奈津美と月子は1号館の1階に隠れていた。月子は「うっそ、こんなに大勢で、黒川さんは何する気!?」と言った。「何考えてるのかしら」奈津美は眉をひそめた。前世、あんなに涼に尽くしたのに、彼は冷淡で、こんなに大袈裟に探してくれたことなんて一度もなかった。どうして今は、婚約を破棄したいのに、彼が追いかけてくるの?「月子、ここは危ないわ。移動しよう」「分かった!」月子は奈津美の手を引き、1号館の上階の女子トイレに逃げ込もうとした。しかし、階段を上がろうとしたその時、大学の警備員と鉢合わせた。「逃げろ!」奈津美は月子の手を引いて逃げようとしたが、その時、涼が1号館の入口に現れた。涼は険しい顔で、「奈津美、お前はどこまで逃げるつもりだ?」と言った。「......」月子は言った。「黒川社長、奈津美は学生として大学に来ているんです。こんなに大勢の人を連れてきて、何のつもりですか?」「大学?」涼は奈津美の前に歩み寄り、彼女の腕を掴んで言った。「休学したんだろう?奈津美、大学に逃げ込めば、俺がお前に手を出せないと思っているのか?」涼は腕の力を強めた。奈津美は眉をひそめて、「涼さん、ここは大学よ。一体何のつもり?」と言った。「何のつもりって?」涼の声はますます険しくなった。「お前は俺の婚約者だ。俺の許可なく、勝手に出て行くことは許されない」「涼さん、少しは自分の立場をわきまえたらどう?」奈津美は眉をひそめて言った。「私はあなたの婚約者であって、所有物ではないわ。どうしてあなたがダメと言えば、私が出て行ってはいけないの?」その一言に、周りのSPたちは息を呑んだ。月子も心臓がドキドキした。あれは涼だぞ!この神崎市で、涼にこんな口の利き方をする人間はいない。前に涼に歯向かった奴は、もう墓の下だ。「忘れるな。俺の言うことを聞かなければ、いつでも滝川家を潰せるんだぞ」涼がまた滝川家を使って脅迫してきたので、奈津美は落ち着いて言った。「涼さん、私は黒川家に住むことは同意したわ。あなたには仕事があるし、私にも学業がある。あまり無理強いしないで。最悪の事態になれば、私たちが徹底的に戦うことになるだけよ」途端、空気が張り詰めた。1号館の外で、めぐみと理沙は涼が大勢の人を連れてきたと聞き、綾乃を迎えに来
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