放課後遊びに行こうって誘われて……』「は!?」陣内……その名前を聞いた途端、一瞬で頭に血が上る。「もしかして萌果ちゃん、陣内と遊びに行ったの?」『まさか!行ってないよ。誘われたけど、どう断ろうかと私が困ってたら、柚子ちゃんが横から助け舟を出してくれて……』「そう」行かなかったと聞いて、ホッとする。“柚子ちゃん”って確か、俺たちと小学校から一緒だった円山さんだっけ?「円山さんって、いい人だね」「そうなの!柚子ちゃんは、いつも優しくて。ほんとーに、可愛くていい子なんだよね」円山さんのことを嬉しそうに話す、萌果が可愛い。つーか、可愛くていい子なのは萌果もじゃん。「そっか。沖縄のお土産、いっぱい買って帰るね」円山さんにもお礼として、何か買って帰ろう。『ありがとう。電話してから、1時間近くなるし。そろそろ寝よっか?』萌果に言われて腕時計を見ると、時刻はもうすぐ深夜2時になろうとしていた。萌果と話してると、時間なんてあっという間に過ぎてしまう。「ごめんね。長い間、電話に付き合わせてしまって」『ううん。寝る前に、藍の声が聞けて良かったよ。それじゃあ、おやすみ』「おやすみ」萌果との通話を終えると、俺はごろんとベッドに横になった。そして、真っ暗になったスマホの画面をしばし見つめる。ああ……萌果の声を聞いたら、余計に会いたくなってしまった。しかも『寝る前に、藍の声が聞けて良かった』って、めちゃくちゃ嬉しいこと言ってくれてたし……やっばい。俺は、口元を手で覆う。一刻も早く東京に帰って、萌果に会いたい。会って、真っ先に萌果をハグしたい。萌果を俺の腕のなかに閉じ込めて、誰にも渡したくない。もちろん、陣内ってヤツにも……。俺は、拳をギュッと握りしめる。陣内……最近、学校でやたらと萌果に付きまとってるのを見かけるけど。明らか、萌果に気があるよな。俺が芸能科のせいで、今年も来年も萌果と同じクラスになれないのが辛い。萌果は可愛いから、陣内が口説きたくなるのも分からなくはないけど。昔から萌果の魅力を知っていて、彼女のことがずっと好きな俺だからこそ、他の男の動向には特に敏感になる。陣内、要注意人物だな。俺も幼なじみだからって、萌果と同居してるからって、のんびりしていられない。萌果に好きになってもらえるよう、
last updateLast Updated : 2025-04-05
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第30話

日曜日のお昼。今日は藍が、沖縄から帰ってくる日。──ピンポーン。燈子さんは今出かけていていないので、私がリビングでお留守番していると、家のチャイムが鳴った。もしかして、藍かな?「はーい」私が玄関のドアを開けると、案の定そこには藍の姿が。「ただいま、萌果ちゃん」「おかえり、藍」私を見てニコッと微笑むと、藍が家の中に入ってくる。「家に帰ってきて、大好きな萌果ちゃんが『おかえり』って出迎えてくれるなんて。すごく幸せだなあ」帰ってきて早々、藍の甘い言葉に胸が小さく跳ねる。「藍、疲れたでしょう?お昼ご飯は?もしまだなら、先に食べ……」玄関からリビングに移動した途端、私は藍にいきなり抱きしめられてしまった。「お昼ご飯よりも先に、萌果ちゃんがいい」「え?」藍に抱きしめられながら耳を食まれ、思わずぴくんと身体が跳ねる。「ど、どうしたの?急に……」「充電が切れたから。まずは、萌果ちゃんをしっかりと充電しなきゃ」充電って……。そういえば、藍が沖縄に行く前にも『萌果を充電させてくれない?』って言われて。学校の空き教室で、藍にキスやハグを沢山されたんだったっけ。そのことを思い出した私は、顔が熱くなる。「萌果ちゃん、会いたかったよ」私を抱きしめる藍の手に、力がこもる。「わ、私も……会いたかった」って。何を言ってるんだろう私。でも、この家で燈子さんと初めて二人だけで夕飯を食べたとき、藍がいなくてなぜか無性に寂しくて。藍に会いたいって、思ったから。「ふーん。そっかそっか」藍のほうを見ると、ニヤリと意味ありげな笑みを浮かべていた。「萌果は、俺がいなくて寂しかったんだね」「そっ、それは……」私は藍から視線を外して、目を泳がせる。「なに?俺は、萌果と2日離れてただけでもめちゃくちゃ寂しかったけど。萌果ちゃんは、違ったの?」藍の顔がこちらに近づき、吐息がかかる距離で見つめられる。「……しかったよ」「え?」「藍と会えなくて、私も寂しかった」恥ずかしさを堪えて、正直に言ってみた。「萌果ちゃん!」すると、さっき以上に藍に力いっぱい抱きしめられる。藍……く、苦しいよ。「俺と会えなくて寂しかったって。それってもう、萌果ちゃんが俺のことを好きって言ってるようなものじゃない?」「はい!?どうして、そうなるの?違うから!」「ふふ。素直じゃな
last updateLast Updated : 2025-04-06
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