(この流れだと、もしかして……) 「ねえ愛美さん。あなたは今日、これで学校終わりよね?」「えっ? ……あー、うん。補習受けなくていいし」(やっぱり) 愛美の予想は的中したようだ。珠莉はどうやら、愛美に叔父の案内役を頼むつもりらしい。「なになに? 何のハナシ?」 いつの間にか、さやかも廊下に来ていた。「じゃあ、あなたに叔父の案内をお願いするわ。補習は四時半ごろ終わる予定だから、その頃に私を電話で呼んで下さいな」「ちょっと珠莉! 愛美にだって断る権利くらいあるでしょ!? そんな一方的に――」 さやかが愛美を擁(よう)護(ご)する形で、二人の間に割って入った。「いいよ、さやかちゃん。珠莉ちゃん、わたしでよかったら引き受けるよ」 とはいえ、嫌々でもなかった愛美は快(こころよ)く珠莉の頼みを受け入れた。 実は内心、珠莉の叔父という人物がどんな人なのか興味があったのだ。「いいの、愛美? 引き受けちゃって」「うん、いいの。今日は宿題もないし、部屋に戻っても本を読むくらいしかやることないから」「あら、そうなの? ありがとう、愛美さん。じゃあお願いね。――さやかさん、補習に遅れますわ。行きましょう」「え? あー、うん……。いいのかなあ……?」 さやかは少々納得がいかないまま、後ろ髪をひかれるように珠莉に補習授業の教室まで引っぱっていかれた。 愛美は一旦部屋に戻ると、私服――デニムのシャツワンピース――に着替え、寮の管理室の隣にある応接室のドアをノックした。「失礼しまーす……」 中に入ると、そこにいたのは寮母の晴美さんと、スラリとした長身らしい三十歳前後の男性だった。 整った顔立ちをしていて、落ち着いた雰囲気の持ち主だ。高級そうなベージュのスーツをキッチリと着こなしている。彼が珠莉の叔父という人だろうと愛美には分かった。「あら、相川さん。いらっしゃい」「晴美さん、こんにちは。――あの、珠莉ちゃんの叔父さま……ですよね? わたし、珠莉ちゃんの友人で相川愛美といいます」「ああ、君が珠莉の代わりか。僕(ぼく)は辺唐院純(じゅん)也(や)です。珠莉の父親の末の弟で、珠莉とは十三歳しか歳が離れてないんだ」 彼の爽やかな笑顔からは、とてもイヤなセレブ感は感じ取れない。(なんかステキな人だなあ……。珠莉ちゃんとは似てないかも)「愛美ちゃん…
Last Updated : 2025-02-14 Read more