穴織に「お前、同業者か? それとも、俺らの敵か?」と問われたとたんに、穂香の前に透明なパネルが現れた。(選択肢だ……。ということは、これはものすごく重要な質問だということだよね)2枚の透明なパネルには、『正直に答える』と『うまく誤魔化す』と書かれている。不思議なことに、選択肢が現れている間は、周囲の時間は止まっているようだ。穴織もレンも固まったままピクリとも動かない。(たぶん、うまく誤魔化したほうがいいと思うけど、口下手な私じゃ誤魔化せる気がしない)中途半端なことをすると、余計に穴織の怒りを買ってしまいそうだ。(だったら、もう正直に話すしかないよね?)穂香は、おそるおそる『正直に答える』のパネルにふれた。そのとたんにパネルが光り消えてなくなる。時間が動き出したようで、レンが穂香をかばうように、穴織との間に割って入った。「何か誤解があるようです」「だったら、俺が分かるように説明して、その誤解とやらを解いてくれや」穂香は、ゴクリとツバを飲み込んだ。「穴織くん。今から全部話す。信じられないかもしれないけど、私の話を最後まで聞いてほしいの」腕を組んだ穴織は「分かった」とうなずく。(もし、選択肢が間違っていたら、記憶を消されてやり直し……でも、もうやるしかない!)穂香は覚悟を決めて話し始めた。「まず、私とレンは、穴織くんの同業者でも敵でもないよ。むしろ、穴織くんが言っている同業者も敵もなんのことだか分からない。でもっ」穴織は無表情のまま、耳を傾けてくれている。「穴織くんとは別件で、私自身もおかしなことに巻き込まれてしまっているの。信じてもらえないかもしれないけど……。私、恋愛ゲームの世界に閉じ込められているの」穂香が口を閉じると辺りが静まり返った。しばらくすると、穴織の胸ポケット辺りから『言霊(ことだま)の色を見る限り、この娘、嘘はついとらんぞ。しかも、殺意はもちろん、悪意すらない』と声がする。「う、嘘が分かる……?」穂香の顔から血の気が引いていく。「それって、もし私が『うまく誤魔化す』の選択肢を選んでいたら、バッドエンドになってたってこと⁉」穴織は「ジジィの声が聞こえるんか⁉」と驚きの表情を浮かべている。「うん、聞こえてる。それに、穴織くんが私の記憶を消そうとしたけど、消えてないの」「俺の術まで効かんなんて……。一体、白川さ
Last Updated : 2025-03-19 Read more