Side 彩華朝の光がカーテンの隙間から差し込み、ぼんやりとしたまぶたを照らしていた。まるで柔らかな手で揺さぶられるような感覚がして、意識が浅い眠りから徐々に浮かび上がる。――あれ……?ゆっくりとまぶたを持ち上げると、視界の端に伏せられた頭が見えた。日向――?まだ夢を見ているのかと錯覚しそうになった。けれど、覚醒していく意識の中で、目の前の光景が夢ではないことを理解する。ベッドのそばに置かれた椅子に座り、日向が腕を枕代わりにしてつっぷして眠っていた。最初は、何が起こっているのかわからなかった。でも、彼の肩がゆっくりと上下しているのを見て、現実なのだと気づく。――ずっと、そばにいてくれたの?驚きとともに、心がじんと温かくなるのを感じる。何時間ここにいたのかわからないけれど、少なくとも私は、日向がそばにいることに気づかずに眠ってしまっていた。申し訳なさと同時に、胸の奥に静かに嬉しさが広がっていく。どうして、こんなことをしてくれるの?昔の罪滅ぼし?あの夜のことを、まだ気にしているの?でも、それなら、もういいんだよ。勝手にいなくなる理由があったことは、もうわかった。彼が苦しんでいたことも、どうしようもなかったことも、すべて理解している。だから、そんなふうに気にしないでほしい。それとも――違う?私としては、もう一度、瑠香のパパとママとして、新しい生活を夢見ることもある。現実的ではないとわかっていても、そんな未来を想像してしまう日がある。再会してからの彼は、昔と違っていた。あの頃は、ただ憧れていた。子どもが夢見るように、無邪気に「好き」だと思っていた。でも今は違う。大人になった日向を知り、彼の生き方を知り、私はもう、ただの幼い恋心ではない感情を抱いてしまっている。だけど――。私は、彼の隣に並べるような人間じゃない。それを、一番理解しているのは私自身だった。日向は、会社の後継者であり、大企業の副社長。一方の私は、ただの社員で、子どもを育てるのに精一杯なシングルマザー。彼にとって、私との関係は、きっと重荷になる。それを望んでしまうのは、ただの私のわがままでしかない。――こんな想いを抱いてしまうのは、迷惑なだけ。心にそう言い聞かせるように、眠る日向を見つめた。こうして目を閉じていると、昔の彼に戻ったように見
Last Updated : 2025-03-01 Read more