「ははは、そのうちにな」「ああっ!」 ディミトリは彼から不要になったモデルガンの空き箱を調達したのだった。その空き箱に分解した武器をしまってある。 こうしておけば気付かれること無く秘匿出来ると考えていたのだ。(うっかり触って暴発でもしたら怪我させてしまう……) 祖母が本物と玩具の違いを、理解できるとは考えにくいが万が一の事を考えたのだった。(まあ、組み立ては一分も有れば余裕で出来るし) 咄嗟の事態に対処出来ないが、武器を剥き出しで持っているよりは安全だろうと考えたのだった。 夕方になり早めの夕食を済ませたディミトリは、ランニングに行くと言って出掛けた。行き先は現金受け渡し場所の廃工場だ。 地図によると自転車でも一時間はかかる。早めに下見を行っておくことにしたのだ。 廃工場に到着したディミトリは道路を挟んで観察を始めた。工場はフェンスに周りを囲まれている。高さは二メートル程。 正門の扉は閉まっていた。工場自体は町工場を少しだけ大きくしたような印象だ。さほど大きくは無い。「あれか……」 ディミトリは場内を単眼鏡で中を観察し始めた。いくら無人だろうと思っても、防犯カメラくらいはあるだろうと踏んでいた。 しかし、それらしきものは無かった。それでも正門から入っていくのは止めにした。 まずは、潜入して中の様子を頭にいれる方が良いと判断したのだ。 道路の反対側に面した建物の窓から入ることにした。中を覗き人の気配が無い事を再び確認したディミトリは、閉まっているのに気が付いた。(くっそ…… ガムテープも無いしどうしよう……) 防音の為にガムテープを窓に貼り付けてガラスを割る手法がある。音もしないしガラスが飛び散らないので便利なのだ。 ディミトリは他の入り口は無いかと付近を見回した。(ん? あれが使えるかも……) ディミトリの目線の先に有ったのは制汗スプレーだ。近くに女性物のポーチが有るので誰かが落とした物なのだろうと考えた。 振ってみると少しだけ音がする。埃にまみれて古いようだが中身がまだあるようだ。(よしよし……) スプレー缶のガスはブタン・プロパンなどを主成分とした液化した可燃性のLPGガスが多い。 ディミトリは窓の鍵が有る部分に、スプレーを噴射したままライターで火を着けた。スプレーのガスで出来た炎は窓ガラスをメラメラと炙った。
最終更新日 : 2025-01-31 続きを読む