姉が設計した建築物は、奇抜な発想と同時に、美しく壮麗で、高さや華やかさも際立っている。最も重要なのは、それらの図面が未来的な技術感にあふれており、まるで別の時空から来たような超越した完成度を持っていることだ。どうりで柴田南が、「姉の設計した建築物は、各国や都市を象徴するランドマークとして相応しい」と評したわけだ。姉のような偉業を成し遂げるのは難しいだろう。ただ……和泉夕子はペン、定規、紙を用意し、机に向かって図面を描き始めた。筆を握って構図を考えるのは久しぶりだったが、幼少期からの才能と経験のおかげで、数本の線を引いただけで形が出来上がった。彼女は頭を下げ、集中力の全てを図面に注ぎ込んだ。そしてわずか数分で、独特なデザインの家屋が紙の上に現れた。ペンを置き、その図面を手に取ってじっくり眺めると、彼女自身驚きを隠せなかった。これまで一度も設計図を描いたことがないにもかかわらず、姉の図面を見た後、独自のアイデアが頭の中に湧き上がり、それをペンで表現できるようになったのだ。もしかして、彼女も姉のように、建築設計の才能を持っているのだろうか?夕子は信じられない気持ちのまま、その図面を置いて新しい紙を取り、次の図面を描き始めた……描き続けるうちに、建築図に対する興味がどんどん膨らんでいき、彼女の心は次第に興奮に包まれた。こうして翌日、柴田南が家を訪れるまで、彼女は描き続けていた。そして彼が来たタイミングでようやくペンを置き、大きく伸びをした後、数枚の草案を手に階下へ向かった。柴田南はソファに座り、脚を組みながら沙耶香と軽口を叩いていた。「白石さん、高校しか出ていない君の家に来たんだ。一杯の茶くらい淹れてくれたっていいだろ?」沙耶香は壁にもたれ、腕を組んだまま冷たく鼻で笑った。「柴田さん、その生意気な口でよくもそんなこと言えるわね。茶なんか飲ませるもんですか!」そこへ夕子が歩み寄り、2人の小競り合いを遮るようにして、手に持っていた草案を柴田南に差し出した。「柴田先生、これ、私が描いた図面なんですけど、どうでしょうか?」夕子は機嫌が良い時には彼を「柴田先生」と呼ぶが、不機嫌な時には「柴田南」と呼び捨てにする。彼もすっかりそれに慣れていた。彼女が理論知識すら満足に備えていない「素人」であると考えていた柴
Last Updated : 2024-12-13 Read more