「ああ、分かってる……」 とりあえず、返答してみた。我ながら間抜けな返事だと先島は思った。もっとも、気の利いた言葉がパッと出て来るのなら、もう少し出世できていたのかもしれない。「ああ、手伝うよ……」 シートベルトを締めるのに手こずるクーカを手助けした。「さっきはあの家族を巻き込まないでいてくれて有難う」 続いて、先島が意外な事を言いだした。クーカはビックリしてしまった。 ぱちくりとした目で先島を見詰めている。「何の事かしら……」 クーカは始めて逢った風を装っている。 闘い終わって褒められることは有ったが、闘わないのを褒められるのは初めてだったからだ。「ところで、日本では武器の所持は禁止されているんだよね……」 そんな先島が言い出した。「そんな物騒な物は持って無いわ」 クーカは助手席の窓を開けて外気を入れた。「自首するという手があるよ?」 先島が話を続けて来た。「何の罪で?」 クーカは素知らぬ顔で答える。「拳銃を持っていたじゃないか」 先程の駐車場での出来事を言っているらしい。「まあ、こんな愛くるしい少女に向かってなんて事を言うのかしら……」 クーカは取り調べを受けても平気なように銃は隠して来た。後で、回収に来れば良いと考えていたのだ。「しかも、殺し屋御用達の減音器まで付いていた奴だ……」 減音器の事を知っているのは流石だと思った。一般的な日本の警察官は銃には詳しくないと聞いていたからだ。「そんな物騒な物は持って無いわ……」 もちろん、減音器もククリナイフも一緒に隠してある。「俺に突きつけたじゃないか……」 クーカは先島を殺すつもりは無かった。そのつもりなら先島は車を運転する方では無く、載せられている方になるからだ。 銃を抜いたのは、先島の殺気に身体が反応してしまったせいだ。 自分でも拙かったと思っていたので、家族連れの接近を察知した時にすぐに退いたのだ。「突きつける? 何の事だか分からないわ」 依頼されても居ない仕事を、彼女はやらない主義だったのだ。それに目に見える脅威と言う程ではない。「あくまでも白を切るつもりなのか?」 先島がムッとし始めた。からかわれていると考えたからだ。もちろん、当たっている。「あら? それじゃあ私の身体検査でもなさる?」 クーカは自分のミニスカートを少しめくってみせた。
Last Updated : 2025-03-08 Read more