小林は、凌央が乃亜を抱きかかえて入ってくるのを見てほっと息をついた。 どうやら二人の関係は順調なようだ。 これで、奥様が家を出る心配もなくなった。 乃亜は凌央の胸に顔を埋め、頭の中でいろいろと考えていた。 冷たい空気に震えながら、乃亜はふと我に返った。気がつくと、浴室の鏡の前に立ち、シャツのボタンは胸元まで外され、スカートは腰までずり下がっていた。 慌てて言った。 「ちょっと待って。トイレに行ってくる」 凌央は目を細めて、低い声で「うん?」と答えた。 その声には、どこか警告を含んだ響きがあった。 乃亜は背中に冷や汗が伝うのを感じ、思わず顔を上げると、目の前に凌央が立っていた。その瞳は琥珀色に濁り、まるで刃物で切り裂かれるような視線が彼女の喉元を撫でた。鼓動が耳元で激しく響く。 「すぐ戻るから」 凌央は手を挙げ、彼女の顔を掴んだ。 「わざと俺を引き留めようとしてるのか?」 「恥ずかしいのよ!」乃亜は顔を背け、恥ずかしそうに言った。 凌央は少し驚きながらも、その言葉に嬉しさを感じ、唇に薄く笑みを浮かべてから、冗談を言った。 「三年も結婚してるのに、俺の体のどこを見たことないんだ?恥ずかしがることないだろ」 でも、乃亜の恥じらう姿は少し魅力的に見えた。 凌央の心が少しだけ動かされた。 乃亜は顔をさらに赤くしながら言った。 「そんなことないわよ!」 実は結婚したばかりの頃、彼の体をよくこっそり見ていた。 どこにホクロがあって、どんな傷があるかも、すべて覚えている。 もちろん、このことを凌央には言えない。 凌央は彼女をぐっと引き寄せて、低い声で囁いた。 「我慢できない。先に一回だけでも」 二人は非常に近く、乃亜は彼の体の反応をしっかりと感じ取った。彼が無理に迫ってくるのではないかと心配になり、思い切って手を伸ばした。 今まで、すべては凌央に主導されていたけれど、今回は自分から手を出すことにした。 赤ちゃんのことも考えて、乃亜は決心した。 凌央は少し驚いた。 乃亜の手がとても柔らかくて、今まで感じたことのない感覚が彼を包んだ。 「乃亜、火遊びしてるのか?」凌央は低く艶のある声で言った。
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