会議はおよそ一時間半ほど続いた。 会場には市の幹部や主要産業の代表、そして金融界の重役たちが集まっていた。 終了後、成之は何人かと軽く言葉を交わしながら、ロビーに立っていた。 「村崎さん、ご一緒に食事でもどうですか?」 そう誘われた瞬間、彼の視線はふと遠くに現れた光莉の姿を捉えた。 「先に行ってください」 そう言い、軽く手を挙げると、彼は彼女のほうへ向かった。 少しして、光莉がハンドバッグを持って彼の前に立つ。 成之は彼女を上から下までさっと見渡し、眉を寄せた。 「......あまり元気がないようですが、昨晩はよく眠れませんでしたか?」 会議中、彼女がどこか上の空だったことに気づいていた。 光莉は軽く笑って肩をすくめる。 「ちょっと夜更かししちゃったみたいで。でも、村崎さんのスピーチ、とても勉強になりました」 少なくとも、退屈な決まり文句の羅列ではなかった。 多くの幹部は、長々と話しているように見えて、中身は何もないことが多い。 台本なしではまともに話せない者も少なくない。 だが、成之は違う。無駄な言葉を一切使わず、どんな場でも的確に話せる。 「先ほど、皆さんが食事に行くと言っていましたが、ご一緒にいかがですか?」 「私は遠慮しておきます」 光莉は微笑みながら首を振った。 「では、僕も行きません」 「え?」 彼女は驚いたように彼を見上げる。 「どうして?」 「大した話もないのに、ただのご機嫌取りばかり。もう聞き飽きました。静かに昼食をとりたい気分です。どこか良い店はありませんか?」 成之は淡々とした口調で言う。 冗談ではなく、本気らしい。 光莉は少し考えた後、尋ねる。 「どんな料理がいいですか?中華?和食?洋食?」 「中華がいいですね。ほかはあまり口に合わなくて」 「それなら、良いお店があります」 光莉はバッグから名刺を取り出し、彼に渡す。 「ここは特に特色のある料理が多くて、ほかの店ではなかなか食べられない味ですよ」 成之は名刺を受け取り、ちらりと目を通す。 「ここなら、そんなに遠くないですね。一緒に行きませんか?」 光莉は少し口元を引きつらせる。 「......私と食事を?」 成之は軽く頷く。 「ええ。お時間はあ
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