「私がどうやってそれを集めたのかなんてどうだっていいでしょ。俊介、もしも私がその不正で稼いでいた証拠を社長に密告したら、これからどうやってスカイ電機の部長でいられるかしらね?」唯花は姉に注意していた。俊介にその不正の証拠を見せずに、ただ言葉だけで彼を脅せと。しかし、唯月は俊介のことをよく理解していて、証拠がなければこの男を脅すことなどできないと思ったのだった。だから、彼女は理仁の友人が集めてくれた証拠を全てコピーして持ってきたのだ。俊介がそのコピーを破ってしまっても、彼女はまだいくらでもコピーすることができる。このような証拠があれば、俊介は自分の首を守るために、譲歩して彼女と離婚の話し合いに応じるだろう。この時の彼女は理仁がすでに九条悟に指示を出して、スカイ電機に全面的に圧力をかけているということは知らなかった。俊介と莉奈がどう足掻いても、どのみちクビになることには変わりはないのだった。俊介は怒りに歪んだ顔をしていた。彼はぎろりと唯月を睨み続けている。唯月も以前はスカイ電機で働いていた。さらに財務部長にまで昇進していて、当時の彼女は彼よりもずっと仕事ができたのだ。当時の彼のプレッシャーが大きく、自分は唯月には敵わないとプライドをズタズタに傷つけられて、自分よりよくできる彼女を部長の地位から引きずり降ろすために彼女にプロポーズしたのだ。彼らは知り合ってからもう十数年と長い時間が経っていて、またその中でも数年間付き合っていた。唯月の中では二人は深く愛し合っていると思っていた。唯月も彼と結婚する準備はしていた。彼がプロポーズしてきた時は大喜びしてそれを受け入れた。そして、結婚の準備をする時には、彼女がどのような要求をしてきても彼とその家族たちは全て応えてくれた。彼は彼女に対して今までよりももっと優しく、気配りしてくれるようになった。それでようやく結婚してから唯月に仕事を辞めて、子作りをしようと説得させることができたのだった。唯月が妊娠してから、俊介は子供が生まれるのを心待ちにしていた。そして、会社では唯月と比べられることもなくなり、プレッシャーも減って、だんだん社長に評価されるようになり、昇進していったのだった。それで今日の部長という肩書きがあるのだ。そして一方の唯月はと言うと、妻となり母親となり、毎日毎日この家
Read more