唯月は多く考えず、無意識に頷いた。「数日休暇を取りました。息子の陽が大変な目に遭いましたから、傍にいてあげないといけなくて」「じゃ、ここで何をしているんだ?息子さんは?」唯月「……」彼女は本当のことを言うべきだろうか。隼翔はきょろきょろと周りを見回したが、あの可愛くて元気な男の子の姿は見つからなかった。しかし、あの子は彼を怖がっているようだ。彼に会うたびに唯月の懐に顔を埋めて、まるで彼が顔の怖い悪魔だと思っているかのようだった。「陽は家で昼寝をしています。ベビーシッターさんが面倒を見てくれていますから。私は用事で一人でここに来たわけです」隼翔は「ああ」と言い、また彼女に尋ねた。「用事って、何かあったの?」それを聞いた唯月は、言うべきかどうかためらっていると、隼翔は笑って言った。「言いにくいことなら言わなくてもいい。ただ通りがかりにちょうど君を見つけて、今日会社を休んだのを思い出したから、ちょっと聞いただけだ。まだ用事は終わってないんだろう。じゃ俺は先に行くよ」隼翔は唯月のバイクのヘッドに置いていた大きな手を離し、ためらわず身を翻して去っていた。「東社長、お気をつけて」唯月がそう言うと、隼翔は振り返らず、手をあげて「じゃあな」というジェスチャーをしてくれた。二人はそれぞれの車に乗り、その場を離れた。ホテルでは、唯花と神崎親子が長い間おしゃべりをしていた。神崎航から電話がかかってこなかったら、きっと彼女たちは帰ると言わなかっただろう。唯花は彼女たちがホテルを出て、車に乗り、去って行くのを見届けてから、自分の車に向かった。しかし、振り返った時、ホテルから出てくる大勢の人の姿を見た。その中には彼女がよく知っている二人がいた。それは夫の理仁と義弟の辰巳だった。もう一人も見たことがあるようだが、はっきりとは覚えていなかった。前にカフェ・ルナカルドで理仁と一緒にいたのを見たことがある。彼らはおそらくお得意様を招待していたのだろう。その一行の中に何人か唯花が一度も会ったことのない人たちがいたからだ。そして、彼らの後ろにいる背の高い黒い服の男たちは、一体ボディーガードなのか、それとも結城グループの社員なのか。理仁は最初妻がそこにいるのに気づかなかった。するとボディーガードが先に気づいた。彼らは主人の安
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