──コンコンッ 窓を叩く音。ここは3階だぞ。誰がノックなどできようものか。と、普通なら恐怖する場面だろう。けれど、俺には心当たりがあるだけに、大きな溜め息が漏れてしまった。 恐る恐る振り返る。喧しいノウェルを見送った直後の清々した|表情《かお》が、鬱陶しくも劣情を孕んだ|表情《かお》へと変わったのを自覚した。「お前、どっから入ってくんだよ」「すみません。あの、ヌェーヴェル····。ノウェルは、その、アナタにとって何ですか?」 なにを乙女の様にもじもじしているんだか。いつもの威勢は何処へやらだな。大人しいヴァニルなど不気味でしかない。「いきなりだな。····ふん、アイツはただの従兄弟だ。それ以上でも以下でもない」「そうですか」 少し表情を緩めたヴァニル。一体、何に安堵したのだろう。 「何が気になるんだ? 言いたい事があるならハッキリ言え」「····ノウェルは、貴方を好いているでしょう。貴方はどうなのかと思って」「別に、アレは俺をからかっているだけだ。遊び半分だろう? 見ればわかるじゃないか」「はぁ····。貴方は本当に愛くるしい馬鹿ですね」 ヴァニルは片手を腰に当て、もう片方の手で項垂れた頭を支えて言った。「はぁ!? 喧嘩売ってんなら買ってやろうか?」「そんな安売りしてませんよ。だいたい、喧嘩する暇があるならとことん抱き潰してあげます」「なっ、馬鹿はどっちだよ! 言っておくが、俺は男に興味があるわけじゃないからな。だからノウェルの事も、くだらない事を聞くな。まったく、誰が潰されるかってんだ····」 言い訳じみたことを言っているのはわかっている。今、俺の顔が熱くなっているのは、ヴァニルに犯される夜毎の情事を思い出してしまったからだ
Last Updated : 2025-03-07 Read more