All Chapters of 社長さん、あまり誘わないで！正体を隠した前妻は不可侵よ！: Chapter 251 - Chapter 260

「こうか？」松山昌平は複雑な表情で、薄く唇を引き結び、問いかけた。「それなら、どうすればいいんだ？愛しい花嫁を奪うのか？」篠田初は少し言葉を詰まらせ、複雑な気持ちを抱えていた。彼の言葉から、彼が本当に浅川清良を手放していないことが分かる。一方で彼を気の毒に思い、また一方で自分自身も辛い気持ちだった。こうして見ると、彼女と松山昌平との4年間の結婚は本当に完全な誤りだった。小林柔子の妨害がなくても、彼女の心の中には決して自分の居場所は永遠になかっただろう。本命はすでに彼の心の中で満たされていて、篠田初は何者でもないのだ。「もし本当に彼女を手放せないのであれば、浅川さんにきちんと話すべきだ。儀式の前に、まだ間に合うはずだ......」篠田初は心の中で痛みを堪えながら、自分が洒脱で大人びた態度だと思い込み、男性に優しく説得した。「それに、本当に彼女を愛しているのなら、子供っぽい方法で彼女を怒らせるべきじゃない。さっきこっそり見てたけど、私たちがキスしている時、浅川さんの顔は本当に悲しそうだったよ。勝ったように見えるかもしれないけど、実際には負けているんだ」松山昌平はうなずき、真剣な顔で言った。「君の言う通りだ。とても勉強になった」そして、また話を変えて言った。「でも、この海域は本当に美しい。今はちょうど干潮の時間で、広い砂浜にはきれいな形をした貝殻がたくさんあるんだ。一緒に拾いに行かないか？」「一緒に？」「彼女を忘れてないこと、君だけが知っているから、手伝ってほしいんだ。彼女にサプライズをしたいんだ」松山昌平は高飛車な口調で、全く助けを求める様子がなかった。篠田初は腹立たしく思いながらも心の中で思った。なんで私はこんな目に遭わないといけないんだ。しかも貝殻を拾うのを手伝うなんて、本当にひどい！しかし、結局彼女は男の頼みを受け入れた。「手伝うけど、ただではやらないわよ。1分20万円で、1時間を超えたら8割引、時間単位で計算して、QRコードで送金ね。いい？」松山昌平はその言葉を聞いて、笑うのか怒るのか分からない様子だった。この女性、いつからこんなにお金に執着しているのか？5言のうち3言はお金の話だ。どれだけお金に困っているのだろうか？でも、幸いにも松山昌平は金銭的には困っていない。お金で彼女の「

人気女優の金井如月（かねい きさら）は腕を組み、教会にゆっくりと向かって歩く松山昌平と篠田初をじっと見つめた。その眼に嫉妬の色を浮かべていた。彼女は業界に入る前から松山昌平をターゲットに定め、玉の輿の彼と関係を築くことを決意していた。だが、彼女が名声を得る前に、松山昌平は早くも結婚してしまった。やっとの思いで彼の離婚を願い、夢の王子様が離婚したのに、結局それは......離婚していないと同じじゃないか？「知るかよ。兄さんは彼女のことが好きじゃないし、きっと彼女がしつこくしがみついたんだ」柳巧美は篠田初を見る目に軽蔑の色を浮かべ、金井如月の肩を叩いて言った。「如月さんは本当に控えめすぎるんだよ。こんなに長い間動かなかったけど、今は彼らも離婚したんだから、さっさと行動したほうがいいよ......兄さんは今や立派な独身貴族よ。目を光らせてる女性がたくさんいるのに、如月さんって、本当に悠長だね！」金井如月は焦った表情で言った。「行動したくないわけじゃないけど、今は仕事の大事な時期だし、新しい映画の撮影も始まるの。もしスキャンダルに巻き込まれたら面倒だわ」「でも、兄さんは今は独身だし、彼を落とせたら、世間から絶賛されるはずよ。それがスキャンダルになるわけないじゃない」ここで柳巧美は思わずため息をついた。「でも、行動するなら気をつけて、篠田初には注意して。外見は争わず高潔な感じだけど、実際は手腕がすごいから。前の小林柔子だって、妊娠してたのに、彼女に潰されたんだから。私ももう彼女には近づかないようにしてるのよ」小林柔子が失脚してから、柳巧美は自分の将来の義理の姉として金井如月を最適な人選だと考えていた。金井如月は冷艶の顔に誇りと自信をにじませながら、傲慢に言った。「あの手段なんて、エンタメ業界じゃ取るに足らないよ。私は底辺からここまで上り詰めてきたんだから、あんな人に負けるわけないでしょ？」そう言い終わると、彼女は意味深な笑みを浮かべた......嫌疑を避けるため、篠田初は松山昌平と別れ、芝生のスイーツエリアへ直行した。彼女は貝殻を拾い続けてお腹が空いていたので、自分にご褒美を与えなければならなかった。篠田初の後ろ姿がどんどん遠ざかるのを見て、松山昌平は少し不快に思ったが、彼女と争う気はなく、そのまま教会のバックステージへ

松山昌平はうなずくと、ドアを開け、浅川清良と一緒に外へ出た。だが、小さなケーキを持っている篠田初と真正面からぶつかってしまった。「えっと......」二人は目が合った。彼らがこっそりと会っていたのに、篠田初の方が恥ずかしそうに感じた。「その、邪魔してないよね？」彼女はとても卑屈に尋ねた。「......」松山昌平は言葉を発せず、ただ高圧的な姿勢で、上から目線で彼女を見下ろした。篠田初は厚顔無恥に続けて尋ねた。「成功したの？『海洋の心』、効いたのかな？逃げる計画でもしてたの？」松山昌平の顔色はますます冷たくなり、横を向いて浅川清良に何かを言った後、篠田初をすり抜けてそのまま去って行った。まるで篠田初を知らないかのように、極端に高慢だった。「ケチな男、ただお金をちょっともらっただけなのに、何を！偉そうに！」篠田初は松山昌平の冷ややかな後ろ姿を見ながら、怒りのあまりに愚痴をこぼした。彼女はひどく疲れていたので、どこかで少し休もうとしたが、まさか彼らの密会を目撃してしまうとは思っていなかった。口では、彼女は洒落で、松山昌平に花嫁を奪おうと何度も煽っていたが、実際に彼が本当にそうしたら、なぜか心の中で辛く感じてしまう......篠田初は別の場所で休もうと思い、立ち去ろうとしたが、浅川清良が彼女を呼び止めた。「篠田さん、少しお話してもいい？」「私たちに話すことなんてないでしょう」篠田初は冷たく断った。彼女はどうしても理解できなかった。松山昌平の本命である浅川清良が、なぜ自分のような失敗した元妻に何か言いたいのか？優越感でも感じているのだろうか？彼女は付き合いたくなかった。「篠田さん、安心して。あまり時間は取らせないよ。話が終われば、私の心はすっきりするので、どうか私のお願いを聞いてください」「それなら......」篠田初は浅川清良が真摯な態度であることを見て、拒否しきれなかった。「じゃあ、話してください、聞いている」「実は、さっき知ったばかりなんだが、あなたが昌平の心の中で非常に大切な存在だと。だから......昌平をちゃんと大切にして」浅川清良は感傷的な表情で言った。「私は彼ともう昔に戻れないが、彼が幸せでいることを望んでいる。彼は感情を大切にする人で、一度誰かを愛したら、世界の

人々はざわざわと話し始めた。牧師もこのような状況は初めてで、咳払いをして言った。「素晴らしい伴侶は、いつも遅れて現れるものですが、それは待つに値します。もう一度、新婦のご入場を！」音楽が再び流れた。しかし、音楽が終わっても、浅川清良の姿は見えなかった。両家の両親は非常に焦り、すぐに誰かを派遣して状況を探らせた。ゲストたちも様々な推測を始めた。会場は混乱した雰囲気に包まれた。篠田初は我慢できず、肘で松山昌平をつつき、低い声で尋ねた。「ねえ、これはあなたが仕組んだことじゃないの？新婦を隠したか？」松山昌平は顔をしかめ、冷たく言った。「舌を切られたくなければ、勝手に噂を立てるな」「......」篠田初は唾を飲み込み、すぐに黙り込んだ。違うなら違うって言えばいいのに、そんなに厳しく言うことはないじゃないか、ケチな男だよ！司健治は最も焦っていた。すぐにステージに駆け上がり、みんなを落ち着かせようとした。「皆さん、焦らないでください。時志兄と清姉は本当に愛し合っているので、この結婚式にはきっと特別なサプライズがあります。皆さん、もう少し待ってください！」司健治は浅川清良に長年密かに片思いしており、まさに典型的な貢ぐ男だった。こんなに長い間、忙しく前後を駆け回りながら、ただただ願っていたのは、結婚式が無事に進行し、彼の女神が素晴らしい相手と結ばれ、幸せな結婚を迎えることだった。しかし、この突如として現れた事態に、彼は完全に対応できず、非常に悪い予感がした！激しく揺さぶっている司健治とは対照的に、最も焦るべき新郎の水川時志は、逆に非常に落ち着いて見えた。彼は淡々とそこに立ち、温和で優雅な美しい顔にはあまり表情を浮かべることなく、まるでこの突発的な出来事が自分には全く関係ないかのように見えた。「大変です。浅川さんがいなくなった、休憩室には彼女のウェディングドレスだけが残っています！」すぐに誰かが報告を伝えた。「いなくなった？」司健治はその報告者を強く掴み、怒って言った。「でたらめを言うな！清姉は新婦だぞ。いなくなるなんてありえないんだ！ましてやウェディングドレスを脱いでいるなんて、もっとありえない！」「本当です、信じないなら休憩室に行って確認してください！」司健治は振り返って水川時志を見、焦りなが

柳巧美の言葉が、篠田初を支持していた人々の心を一瞬で変えてしまった。篠田初は一気に非難の的となり、全員が彼女があくどいと罵り始めた。しかし......松山昌平と水川時志だけはそうしなかった。「静かにしろ！」水川時志は珍しく真剣な表情を浮かべ、歩みを進めて篠田初の前に立った。そして、本来は浅川清良に渡すはずだった指輪を取り出し、松山昌平に渡して言った。「昌平、この指輪を篠田さんに渡してくれ」賢い松山昌平は、水川時志の意図を理解できないわけがない。彼は頷き、言葉もなく篠田初の手を取った。指輪を彼女の薬指に嵌めようとするが、篠田初は一瞬緊張して後退しながら叫んだ。「何をするつもりなの？指輪って、適当に渡しちゃダメだよ！早く取って！」「はめろ」松山昌平の態度は強硬だった。すると、二人はお互いに引っ張り合い、まるで衝突しているような雰囲気が漂った。その時、教会に響く「ダン、ダン、ダン」の鐘の音が聞こえ、夕日が海の水平線にゆっくりと沈み始めた。教会内に流れる神聖な音楽と共に、予言が響き渡る......日が沈む時、男女が指輪を交換すれば、女海神の祝福を受けると、二人は永遠に結びつき、白髪になるまで添い遂げる。松山昌平は成功裏に指輪を篠田初の薬指にはめたが、篠田初はあまりにも力を入れすぎたため、彼を遠くに押しやってしまった。その瞬間、松山昌平は自然に地面に倒れる動作を取った。その一瞬が水川時志によって撮影された。その写真は、篠田初と浅川清良が争っていた場面を見事に再現していた。つまり、篠田初の言い分が完全に嘘ではないことが、しっかりと証明された。「皆さん、見てください。二人が引っ張り合っていたからと言って、必ずしも衝突していたわけではありません。実際には、何かを押し合っていた可能性もあります。それに、篠田さんが嘘をついているわけではないかもしれません」水川時志は冷静に説明し、言外で篠田初を庇った。篠田初はようやく二人の好意に気づいた。彼女は松山昌平を見つめ、感謝の気持ちが溢れたが、口には出せなかった。松山昌平は高慢な表情を浮かべ、相変わらず偉そうに言った。「感謝しなくていい。もし伝説が本当なら、君と俺は一生縛りつけられることになる。いつでも感謝の機会はあるだろう」篠田初は心の中で呟いた。彼女は本当にバカ