All Chapters of 恋愛ゲームの世界から脱出する方法はイケメンからの告白!?: Chapter 21 - Chapter 30

36 Chapters

第21話 人類を救うために

呆れた表情を浮かべたレンは、「また突拍子もないことを……」とつぶやく。「そうかな?」夢の中のレンは『監視されている』と言っていた。だから、穂香達の会話はどうしてもあやふやな表現になってしまう。もどかしさを感じながら、穂香は思考を巡らせた。(レンは『未来の科学者』って言ってたよね。この若さで人類を救うためのプロジェクトに参加しているって、確実に特別で優秀な人だと思う)そんな彼を最高に幸せにして、究極の幸福状態にすれば、人類の滅亡を防ぐ手立てを見つけられるかもしれない。「レン。私達、これからは、もっと積極的に仲よくなろう」人類を救うために。穂香の意図が伝わったのか、レンは小さくうなづいた。「これでもし、私が恋愛相手じゃなかったら、本気で怒りますからね? で? 仲良くって具体的には何をするんですか?」「あ、えーと、じゃあ手でも繋いでみる?」穂香が右手を差し出すと、レンは眉間にシワを寄せながらためらった。「どうして、そんなに嫌そうなの?」レンは指でメガネを押し上げる。「知っていますか? この時代の人の手には、皮膚1平方センチメートルあたり39,000~4,600,000個もの細菌がいると言われていて……」「えいっ」穂香がレンの手を握ると、レンは「うっ」とうめいた。「えっ? 別に痛くはないよね?」コクリとうなずいたレンの顔は少し赤い。予想外の反応に穂香は、首をかしげた。「レンって、もしかして、私と一緒で恋愛経験がゼロだとか、そんなことは……」「……そうですよ、ないですよ。何か文句ありますか?」「そんなにイケメンなのに!?」意外過ぎて驚く穂香に、レンがジトッとした目を向ける。「仕方ないでしょう。他人に興味が持てないんですから」「で、でも、サポートキャラなのに、恋愛経験ゼロとか、どうやって私をサポートするつもりだったの?」「それは……それなりに頑張っていたんですよ」ムスッとしているレンを見て、急に身近に感じられた。「なんだ、私達って似ている部分もあるんだね」咳払いをしたレンに、「で? 次はどうするんですか?」と尋ねられる。「そんなにたくさん思いつかないよ。今日はこれくらいでいいんじゃない?」穂香がパッとレンの手を離すと、レンは繋いでいた手のひらをジッと見つめる。「レン、気持ち悪いなら手を洗ってくる? あ、そういえば、さ
last updateLast Updated : 2025-03-08
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第22話 あの子は誰?

今後の方針を決めたところで、風景が変わる。【10月10日(日)朝/自室】(日付が変わって、日曜日になってる)穂香がベッドから起き上がると、ベッド脇にレンがいた。「えっ? お、おはよう。休日の朝に制服姿で何してるの?」レンはポケットから紙切れを取り出す。「昨日したおまじないの紙を、校内に埋めていません」「言われてみれば」夢を見たあと、紙を校内のどこかに埋めてこのおまじないは完了する。レンに「念のために埋めに行きませんか?」と誘われ、穂香は頷いた。【同日 朝/学校】制服姿になった穂香は、レンと共に校内にいた。「日曜日なのに、よく入れたね」「文化祭の準備のために、私達以外にも生徒が学校に来ているみたいですね」日曜日の校内は、人の気配がなく静まり返っている。「どこに紙を埋めようか? 前は体育館裏で先生に見つかったから、別の場所がいいよね?」「そうですね。早朝のせいか、クラブ活動をしている人もいませんし、校庭に出てみましょう」そんなことを話しながら歩いていると、廊下の角でバッタリと生徒会長に出会った。生徒会長は、黄色の瞳で穂香を見つめながら「あっ、君は……」とつぶやく。そして、レンを見たあとに「友達できたんだね」と微笑んだ。穂香は以前、生徒会長と体育館裏で会ったとき、『友達がいなくて教室に居づらい』と相談したことを思い出す。(生徒会長、あのときのことを覚えてくれてたんだ)優しさに感動していると、生徒会長が分厚いファイルを持っていることに気がついた。そのファイルから、紙が一枚落ちてくる。「あっ、落ちましたよ」とっさにしゃがみ込んだ穂香と、紙を拾おうとした生徒会長の手が重なった。(わっ、少女マンガのイベントみたいなことになってしまっている!)「穂香さん、危ない!」戸惑っていた穂香を突き飛ばすようにレンが覆いかぶさった。ガシャンと何かが割れる音がする。「え? 何?」穂香の目に映ったのは、割れた窓ガラスと、飛び散ったガラスの破片。そして、転がる野球ボール。生徒会長が「二人とも大丈夫⁉」とあせっている。(レンが突き飛ばしてくれなかったら、あの野球ボールが私に当たっていたかもしれない。当たらなくても、ガラス片でケガをしていたかも……)レンは、ずれてしまったメガネを直しながら私を見た。「私は大丈夫ですが、穂香さんは?」「私
last updateLast Updated : 2025-03-10
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第23話 雑菌まみれになる方法

【同日 夜/自室】穂香は目の前に浮かんだ文字を見て叫んだ。「えっ、何もないまま、もう夜になっちゃったってこと⁉」部屋の中を見回してもレンの姿は見えない。(たぶん、あのあと学校で何も恋愛イベントが起こらなかったから、ここまで飛ばされちゃったんだ……)このままレンとの恋愛が進まなければ、やり直しをさせられてしまう。おまじないの怖さより、延々と同じ時間をループさせられるほうがよっぽど怖い。穂香は、いそいそとおまじないの紙を取り出した。(おまじないで本当に恋が叶うかどうかはさておき、夢の中は、監視されていないレンと作戦会議ができる貴重な時間だからね)準備を整え、穂香はベッドに潜り込む。目を閉じると、すぐに眠りへと落ちていった。*夢の中では、いつもと同じようにメガネをかけていないレンが佇んでいた。真剣な表情で、自分の手を見つめている。「レン、どうしたの?」穂香に声をかけられて、レンは我に返ったような仕草をした。「穂香さんも来ましたか」「うん、まぁ。監視されずに話せる場所ってここしかないんだよね?」「そのことなのですが、未来の監視に、最近不具合が起きています」「不具合?」「バグ、とでもいうのでしょうか? ここ最近、未来から『監視映像に雑音が混ざったり、映像が乱れたりすることがある』という報告を受けていまして。これは、今までの実験では1度もなかったことです」「実験……。そういえば、人類の破滅を回避するために、未来人のレン達はいろいろ実験をしてきたって言ってたね」そこで、穂香は違和感を覚えた。「ん? あれ? 前にさ、私の結婚相手が問題だから、いろいろ変えてみたって話をしてたよね? それって、どうやって実験してたの?」レンの視線が戸惑うように泳いだのを、穂香は見逃がさない。「レン、何か隠してる? 私達は仲間なんだから、協力しようよ」深いため息が聞こえてくる。「……そうですね。実は、今まで穂香さんは、何度も失敗してこの世界でループをくり返しているんです。記憶が残ったままのときもあれば、記憶がリセットされてやり直している場合もあります」「え、こわっ。ということは、今が1回目じゃなかったんだ……」言われてみれば、レンは『穂香さんの今回の恋愛相手は――』など、言葉の端々でそのことをほのめかせていた。(レンが必死になるのは当たり前だ……。
last updateLast Updated : 2025-03-11
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第24話 怪しい女生徒を探して①

【10月11日(月)朝/自室】「びっっくりしたぁ!」穂香は、まだドキドキいっている胸を手で押さえる。(そっか、そういうことをしたら、手っ取り早くレンは雑菌まみれになれるんだ)至近距離のレンを思い出してしまい、頬が熱くなる。なんだかジッとしていられなくて、ベッドから下りると風景が変わった。【同日 朝/通学路】いつの間にか制服に着替えた穂香は、レンと並んで登校している。気まずくて、なんとなくレンの顔を見ることができない。「私達に、あの方法は無理でしょ……」「どの方法ですか?」レンに尋ねられて、穂香の頬は赤く染まる。「どのって、その、キス的な?」「穂香さん、顔が真っ赤ですよ」「誰のせいだと思って……って、レンはどうしてそんなに平気なの!?」少し前まで恋愛初心者同士でオロオロしていたのに、今のレンは涼しい顔をしている。「平気というか科学者として、研究の一環だと思えば、なんでもできます」「こ、この研究バカめ……。乙女の唇をなんだと思ってるの? 自分だけ余裕ぶってずるい!」「ずるいってなんですか? ずるいって」クスッと笑ったレンは、楽しそうだ。「こうなったら、文化祭デートで私に惚れさせて、レンの余裕をなくさせるから!」「まぁ、頑張ってくださいね」そんなことを言い合っているうちに、校門にたどり着く。いつもは開いている門が、今日は閉まっていた。「あれ? 今日お休みじゃないよね?」穂香の問いに、レンは微笑む。「安心してください。いつもより早い時間にあなたを迎えに行ったんですよ。だから、学校が開くより前に着いただけです」「なんのために?」「もちろん、昨日穂香さんが見た怪しい女生徒を探すためです」「そういえば、そんなこともあったね……」キスしそうになった衝撃が強すぎて、すっかり忘れていた。「どうやって見つけるつもりなの?」「穂香さんがいれば、すぐに見つかりますよ」閉まった門の前でしばらく待っていると、真っ青な髪が見えた。こちらに近づいてきた松凪先生が門を開けてくれる。「お前達、いくらなんでも来るの早すぎだろ」青い瞳は、驚きで見開かれていた。レンは「少し用事がありまして」と言いながら門をくぐる。いつもならすぐに教室に向かうが、レンは門の付近から動こうとしない。穂香は、そんなレンの耳元で囁いた。「ここで何をするつもりなの?
last updateLast Updated : 2025-03-12
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第25章 怪しい女生徒を探して②

時間が経つにつれ、周囲が騒がしくなってきた。穂香には姿が見えないが、登校する生徒の数が増えていっているようだ。穂香は、こそっとレンに話しかけた。「さっきの穴織くんと一緒にいる不思議なおじいさんの声、レンには聞こえてないんだよね?」レンは静かにうなずく。「どうして、私にだけ聞こえるんだろう?」「今は詳しい説明はできませんが、この世界はあなたが恋愛しやすいように作られていますからね」(そこまでしてもらって誰とも恋愛できず、何回もやり直しをさせられているらしい私って……)自分が情けなくなりながらも、穂香は昨日の女生徒を探した。辺りが一段とさわがしくなったとき、金髪の生徒会長が現れる。以前、見かけたときと同じように、なかなか前に進めずフラフラしているので、また女生徒に囲まれているようだ。(もしかしたら、生徒会長のファンなのかなって思ったけど……いない)生徒会長を取り囲んでいる人達の姿は、穂香には見えない。そのとき、生徒会長の横を通り過ぎ、校門に入った女生徒がいた。(黒髪!)野球ボールで窓ガラスが割れたときに、チラッと見た女生徒も黒髪だった。穂香は、隣にいるレンの制服の袖を引っ張る。「あの子、あの子だけ見える!」こそっと伝えると、レンはうなずいた。「あとをつけましょう」「えっ、大丈夫?」歩き出したレンは、「大丈夫です。何かあっても、一番初めの朝からやり直すだけですから」と淡々としている。(やり直すだけ……)これまでは、『そうだね』と明るく言えた。でも、やり直すたびに自分の記憶が消されていると知ってしまった今は複雑だ。(記憶を消されるなんて怖い。それに、今までレンとすごした日々も全部忘れちゃうんだよね? レンは、いつもどんな気持ちで私に『初めまして』って言ってたんだろう)なぜだか胸がぎゅっと締めつけられるように痛む。黒髪の女生徒は、教室には向かわず人目を避けるように体育館裏へと歩いて行った。キョロキョロと辺りを見回したあと、しゃがみこんで、何かを始める。(こんなところで何を?)ふと、穂香は、自分がおまじないの紙を埋めたときのことを思い出した。しばらくすると、女生徒はその場から走り去る。彼女の後ろ姿が見えなくなってから、レンと共に女生徒がいた場所に近づいていくと、土を彫ったあとがあった。レンが彫り返す。出てきたのは紙切れだった。
last updateLast Updated : 2025-03-13
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第26章 怒ってる?

【同日 朝/教室】(あっ、教室まで飛ばされてる)穂香とレンは着席していて、教壇には、松凪先生がダルそうに立っていた。「静かにしろー。今から文化祭について話し合う。実行委員の穴織と白川、あとは任せた」(えっ? 私、これから何をするか知らないんだけど⁉)困った穂香が穴織を見ると、「俺がやるから、白川さんは横にいるだけでええで」と爽やかに笑う。(助かる……けど、情報共有はしてほしいよ、穴織くん!)複雑な思いのまま穂香は穴織のあとに続き、教室の前のほうに行く。目立つことは大嫌いだったが、この世界の仕様で穂香には、レンと、先生、穴織の姿しか見えないのであまり気にならない。(おかしな世界だけど、こういうときは便利かも)穴織は、「そういうわけで、今から文化祭のクラスの出し物を決めるでー。俺がまとめたプリントを配るから、みんな見てや」と紙を配る。プリントは穴織の手書きで書かれていて、驚くほど字が綺麗だった。名家の御曹司という隠し設定に、穂香は納得してしまう。話し合いはサクサクと進み、出し物の案が出そろった。穴織が読み上げる。「はいはい。おばけ屋敷に、メイド喫茶に、展示、劇やね。けっこういろいろ出たなぁ、こんなもんかな? じゃあ、この4つでどれにするか、全員に投票してもらうで」穴織のおかげで、少しももめることなく、クラスの出し物が『お化け屋敷』に決まった。「そんなわけで、うちのクラスは、お化け屋敷をすることになったで。詳細は、また明日決めるからよろしく」松凪先生は「お化け屋敷か。楽しそうだな」と以外に乗り気だ。席に戻る途中で、穂香は穴織に声をかけられた。「白川さん、お疲れさん。放課後、時間ある?」「うん、大丈夫」「良かった。放課後また打ち合わせしよ」「じゃあ、レンには先に帰ってもらうね」穴織は、そっと穂香に顔を近づける。「いやいや、せっかくの男手。ここは帰さず、ありがたく使わせてもらおうや」悪そうな顔をする穴織。「それって、レンにも手伝ってもらってこと?」「そうそう!」「大丈夫かな……」チラッとレンを見ると、ものすごく不機嫌そうな顔をしていた。(うわっ、機嫌わるそー)穂香が席に着くと、また風景が変わる。【同日 昼/教室】(お昼休みまで飛ばされたのはいいけど……)机を向かい合わせにしたレンは、まだ不機嫌だった。(こん
last updateLast Updated : 2025-03-14
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第27章 怪異の始まり①

レンの機嫌が直ったところで、風景が変わる。【同日 放課後/教室】(今度は、昼休みから放課後に飛ばされてる)教室には、穂香とレン、穴織だけが残っていた。穴織は、「お化け屋敷の準備って、具体的には何をしたらええんやろうな」と言いながら、器用にシャーペンを指で回す。「さぁ何するんだろうね?」穂香の答えにレンが呆れた顔をした「この時代、こういうときはスマホで調べるんじゃないですか?」「そっか。調べてみるね」調べた結果、お化けに変装するための衣装や小道具、段ボールや黒い布など、いろいろ書かれている。「赤い絵の具で壁に手形をたくさんつけても雰囲気が出るって」穂香の話を聞いている穴織は、興味深そうだ。「へー、こんなんが怖いんや。なんかよく分からんわ」(まぁ、本物の化け物と戦ってる穴織くんは、偽物のお化けなんて怖くないよね。あっ、だから、この場に私が呼ばれているのかも? 普通の人の意見が知りたい、とか?)一通りお化け屋敷の作り方を調べると、それを穴織はプリントに書き込んでいく。「穴織くん、何書いてるの?」「これな、文化祭でやることをまとめて、生徒会に提出しなアカンねん」言われてみれば、文化祭実行委員の集まりで、説明があったような気がする。穴織は、手を動かしながら「段ボールをどっかにもらいに行かなアカンな」とつぶやいた。それを聞いた穂香は、すぐにスマホで調べる。「段ボールは、スーパーやドラッグストアで貰えるみたいだよ」「せやったら、レンレン一緒に貰いに行こーや」「どうして私が」嫌そうな顔をするレンに、穴織は爽やかに微笑みかけた。「俺一人やったらそんなに持たれへんやん! 白川さんに運んでもらうのは、なんか悪いし」「二人でもそんなに変わりませんよ。明日、クラス全員に頼んだほうがいいと思います」「そっか。じゃあ、そうするわー」そんなやりとりを見た穂香は、『レンって、なんだかんだいいながら面倒見がいいよね』と微笑ましくなる。そのとき、胸ポケット辺りから、シワがれた声がした。(この声は、レンには聞こえないけど、なぜか私には聞こえる『話せる武器』のおじいさん!)本来なら聞こえないはずなので、穂香も聞こえていない振りをする。『おい、涼。さっさと呪いのことを聞かんか!』「あっ」穴織は、うっかり忘れていたというような顔をした。「そういえ
last updateLast Updated : 2025-03-15
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第28話 怪異の始まり②

穂香の目の前に文字が現れる。【同日 放課後/生徒会室?】(生徒会室のあとに「?」がついてる……。そういえば、前に穴織くんが化け物退治していたときも、場所が「???」になっていたような? もしかしたら、扉が開かないのは化け物の仕業かもしれない)そうだとしたら、どれほど力を込めてもこの扉は開かない。穂香は、廊下にいるレンに声をかけた。「レン、穴織くんをここに連れてきてほしい」「分かりました」すぐにレンの足音が遠ざかっていく。生徒会長に「あなおりくんって?」と尋ねられたので、穂香は「あ、えっと、同じクラスの男子で、すごく力が強いんです」と誤魔化す。「そう。じゃあ、その子が来るまで待ってみようか」穂香が改めて室内を見回すと、生徒会室は教室を半分に切ったような広さだった。勉強机の代わりに、折り畳み式の長机と、パイプ椅子が数脚置かれている。「あの、こんなときに、申し訳ないんですが……」穂香は手に持っていたプリントを、生徒会長に見せた。「文化祭実行委員の白川です。提出プリントを持って来ました」「ありがとう。不備がないか確認するね」王子様スマイルが眩しいくらいに輝いている。穂香にパイプ椅子に座るよう勧めてから、生徒会長は、その場でプリントに目を通した。「うん、問題ない」「ありがとうございます」それきり会話がなくなってしまう。(どうしよう。仲良くない人と何を話したらいいのか、分からない……)必死に会話を探した結果、穂香は先ほどの生徒会長の言葉を思い出した。「そういえば、さっき『君を巻き込んでしまったみたい』的なことを言ってましたよね? あれは、一体?」生徒会長の顔が、目に見えて強張る。「うん……ちょっとね」(聞いてはいけないことだったみたい)気まずい空気に耐え切れず、穂香は話題を変えた。「生徒会長以外の役員さんは、いないんですね」生徒会長の表情がサッと曇る。(はっ!? しまった、私にはモブキャラが見えないんだった! もし、この生徒会室に他の役員がいたら、私、ものすごくおかしな発言をしたことに……?)青ざめる穂香に、生徒会長は困ったような笑みを向けた。「うん、皆それぞれ忙しくてね。今日は僕一人だよ」「そ、そうなんですね!」(良かった。たまたま他の役員は、いなかったみたい)長テーブルの上には、大量のプリントが積み上げられ
last updateLast Updated : 2025-03-16
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第29話 怪異の原因は?

最近、不思議なことが立て続けに起こっているという生徒会長の表情は暗い。「他の生徒会メンバーも、人がいないのに視線を感じたり、誰かに追いかけられたりしたようなんだ。だから、生徒会メンバーには、生徒会に近づかないようにお願いしていて……」「なるほど。そういう事情があったから会長は、一人で生徒会の仕事をしていたんですね」「みんな、『手伝う』と言ってくれるけど、またおかしな目に遭ったら困るからね」穂香はふと、人気者の生徒会長が、なぜか体育館裏で隠れるようにお弁当を食べていたことを思い出した。「もしかして、体育館裏でお弁当を食べていたのも?」「うん。家の者がいつも多めにお弁当を作ってくれるから、それまでは、友達と一緒に食べていたんだけど、僕と一緒にいて、その子達もおかしな目に遭ったら困るから」「人を避けるしかなかったと……。ん? あれ?」穂香はふと、生徒会長が女生徒に囲まれていたことを思い出す。もし、生徒会長の側にいるだけで危ない目に遭うのなら、彼女達も危ない目に遭っていないとおかしい。「生徒会長。もう少し詳しくお話を聞いてもいいですか?」質問を続けた結果、ある法則が見えてきた。「えっと、話をまとめるとおかしな目にあった生徒会のメンバーは女子だけで、男子は被害に遭っていない。一緒にお弁当を食べていたメンバーは、男子だけで、彼らもまだ被害に遭ってないということですね?」「そうだね」「それって、被害に遭うのは女子限定なのでは?」「被害に遭う前に僕が避けただけだと思っていたけど、言われてみれば……そうかもしれない」悩む生徒会長は、それだけで絵になっている。「ということは、おかしなことが起こる条件って【女生徒から生徒会長にふれる】じゃないですか?」少なくとも穂香が巻き込まれたときは、両方ともそうだった。「そう、だね?」それまで暗かった生徒会長の表情が目に見えて明るくなる。「そうかもしれない! でも、じゃあ、どうして女生徒限定なんだろう?」「えっと、それは……」何も証拠がないので『あなたのクラスメイトの女子が怪しいです』とは言えない。「その、生徒会長は、女の幽霊に憑りつかれている、とか?」苦しい説明だったが、生徒会長は納得できたようだ。「そうか、そうかも! ありがとう白川さん」穂香に向けられた黄色の瞳がキラキラと輝いている。「い、い
last updateLast Updated : 2025-03-17
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第30話 穴織(赤)の疑問①

「生徒会長の事情は、だいたい分かりました」でも、穂香にはまだ分からないことがあった。「そういえば、どうして私と初めて会ったとき、相談にのると言ってくれたんですか?」周りの人を危ない目に遭わせないように人を避けているのに、それでは辻褄(つじつま)が合わない。「ああ、あれね」生徒会長が笑うと周囲に花が舞っているような気がする。(この人、本当にすごいイケメン……。だからといって、ときめきは少しもないんだけど)どれほどイケメンでも、ホラーゲームの主人公とだけは関わりあいたくない。「白川さんは、僕よりお弁当に釘付けだったから珍しくて。君は『友達がいない』と悩んでいたでしょう? だから、自分の置かれた状況も忘れて、君と友達になれたらいいなって思っちゃったんだ。今の状況では無理なのにね」「友達……」優しいその言葉を聞いて『関わりあいたくない』と思ったことに、穂香は罪悪感を覚えた。(生徒会長だって、好きでホラーな目に遭っているわけじゃないのに、私ったら)化け物退治はできないが、せめてもう少し何かお役に立てればいいなと思う。「そうだ! 友達になっても不思議なことが起こるか、試してみませんか?」「え?」「女生徒が生徒会長にふれたら、おかしなことが起こりますよね? じゃあ、口約束で女生徒と友達になったら、どうなるか気になりませんか?」「気になるけど……。また怖い目に遭うかもしれないのに、いいの?」「よくはないですけど、その、私も気になるので」ためらったあと、生徒会長は小さくうなずいた。「じゃあ、お願いしてもいいかな?」「はい」生徒会長は、穂香をまっすぐ見つめる。「僕とお友達になってください」「はい、よろしくお願いします」何か起こるかと緊張していたが、何も起こらない。穂香は、息を吐いた。「口約束で友達になったくらいでは、何も起こらないみたいですね」「そうだね。分かってよかった。ありがとう」微笑み合ったとき、生徒会室の扉が叩かれた。廊下側から複数の足音が聞こえる。「お待たせしました! 穂香さん、穴織くんを連れてきましたよ」穂香は扉のほうに駆け寄った。「レン、ありがとう」穴織は「皆、少し扉から離れてなー」と声をかける。「うん、分かった」あれだけビクともしなかった扉は、何事もなかったようにあっさり開いた。開いた扉の向こうには、穴
last updateLast Updated : 2025-03-18
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