交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています のすべてのチャプター: チャプター 151 - チャプター 160

178 チャプター

第151話

「俺も別に義姉さんのために、君がケリをつけに行くのを止めようとしているわけじゃないんだ。だけど、もし義姉さんと旦那さんが完全に決裂してしまって、関係を修復できないような状態にまでなってしまえば、俺だって君が佐々木俊介のところに行くのは賛成だよ」内海唯花は面白くなさそうに、ベーコンをひと噛みしてから言った。「あなたのその言葉は理にかなってるわ。衝動で突っ走るようなことはしないから安心して。直接的じゃなくて、もっと違う方法であいつらに分からせてあげるわ。でも、しっかり警告だけはしておかないと。お姉ちゃんには頼れる実家がなくて、簡単にいじめられる存在だなんて奴らに思わせないわよ」結城理仁は彼女が自分の意見を聞き入れたのを見て、それ以上は何も言わなかった。朝食を食べてお腹いっぱいになった後、少し休んでから夫婦二人は一緒に出かけて行った。内海唯花が姉のことをとても心配しているのが分かっているので、結城理仁は彼女を店に送る前に、少し寄り道して佐々木唯月の家まで車を走らせた。唯花に姉の様子を確認してもらうためだった。彼のその気遣いに唯花はとても感動した。昨夜、これ以上は結城理仁をからかってはならないと、自分自身を戒めたばかりなのに、彼のこの優しさに唯花はその戒めの言葉を空の彼方に放り投げてしまった。明凛はこう言っていた。結城理仁はとても良い人だから、唯花たち二人がまだ夫婦関係であるうちに、彼の心を掴みなさい。半年後に離婚するという約束は、結婚してからすでに一か月経ち、残り五か月になった。その残りの時間に結城理仁との仲を深め、愛情を芽生えさせて本当の夫婦になりなさいと。そうしないと、将来後悔するかもしれないから。神崎姫華が言うように、誰かを愛したら追いかけるのだ。たとえ、その想いが相手に届かなくても自分は努力したのだから、結城理仁が自分のものにならなくて後悔したりはしないだろう。唯花は彼にあげた手作りの招き猫が車の中にあることに気づき、何気なく言った。「あなたにあげた招き猫、まだ車にあるのね」「後で会社に着いたら、デスクの上に飾るよ」それを聞いて唯花は微笑んだ。「もし誰かに聞かれたら、商品を宣伝しておいてね」「わかったよ」結城理仁は快くそれに応じた。彼は九条悟に彼女のネットショップでたくさん商品を買わせることにした。九
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第152話

「結城社長、のろけないでもらえますかね。俺は結婚する予定ないんで」結城理仁は独身を卒業したので、彼が独り身であるのが見ていられないのだ。いつも妻がいる良さを自慢しているが、九条悟が独身貴族の生活から抜け出すための手助けでもしようというのか?「おや、今日はどうしてそんな服を着ているんだい?」九条悟の目は鋭い。彼は結城理仁が着ているスーツはいつものブランドではないことに気づき、好奇心を持って尋ねた。「どうしてブランドを変えたんだ?」結城理仁はこだわりが強い人間だ。彼は気に入ったブランドがあると、長年それを愛用する癖がある。簡単に他のブランドに変えたりはしない。結城理仁の目に留まるものと言えば、普段着ているスーツもとても高価なものだった。彼がこの日に着ているような数千円ほどのスーツとはわけが違う。これは、結城理仁のスタイルではないぞ。九条悟は結城理仁のすぐ後に続き、興味津々で尋ねた。「結城社長、もしかして我々結城グループは財務危機に陥ってるのでは?だから節約のために、その辺のモールで服を?」ひとセット数千円のスーツは九条悟のようなお坊ちゃんの目には、まさにそこら辺に売っているものなのだ。結城理仁は社長オフィスに入ると、九条悟の質問に答えた。「結城グループが財政赤字にでもなってるというなら、おまえのような社長専任秘書がそれを知らないとでも?これは妻からもらった新しい服だ。なんだ、見栄えが良くないのか?俺は結構気に入ってるんだが、サイズもぴったりだし、動きやすいぞ」九条悟「……」もう質問しないほうがいいだろう。質問すればするほど、のろけ話を聞かされるだけだ。社長夫人が社長にプレゼントした新しい服を、妻の顔を立てるためにも彼は着て回るつもりだ。九条悟は彼のこの上司兼親友は、妻に対してだんだんと好感を持ってきていると感じていた。そうでなければ、たとえ結城理仁は死んでもこのような服を着るのを拒んでいたはずだ。ただこの上司の様子を見るからに、自分では妻に対する感情に気づいてはいないようだった。九条悟はこの時、面白いものが見られると思った。さて、結城理仁のこの時の様子を内海唯花が知る由もなかった。彼女が店に入って奥の部屋まで行くとすぐ、姉の義母と義姉が座って彼女を待っているのが見えた。親友の明凛が彼女たち母娘に水を入れ
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第153話

内海唯花は佐々木姉の話を聞いて、今までに溜まるに溜まった怒りが抑えきれなくなったが、それでも物腰は柔らかくして机をバンバン叩いている佐々木姉に突っかかっていくようなことはしなかった。彼女は落ち着いてレジの方へと向かって行き、座って佐々木姉を見ながら聞き返した。「佐々木さん、姉がお義兄さんを殴ったって言いましたか?あなたはそれを見たんですか?姉が先に手を出したんですかね?お義兄さんは殴り返したりしてないと?殴られてどうなりましたか?入院しました?」それを聞いて佐々木姉は図々しくもこう言った。「うちの俊介が先に手を出したんだとしても、それが何だって言うんだい?あんたの姉はね、しっかり躾されるべきだったんだよ。あの日、俊介は彼女にちょっと教育してあげようと思ってたけど、あなたが旦那さんを連れて来たから、唯月の面子を考えて、私たちが俊介に止めるように諭してあげたんだからね。あんたの姉がやった事を考えれば、一発叩かない男がこの世のどこにいるっていうんだ?自分が間違いを犯したんだから、夫に殴られて当然だろう。それなのに俊介にやり返すとか、有り得ないでしょう?しかも俊介の顔が腫れ上がるほど殴り、青あざまで作らせて、あの子はもう何日も家に帰る勇気なんてないんだよ。唯花、あんたはお姉さんより何歳か年下だけど、もう結婚して一人前になっただろう。つまり、あんたはお姉さんの保護者的存在でもあるわけだ。だから今回の件について、私たちはあんたと話し合いに来たんだよ。お姉さんに何か手厚い贈り物でも買って、うちに来て俊介に謝罪するように言いなさい。それから、今後は絶対に俊介に手を上げないって誓約書も書かせるのよ。そして俊介を家に連れて帰るの」佐々木姉のこの話を聞いて、内海唯花と牧野明凛は認識を新たにした。内海唯花は佐々木姉がかなりのクズ人間だということは、前回姉が来て彼女に不満をぶちまけた時に知っていた。今こうやって実際目の前にしてみると、この人間は本当に愚劣の極みであった。彼女は怒りで呆れ笑いしてしまった。佐々木家の母娘は内海唯花が口を挟む間もなく、姉のほうが話し終わると、今度は続けて母親が話し始めた。「唯花さん、うちの子がさっき言ったのは道理にかなってるでしょ。どこの嫁入りした女が仕事もせず家にいて食事の用意すらしないのよ。俊介は働かなきゃいけないし、仕事も
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第154話

そこへ佐々木姉は口を挟んだ。「自分で産んだ子なんだから、責任を持つべきなのは自分自身でしょ。祖父母が面倒見る義務はないわ」「そうよ。自分で産んだんだから、自分で責任持たなきゃね。じゃあ、そういうあんたはどうなのよ?」佐々木姉は口を大きくパクパクさせた後こう言った。「私のお父さんとお母さんは喜んで私の子供を見てくれてるのよ。できるもんなら、あんたの姉にも自分の両親にお願いして子供の世話でもしてもらえば」内海唯花は佐々木姉の目の前に置いてあったコップを持ち上げ、中身を彼女の顔に勢いよくぶちまけた。「ちょっと!唯花、あんた何すんのよ!」「あんたの口は臭いし、毒ばかり吐くようだから、私が代わりに洗ってやったまでよ」内海唯花は冷ややかな目でこの母娘二人を睨みつけていた。佐々木姉は怒りで手が出そうになったが、母親がそれを制止し、娘にこう言った。「唯花さんの両親は十数年前に亡くなってるでしょう。あんたが言ってはいけないことを言ったんだから、彼女が怒って当然よ」「でも、こいつだって私に水をかけて、服がびしょびしょになっちゃったじゃない。唯花、あんたこの服が一体いくらするかわかってんの?あんたに弁償できる額だと思う?」牧野明凛は横で力を込めて掃き掃除をしていて、やっと口を挟む隙を得てこう言った。「あなたのその服がブランド物なら、何万円もするでしょうね。でも残念ね、それって似せて作られたものだから価値なんてないですよ。もしそれを二万ちょっとで買ったのなら、騙されたようなものだわ。そんなに払っていないなら、二千円ちょっとでしょうね」佐々木姉は顔色を変え、牧野明凛を指差して怒鳴った。「あんたに何がわかるのよ。そっちこそブランドを真似して作ってる廉価版の店で買ったやつでしょ?私のは正真正銘ブランド物よ。一着二万円以上する服なんてあんたに着られる?自分じゃ買えないからって私に嫉妬して、私が着てる服を貶すわけ?」牧野明凛はふんと鼻を鳴らして言った。「私が着てる服はね、適当に選んでも数万円するものなの。ブランド物って何十万もするわ。あなたが今着てる服は、うちだったらテーブル拭き用の雑巾でしかないわね」「あんた……」佐々木姉は激怒して顔を真っ赤にさせた。彼女は心の内では自信がなかった。実際、数千円でこの服を買ったのだ。彼女はこのブランドのサイト
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第155話

「もちろん、あなたが自分の夫を下僕と称して奴隷にするんだったら、私は何も意見はないけど、私の姉は奴隷ではないので。現代は男女平等、夫婦平等、どちらのほうが偉いなんてないからね。この時代の風潮に逆らうのはあなたの勝手だけど、私の姉にまでその考えを押し付けないでよ。喧嘩の件に関しては、佐々木俊介のほうが先に手を出してきたよね。あの人、手加減せずお姉ちゃんを殴ったのよ、自分を守るためにそれに抵抗したんだから、姉は正当防衛ですけど!お姉ちゃんに謝罪させろだなんて、有り得ない話ね!逆に佐々木俊介に言って、お姉ちゃんに謝罪させるのが筋ってもんでしょう」内海唯花は氷のように冷たい様子で、一歩も譲る気はなかった。義理の相手家族を怒らせるかもしれないなど気にもせず、全く臆していない様子で言った。「あなた達が姉がお金を稼がず浪費してばかりだと言うのなら、姉を返してもらいましょうか。暴力に訴えないでちょうだい。あなた達は自分の家の子供が大事なんでしょ、なら私内海唯花も家族である姉がとても大切なの。それから、あの日、姉が一日に二万円以上使って服を買ったのは、私が夫を連れて来て両家の初めての顔合わせをするって言ったから、体面を保つために家族に新しい服を買っただけよ。あのお金はお姉ちゃんが自分のためだけに使ったわけじゃないの。ただこれだけのことで、姉を浪費家だと決めつけないでいただきたいね。姉が佐々木家に嫁いでから、今までずっと新しい服なんて買ってなかった。ただ姉があの日服を買っただけで、あなた達はいつまでもネチネチ、ネチネチと。そうね、佐々木家って本当に思いやりがあるわ。とっても親切な一家ですこと。嫁のことをこんなに思ってくれて、あなた達を表彰させていただきたいくらいよ」佐々木家の母娘は内海唯花の言葉に恥や怒りを感じていたが、もちろん怒りのほうが勝っていたのは言うまでもない。この二人はずっと自分達こそ正しく、内海唯花は間違っていると思っていた。「お姉ちゃんが一日ご飯を作らなくて、あなた達は佐々木俊介には妻がいるのにいないのと同じだと言ったわよね。じゃ、それと逆に姉も夫がいるのにいないのと同じじゃない?妻子を養えないのに、結婚するの?それなら、あんた達と一生一緒に過ごせばいいんじゃない。それにお姉ちゃんは何もしてないわけじゃないわ。おばさん、あなたって娘の家
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第156話

「あなたは私たちと一緒だと思うわ。俊介たち夫婦が仲良く過ごしてほしいって思ってるはずよ。夫婦なんだから、どうしたってお互いに納得いかないところは出てくるでしょう。もう終わったことはあまり気にしないのが一番ね」内海唯花は冷たい声で言った。「お宅の俊介さんは、足が折れてしまったのか、それともお姉ちゃんと住んでいる家までの帰り道が分からなくなってしまったのかしら。どうしてお姉ちゃんがあの人を迎えにいかないといけないのよ」姉に夫を迎えに行かせるとすれば、その時には絶対に、あの佐々木一家からまた良いように言われていじめられることだろう。しかも、姉が迎えに行くということは、つまり先に姿勢を低くして謝るということだ。内海唯花は決して姉のほうから頭を下げさせるようなことはさせない。佐々木俊介が家に帰りたいなら、勝手に帰るがいい。帰らないというなら、一生両親の家に住んでいればいいだけの話だ。彼女の姉はこれは幸いと、今や穏やかに暮らせているのだから。「あんたって人はどうしてこうも頑固なんだい」佐々木母は怒って唯花にこう言った。「どのみち俊介がそっちに帰らなかったら、あんたの姉に生活費だって渡さないんだからな。唯月が自分の力で生きていけるっていうんなら、一生佐々木家のドアを叩くんじゃないよ」そういい終わると、母親は娘を連れて去って行った。「あんたら姉妹が一体いつまで強気でいられるか、見させてもらおうじゃないの!」佐々木母は店の出口まで行くと、また後ろを振り返って一言吐き捨てて行った。内海唯花は無表情のまま全力で怒りを抑え込み、周りの物には当たり散らさずに済んだ。彼女の姉は本当に結婚する相手を間違え、入ってはいけない一族に入ってしまったのだ。女性が結婚する時は、結婚相手である男性の人柄だけではなく、その人が生まれ育った家庭までしっかりと確認しておかないといけないだろう。「唯花ったら、あんたってお人よしね。もし私だったら、今頃箒で殴りかかってたところよ。すっごいムカつく。今まであんなにゲスな人間は見たことないわよ。あなたのあの親戚たちといい勝負ね」牧野明凛は横で聞きながら、あまりに腹が立って失神してしまいそうなくらいだった。「あの人たちが手を出してこない限り、私も手を出さないわ。口だけでもあいつらに負けたりなんかしないんだから。
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第157話

「私からあなたのお姉さんに言ってあげる。これ以上こんな生活をしちゃ、いじめられるばかりだよ」姉は収入源がないので、ずっと劣勢なのだ。「だったらさ、お姉さんにこの店で働いてもらいましょうよ。私がお姉さんのお給料を出すから、あなたが出してあげる必要はないわよ。こうすれば、陽ちゃんの面倒だって見られるし、一石二鳥じゃない」牧野明凛は本当に唯花のためにそうしたいと思っているのだ。しかし、内海唯花はため息をついた。「お姉ちゃんは来ないわ。私たちの店は稼ぎが悪くて、私がネットショップを開いてようやくお金を稼げてるって思ってるんだもん」実際、彼女たちのこの店の利益はなかなか良かった。ただ彼女の姉は唯花のものになるはずのお金を自分のものにしたくないだけなのだ。彼女も姉を説得させる方法はなかった。「お姉さんは前、会社では財務部で働いていたでしょ。琉生の会社で財務ができる人を探してないか、お姉さんを雇ってもらえないか琉生に聞いてみるわ。おばさんの旦那さんの会社は結城グループや神崎グループと比べることはできないけど、それでも大企業だわ。福利厚生もしっかりしているから。琉生がいるんだから、お姉さんも会社で働きやすいでしょ。それに、お姉さんはもともと長年働いていて社会経験も豊富な人だし」内海唯花は少し考えてから尋ねた。「いいの?お姉ちゃんは仕事を辞めてから三年以上経ってるわ。その数年はずっと仕事してなかったから、職場復帰するのも、新しくまたスタートするのと同じよ。琉生君も今はまだ会社では経験を積んでいる途中でしょう。うちのお姉ちゃんを雇ってもらえるように会社に言うのは難しいんじゃないかしら」「週末琉生も誘ってご飯食べるでしょ。その時にできるかどうか聞いてみるといいわ。彼にその力がないなら、私自らおばさんの旦那さんに頼んでみるし」金城グループは今、彼女のおばの旦那さんがトップなのだ。「わかった。お姉ちゃんのために琉生君に聞いてみましょう。明凛、ありがとうね」「いいって、いいって。うちらの仲でしょ。あなたのお姉さんは私のお姉さんと同じことよ。唯月お姉さんの現状を見ると、私も心が痛くて、何か手伝ってあげて一日も早く社会復帰してもらいたいの。女性は強くならなくっちゃ。男なんかに頼りすぎちゃダメなのよ」佐々木唯月の結婚生活を見ていて、牧野明凛は多
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第158話

結城理仁のほうは相変わらず少し沈黙してから口を開いた。「佐々木家の人たちはもう帰った?なにもひどいことをされていないよな?」「何もひどいことはされていないけど、あの人達ひどい言葉を吐き捨てて行ったわ。もう少しで私、手を出しちゃうところだったんだから。うちのあの親戚たちと張り合えるくらいにクズ人間達よ。口を開けばお姉ちゃんのことばかり責めて、お姉ちゃんだけが悪いんだって。しかも、謝罪の品を持って佐々木家に来いなんて言うのよ。佐々木俊介に謝れだなんて、ふざけんな!」佐々木母とその娘の話になり、内海唯花はまた怒りが込み上げてきて、電話で悪態をついた後、彼に対して申し訳なく思えてきて結城理仁に言った。「結城さん、さっきは私かなり頭に血が上ってて、悪態ついちゃったわ。ごめんなさい」結城理仁は落ち着いた声で言った。「君はちゃんとあの人たちを散々罵っておいたか?箒で奴らを追い出すべきだよ。お姉さんに暴力まで振るっておいて、彼女に謝罪の品を持って謝りに行けとはどういう了見なんだ」「もちろん、あの人たちがぐうの音も出ないくらい散々に罵っておいてあげたわ。それで慌てて逃げだして行ったんだから。明凛ったら箒も準備済だったの。でも私たちは常識人ですから、気持ちをぐっと堪えて、箒で追い出すなんてことはしなかったわよ」結城理仁はそれを聞いて笑ってしまいそうだった。彼女は別にぐっと堪えられるような性格の持ち主ではない。ただ、姉の将来のため、まだ姉が何も決心していないから、これでもちゃんと我慢できたのだ。本当によく頑張っていた。「君のお義兄さんはどの会社で働いているの?」結城理仁は俊介が働く会社の社長にちょっと挨拶でもしに行こうと思っていた。佐々木俊介をしっかりと面倒見とけよと。それは相手の会社の社長を知っていればの話だが。「スカイ電機よ。主にいろいろな電子製品の部品を作ってる会社で、規模もとても大きいの。会社には従業員が三千人以上いるみたい。お姉ちゃんと佐々木俊介は大学を卒業してこの会社に入ったの。お姉ちゃんはもともと財務の仕事をしてて、財務部長をしていたんだから。お姉ちゃんったら純粋な人で、あの男を信じ過ぎたの。結婚してからは仕事を辞めて家で子供を産む準備をして、出産後は子供の世話をしてる。仕事を辞めてからもう三年以上経ってるの。佐々木俊介のほうはそ
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第159話

結城理仁は本気でそう思っているわけではないが、唯花を安心させるために聞こえの良い言葉を彼女にかけた。彼は一般世間からは離れた存在ではあるが、会社が人材募集をする際の要求が高くなっていることを知っている。内海唯花の姉が仕事を辞めてからすでに三年余りで、以前の社会経験があるとはいえ、現在はブランクがあるため、仕事を探すのは困難かもしれない。「今仕事中でしょう?仕事に戻ってね、もう切るから」結城理仁はうんと一言答えて、唯花が電話を切るのを待った。夫婦二人が電話を終えた後、内海唯花は続けて姉に電話をかけた。二人は将来の計画を綿密に話し合い、姉がご飯の支度をすると言い出して唯花はようやく電話を切った。その時には携帯の電池が切れそうで、彼女は充電器を取り出すと充電を始めた。昼に近くなる頃、結城理仁はスカイロイヤルホテルのマネージャーに電話をかけ、二人分の料理をいくつか頼んだ。そして、星城高校前の明華書店に配達させた。それは内海唯花への昼食だ。書店にはあと彼女の親友である牧野明凛もいることを考慮して、明凛の分も一緒に注文したのだ。ついでに牧野お嬢さんへの印象も良くしておいて、唯花の前で彼を誉めてもらおうという作戦だ。ホテルのマネージャーは結城理仁の電話を受けて、少しおかしいと思いながらも、何も尋ねる勇気もなく、ただ言われた通りにした。そして、午前中の仕事を終わらせた内海唯花は昼、夫からの愛のこもった餌付け弁当を受け取った。スカイロイヤルホテルのマネージャー自ら車を運転して、この二人分の昼食を本屋まで届けた。彼が本屋に着いた時、店の中には数人のお客が本を見ていた。内海唯花はちょうどデリバリーを頼もうと思っていた。弁当の入った袋を下げて入ってくる彼を見て、彼女と牧野明凛は驚いてそれを見ていた。「すみませんが、内海唯花様は?」マネージャーは礼儀正しく尋ねた。そう尋ねる彼の視線は内海唯花に注がれていた。なぜだかわからないが、彼はある種の直観で、目の前のこの女性が内海唯花であろうと感じ取っていたのだ。「私ですけど、あのう、どちら様でしょうか?」内海唯花は彼の質問に答えた後、相手を知らないので、誰なのか聞き返した。マネージャーはまず大きな袋をレジの裏にある部屋の台に置き、少しごちゃごちゃしていたので、ついでにそこをきれいに片づけ
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第160話

一緒に生活していくうちに、この二人は本当の夫婦になり、仲睦まじく幸せな日々を過ごすようになるかもしれない。内海唯花は我に返ると、慌てて弁当を自ら届けてくれたマネージャーにお礼をした。彼が車に乗って去るのを見送ってから彼女は店へと戻った。二人分、聞くまでもなく片方は牧野明凛の分だった。内海唯花が店に戻ると、牧野明凛はすでにきれいに手を洗って店の裏にある従業員休憩スペースに座っていた。親友が店に入って来るのを見ると、笑顔で彼女を呼んだ。「早く食べようよ。スカイロイヤルは七つ星ホテルよ。この間パーティーに参加した時にあそこの料理は食べたじゃない。あの日家に帰った後も、あの味を思い出していたのよ。私ってば、唯花のおかげでご馳走にありつけちゃったわ」牧野明凛は箸を内海唯花の手に持たせ、笑いながら結城理仁を褒めたたえた。「結城さんがこんなに気が利く人だなんて思ってもなかったわ。昼食を買って届けさせるなんて。彼、絶対あなたがデリバリー頼むのを見て、もっと良い物を食べさせてあげたいって思ったのよ。唯花、結城さんって、良いところがたっくさんあるみたいね。確かにあなたに警戒して半年で離婚するなんて契約をしたけど、お互い長く一緒にいれば、彼のほうからあの契約を破棄したいって言い出すかもだよ。あなたと一生、正真正銘の夫婦になりたいって。そしたら、どうするかしっかり考えなきゃだよ」内海唯花は苦笑して言った。「ただ今回食事をご馳走してもらっただけで、明凛ったら彼の口利き役になったの?彼とはまあまあうまくやってるわ。今のところ、私たちはどちらも深い関係になろうとは思ってないわよ」「私が食事一回奢られたくらいで丸め込まれる人間だと思うの?それに、あなたは私の一番の親友なのよ。なにがあっても、どんな状況でも、私はいつだってあなた側に付くんだから。唯月さんの旦那と比べて、結城さんが良くないって言える?」二人は食べながら、男の良し悪しについて熱く語った。「義兄さんも以前はお姉ちゃんにとても良くしてくれてたのよ。陽ちゃんが産まれてから、態度がだんだんひどくなっていったわ」人間というものは変わり身の早い生き物なのだ。彼女と結城理仁が夫婦になって一か月しか経っていないというのに、どこまでお互いに知ることができるだろうか?彼女は結城理仁のことをそこまで理解できてい
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