「直子、先に乗り込め」生まれ変わったと気づいたときには、私たちが乗っていたクルーザーに水が入ってきていた。そして、救命ボートには2つの席しかなく、私たち3人のうち、ボートの乗り方を知っているのは周防徹之だけだった。だから、私と高橋美月、船に乗れるのは一人だけだった。徹之はだれを救うかで葛藤を抱え、最後に私に手を差し伸べた。しかし、私は一歩引いた、徹之の要求を断固として拒否した。「徹之、先ずは美月を助けて 」「きみのせいで美月が死んだ」なんて、今度は絶対やだ。徹之は安堵のため息をついたようだった、今までしかめっ面をしていたのが、一気に変わった。彼はすぐに美月の手を取り、救命ボートに連れて行った。「直子は僕のフィアンセなんだから、君を先に助けるべきだったんだ。でも、君が美月を先に助けたいって言ったんだから、僕を待ってて、必ず誰かを連れてくる。」「待ってろ」そう言うと、彼はすぐに美月を連れて立ち去り、私の気が変わるのを恐れているかのように、二度と私を見ようとはしなかった。実に面白い、一体誰が後悔するのだろうか。前世は、彼は私を先に連れ出し、美月を一人クルーザーに残していった。私たちは岸に戻った後、すぐに警察に連絡して救助に来てもらってたが、美月はすでに溺れて死んでしまい、引き揚げられたのはただ、彼女の死体だった。このことを知った時、徹之は何の異常も見せなかった。彼はただ冷静に美月の葬儀を取り仕切り、高橋家に大金を渡してなだめた。彼の唯一の要望は、美月のために最適な場所に墓地を選ぶことだった。私は二つ返事で引き受けたんだ、彼の機嫌を考えて、結婚式を延期することも提案した。しかし彼は拒否した。今でも覚えているが、彼は私の手を取り、こう言った。「直子、僕たち二人は必ず結婚する」その通りだ。でも、それは彼が私を苦しめるため、そして美月に永遠に謝るためだった。美月の死は私とは関係ないことなのに。遠ざかる彼らの後ろ姿を見て、私はすぐに助かる方法を探そうとした。なぜなら今回は、徹之がまだ警察を連れて戻ってくるという保証はないからだ。前世では、ここに残ったのが彼の愛する幼馴染だったから、携帯電話の電波が届く場所に戻るとすぐに警察に通報した。しかし今回は、彼女がしっかり彼の後をつ
Last Updated : 2024-10-10 Read more