All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 161 - Chapter 170

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第161話

それを聞いて、そこにいる社長たちはとても驚き、すぐに九条悟に尋ねた。「九条さん、結城社長に好きな女性ができたんですか?一体どこのご令嬢ですか?」まさか結城理仁のような堅物に春がやってくるとは。「しいー、秘密ですよ。秘密にしてもらわないと、また社長から私がおしゃべりで噂好きな男だと言われてしまいますからね。社長は彼女に愛が芽生えたわけではなく、その方に興味を示している段階です。社長がその方を好きになれば、彼の性格から言ってきっと公表されることでしょう」公になれば、神崎姫華のように彼を慕って付き纏う人はいなくなるだろう。社長たちは激しくそれに同意した。彼らは結城社長はちゃんと女性を好きになるのだと知ることができただけで十分だった。ある社長の家には結婚適齢期の娘がいて、自分にも、もしかしたらチャンスがあるかもしれないと企んでいた。結城社長が女性を好きならば、彼は今後結城グループとの商談の時に娘を勉強のためにと一緒に連れて来て、社長に気に入られないか試してみてもいいのだ。どのみちその社長が気になっているという女性もまだ恋人関係になったわけでもないのだから。それなら公平にライバルとして張り合えるだろう。理仁は自分の頼りになる秘書が彼を売るような真似をしているとは知りもしなかった。彼は部屋の外で妻からの電話に出て、気分は上々だった。口元には笑みを浮かべていたが、もちろん話をする時にはいつも通り声を低く落ち着かせて「どうした?何か用事?」と尋ねた。「何もないんだけど、ただあなたに電話したくて。昼休憩中だった?もしかして邪魔しちゃったかな?」内海唯花は昼休憩の時間帯だから、彼の邪魔になっていないか心配していた。「今昼ごはん中なんだ」内海唯花はそれを聞いて「えっ」と一言漏らし、続けて彼に聞いた。「昼ごはんには少し時間が遅くない?仕事が忙しいのは知ってるけど、やっぱり12時になったら食べたほうがいいわ。胃が荒れちゃうわよ」「わかったよ」誰かから心配されるのは、はじめての事ではないが、唯花から心配されるのは他の人からされるのとは違って格別に心が温かくなった。「あの、結城さん、私にお昼ご飯を頼んでくれてありがとう。とっても美味しかったわ。食後のフルーツもとても新鮮だったし」やはり高級ホテルのサービスは最高だ。結城理仁は相変わ
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第162話

「今日は給料日だから、後で君に生活費を送金するよ。きちんと食事をするのは大切だし、必要なものは買ったらいいさ。そんなに節約しなくていいよ」「ううん、必要ないわ。前、私にくれたあの200万円の生活費、まだたくさん余ってるもの。うちの支出は少ないし、そんなにお金は要らないよ」彼女は家具を購入するときに数十万使った程度だ。残りのお金を生活に使うだけなら、あと数か月はもつだろう。それに、彼女も彼のお金だけ使って生活するわけではない。「使い切っていないなら、それを貯金しておいたら。男は金を気前よく使うものだからな。金は君の口座に入れておくから、貯金しておいて。今後もし何か急で必要になったら使えばいい。じゃないと、その金は俺が全部使ってしまうよ」内海唯花は少し考えて「そうするわね」と言った。彼女は家計簿をきちんと付けておくタイプだ。彼が毎月彼女に入れるお金はきちんと貯金しておいて、いくらもらったのかも記録をしている。将来、二人が本当に離婚することになった時、そうしておけば話が早いからだ。「結城さん、じゃあ、邪魔しないように電話切るわね」「今夜はたぶん遅くなるから、内鍵はかけないでおいて。俺が帰るのを待つ必要はないよ」内海唯花は彼が帰るのを待ったことは今までないが、理仁はたまらずこのように言った。内海唯花は一言うんと答えて、その後は何も言わずに電話を切った。彼女のこの態度で結城理仁は、彼女は彼がいつ帰って来るのかなど、全く気にしていないことがわかった。ああ、これも彼らが結婚当初にした契約のせいじゃないか。彼のやることには干渉するなと言ったのは彼なんだから。結城理仁は暫く黙ってから、ペイペイで唯花に40万円送金した。内海唯花はそれを受け取った。彼女がお金を受け取ったのを確認し、結城理仁はなぜだか気分がまた良くなった。旦那が稼いで、妻が使えばいいじゃないか。内海唯花はそれから少し昼休憩をとった。彼女は少しだけ昼寝した後、ハンドメイドの道具と材料を取り出して、再び手作りを始めた。それからどのくらい経ったのかわからないが、店の外に車のエンジン音が聞こえた。そしてすぐにカツカツと足音が聞こえ、自然にその方へ目線を向けた。「神崎さん?」内海唯花は驚いて一言声を漏らした。突然そこへ現れたのは神崎姫華だったのだ。
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第163話

「唯花、あなたってこういうハンドメイドもできるの?とってもキレイ」神崎姫華は内海唯花の作ったハンドメイド作品を見て、それを誉めた。彼女はさっきできたばかりの鶴のビーズ細工を手に取り、じいっと見つめた後それを絶賛して言った。「本当によくできてるわね!」「神崎さんが好きなら、いくつかプレゼントするよ。でも大した金額のものじゃないんだけど」「そんなことない、私とっても気に入ったわ」神崎姫華は立て続けに頷き「先にお礼を言っておくわね」と言った。そして、彼女はまた尋ねた。「唯花、これって売ってるの?」「ええ、そうよ。ネットでお店開いてるの。こういう手作りを売る店ね。普段から売り上げはまあまあで、今月は特に良かったの」神崎姫華は笑みを浮かべて言った。「後でそのネットショップをシェアしてちょうだい。インスタにアップして宣伝してあげるわ。とってもキレイだもの」内海唯花が今までとても苦労していたことを知っていて、神崎姫華は喜んで唯花の商品を宣伝するつもりだ。彼女ほど目の肥えた人間でも唯花の作ったハンドメイドを綺麗だと言うのだから、他の人も気に入るだろう。気に入らなくても、彼女のお勧めなのだから、彼女の顔を立てて唯花の売り上げに貢献するはずだ。神崎姫華は社交界においてかなりの影響力を持っているのだ。「どうもありがとう、神崎さん」内海唯花は神崎姫華に座るよう言い、彼女にお茶を入れた。挨拶の会話を済ませた後、唯花は尋ねた。「神崎さん、突然私のところに来て、何か私に用事があるの?」もちろん、彼女は自分に神崎姫華を手伝えるようなことがあるとは思っていなかった。なんといっても彼女は神崎グループのお嬢様なのだから。内海唯花は数日前、親友と結城家御曹司と神崎姫華の噂をしていて、その数日後にこうやって神崎姫華本人がまさか彼女のところにやって来るとは夢にも思っていなかった。二人はまるで長年付き合ってきた友達のような感じだ。こんな縁があるとは内海唯花も信じられなかった。本当に幸運の持ち主だとしか思えない。神崎姫華のような本物の名家の令嬢と知り合えるなんて、牧野明凛のようなお金持ち家庭出身者でさえもそんな機会には恵まれない。彼女はそのような人たちと無縁の一般人なのにこのような出会いがあるとは。内海唯花は夜家に帰る時に、宝くじを二枚買って
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第164話

神崎姫華が結城理仁を追いかけることは家族だけが反対しているのではなく、彼女の親友でさえも彼を追いかけるのは難しいから、諦めるように諭していた。さらに言えば、お互いの会社はライバル関係にある。それに比べ内海唯花は彼女にエールを送った。それで彼女は内海唯花に頼り、唯花を気持ちを打ち明けられる親友と捉えるようになったのだ。「もし結城社長に妻子があったり、それか彼女がいるとするなら、彼がいくら優秀でも私だって追いかけるようなことはしないわ。私、神崎姫華は優れた人間なんだから、他人の男を奪うような真似なんかしない。でも、彼は独身なんだし、彼のことが好きなら行動を起こさなきゃ。努力したなら、たとえ結果がどうなっても後悔することなんてないでしょ」神崎姫華は心に溜まった本音を一気に吐き出した。内海唯花は心の内で思った。神崎姫華の性格は他の金持ち同様、傲慢だと聞いていた。彼女にはそうなるだけの条件もあるし、横柄でわがままだと。しかし、この時、彼女には姫華が恋に悩む普通の女の子にしか見えなかった。神崎姫華のこの考え方を内海唯花も理解できた。それにその考え方はとても良いとも思った。親友に付き合ってパーティに参加したあの夜、結城社長に関する噂は耳にした。彼はまだ独身で、出かける時にはボディーガードを従わせて若い女性が近づくのを許さないと。彼はどのような若い女性にもそのチャンスを与えなかった。神崎姫華だけが大胆にも公の場で彼に告白し、それでようやく結城社長と噂になったのだ。「神崎さんは間違ってないわ。誰にだって本当の愛を追い求める権利があるのよ。神崎さんがさっき言った言葉を借りれば、結城社長は未婚で、彼女もいないんでしょう。それなら、あなたが彼を追いかけたって違法じゃないんだし、倫理的な問題もないし、いたって普通のことだわ」神崎姫華はそれに激しく頷いていた。「唯花、あなたが最初に私が結城社長を追いかけるのに賛成してくれた人よ」内海唯花は笑った。これで神崎姫華がどうして彼女のところに来たのか理解できたというものだ。何かをする時に、家族や友人から支持を得られず、突然ある人が彼女の味方について支持してくれたら、当然その人のところに行って、自分の気持ちを訴えるだろう。「唯花、あなたは恋愛経験がある?」「私?大学の時に一度恋愛したことある
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第165話

「男の人を追いかけるっていうなら、実際のところ男性が女性を追いかけるのとだいたい同じよ。相手に合わせて諦めないで、根気強く努力を続ければいつか必ず結果が出るわ」神崎姫華は少し考えてから言った。「根気強く続けて、諦めないってのはわかってるの。実を言うとね、私の義姉さんも当初、積極的に兄さんを追いかけていたのよ。私はそれをずっと見ていたの。あの時はね、兄さんは結城社長と同じように傲慢で冷たく、全く心を動かされなかったんだから。義姉さんは毎日毎日、兄さんに付き纏ってたけど、一生懸命真心込めてやれば結果は出るのよ。兄さんは最終的に義姉さんに心動かされたわ。ある時から義姉さんはもう諦めようと思って、兄さんの前には現れなくなったの。ところが兄さんは彼女がいることに慣れちゃって、もう姿を見せない、諦めるって気持ちを見せたとたん、今度は兄さんのほうが追いかけるようになったの。今はね、この町で私の兄が奥さんを溺愛しているって知らない人は誰もいないわ」神崎姫華が最も憧れているのは兄嫁の大恋愛結婚だった。兄嫁がはじめ兄を追いかけていた頃、今の彼女と同じように確かに苦しい時期を過ごしたが、最後はまるで甘いハチミツの中に溶け込んだかのように、兄からとても愛され甘い日々を過ごしている。結婚した後も、彼女の兄は妻を依然として溺愛していて、さらに磨きがかかっている。内海唯花は神崎グループの当主である社長が妻から追われる立場で、最終的に結婚すると決めたとは思ってもいなかった。彼女は笑って言った。「あなたのお義姉さんが実例としているんじゃないの。お義姉さんに習って、その経験を教えてもらったら」「義姉さんは今、私を応援しようとはしないの。兄さんが反対しているから。前は私側についていてくれたんだけど、家族が頑固として反対するものだから、義姉さんもそっちに流されちゃったのよ」内海唯花は同情して神崎姫華を見ていた。名家の令嬢、地位の高い女性は結婚に関して、たぶんそんなに自由ではないのだろう。名家の間では政略結婚なるものは多いらしい。「彼が好きな物を毎日贈ったら?それから、男性を捕まえるにはまずは彼の胃袋を掴まなきゃ。毎日美味しいものを届けるのよ。最初は彼が全く相手をしてくれなくて、あなたを困らせるようなことをしたとしても、粘り強く諦めなかったら、ある日あなたを受け入
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第166話

神崎姫華「……」彼女は横柄でわがままか?少し考えて、神崎姫華はそれを認めるしかなかった。確かに自分は少しわがままなところがある。彼女は神崎家の皆から可愛がられてきた。そのせいで傲慢で人を見下すような人間にはなっていないが、確かに人付き合いがしやすい人間というわけではない。彼女が気に入らない人が目の前に現れたら、遠慮なしに人に指示して二度とその人間を目の前に現れないようにする。相手には少しも面子など与えてはやらない。それは神崎家と関わりのある親戚でさえも例外はない。暫くして、神崎姫華は感激して内海唯花に言った。「唯花、ありがとう。この年になってもこの私に面と向かってこんなふうに性格を直すよう注意してくれる人はいなかったの」内海唯花は心の中で、あなたの身分を考えたら、誰があなたを怒らせるようなことが言える?と思っていた。彼女と神崎姫華は同じ世界に住む人間ではなく、さらに姫華が彼女を恋のアドバイザーとして思っているから、大胆にもこのように言えたのだ。「唯花」昼休憩をしていた牧野明凛は内海唯花と誰かの話声を聞いてやって来た。神崎姫華を見た瞬間目をこすってみたが、ああ、知らない人だと思った。しかし、どうも顔に見覚えがあった。どこかで見たような気がするのだ。牧野明凛は神崎姫華本人と直接会ったことはないが、見覚えがあると思ったのはネットで彼女の写真を見たことがあるからだ。彼女が結城社長と神崎姫華のゴシップの噂をする時、親友と一緒になって、この二人は家柄が釣り合っていると話していた。「明凛、休憩は終わったの?」内海唯花は親友を呼んで神崎姫華に紹介した。「神崎さん、こちらは私の親友でこの店の共同経営者である牧野明凛よ」神崎姫華は牧野明凛に対しては、あの時感じたような親しみは持てなかったが、内海唯花からの紹介であるから、無下にはせず高貴で優雅な様子で明凛に対して会釈した。これが彼女なりの挨拶と言える。牧野明凛は目の前にいるこの女性が見たところ傲慢で美しい女の子だと思った。それが神崎グループ率いる社長兼神崎家当主の妹で、公に結城社長を追いかけている神崎姫華だと知り、あまりの驚きですぐには反応できなかった。そのぽかんとした彼女の様子に、神崎姫華は思わず笑ってしまった。神崎姫華は内海唯花に好感を持っていて、思っていることを喜
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第167話

神崎姫華を見送った後、牧野明凛は興味津々で尋ねてきた。「唯花、あなたどうやって神崎さんと知り合ったの?しかも彼女からあなたに会いに来たんでしょ」内海唯花は神崎姫華にバイクを止められ、彼女を結城グループに送ってあげたことを牧野明凛に教えた。牧野明凛「……そんなことまでやっちゃうとは」神崎姫華は結城家の御曹司を追いかけるのに必死で、勇気もやる気も満々だと言わざるを得ない。「神崎さんって、噂に聞くような破天荒な性格じゃないように思うわ。彼女は確かにちょっとプライドが高いところがあるけど。彼女の家柄を考えればそうなるのは当然よ。実際は、彼女の考え方ってすごくまともよ。彼女はとても結城社長のことを好きだけど、もし彼に彼女がいるんだったら、絶対に彼を追いかけるようなことはしないって言ってたし」プライドの高い神崎姫華は他人の恋路の邪魔をするようなことは絶対にしないのだ。牧野明凛はそれに賛同して言った。「そういうことならいいじゃない。私たちと彼女は住む世界が違うから、付き合ってみないと彼女の本当の人柄は分からないし。噂話なんて完全に信じちゃダメね、自分の目で見たことですら、それがいつも真実とは限らないんだから。人から聞いたことなんてなおさらよ」神崎姫華は高貴な身分であるから、多くの人が彼女に嫉妬して、わざと彼女は横柄でわがままな理不尽な人だと噂を流した可能性だってあるのだ。神崎姫華が自分のところにやって来ても内海唯花にはなんら影響はない。唯花はいつもやっていることをいつも通りするまでだ。しかし、牧野明凛はまた内海唯花に、あるおばさんの誕生日パーティに付き合ってくれとぐずり始めた。「今度のパーティーは大塚家の別荘で行われるの。大塚さんはおばさんのお隣さんで、ビジネス上の付き合いがあるのよ。だから仲はとても良いの。そうじゃなきゃ、おばさんだって私を連れて行こうとしないわ。唯花、お願い一緒に来て。おばさんは私と大塚家のお坊ちゃんとの仲を取り持つために呼んだのよ」牧野明凛はこの大塚家の御曹司に少し覚えがあった。結局、彼女はよくおばさんの家に遊びに行っていたし、大塚家とは隣同士だから彼に会う機会はあったのだ。大塚家の坊ちゃんは背は低めでふっくらとしていて、容姿は普通だ。彼がもし名家の生まれでなかったら、街中で誰一人として彼に注目する人はいないだろう
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第168話

牧野明凛は口を尖らせて言った。「ちょっとブサイクなのよね。容姿が良くない男と結婚したら、生まれる子供だってブサイクでしょ。あなた達みたいにやっぱり夫婦どちらも容姿が良いのが一番よ。そしたら、生まれてきた子供だって可愛いでしょ」彼女は親友のように向上心のあるサラリーマンと結婚するのには賛成だ。結城理仁は名家の出身でなくても、彼は自分の能力で結城グループに入りホワイトカラーになったのだから。結城グループ本社に入れる人は、どの人もエリート中のエリートなのだ。内海唯花「……あんまり小説ばっかり読まないほうがいいわよ。明凛は小説の読み過ぎで、自分もその中のヒロインみたいに若くてカッコよくて、お金持ちの社長と出会いたいって思ってるんじゃないの。若い社長がヒロインだけを愛して一途で、溺愛する系のね。明凛、あれはただの小説よ。現実世界のどこにそんなに若い社長がゴロゴロ転がってる?結城グループの社長も若いけど、あれは先代からもう大金持ちで、そんな家に生まれたんだから、比べようがないわ。あなたも聞いたことがあるはずよ。結城家の御曹司のような社長を追いかけたくても、本人に会うだけでも自分が出世するより困難だってね」牧野明凛は口を開き、そうではないと釈明しようと思ったが、何も言葉が出てこなかった。何も言えないのだ。小説に出てくる主人公に憧れを抱かない人間なんていないだろう。しかし、彼女は別に社長などと結婚したいと思っているわけではない。彼女はそのような男性には本当に興味がないのだ。「唯花、もう一回私に付き合ってよ」「行かないってば」「唯花、私たち友達でしょう?」内海唯花は顔も上げずに「友達よ」と言った。「友達が困っている時には、助けてくれるよね?」「あなたが困っている時には、もちろん助けに行くわよ。でも、今回はお見合いするのと同じでしょう。別に何も困ることなんかないじゃない。だから私の手を借りたいなんて思わないでちょうだい」牧野明凛は必死に助けを求めた。「唯花ちゃん、今回だけ、本当よ。今回で最後だから。ほら、美味しい物もたくさんあるわ、ご馳走があなたを待ってる!」「今日お昼にスカイロイヤルホテルの料理も食べたし、あれでもうご馳走を満喫したわ」親友が諦める様子がないので、内海唯花は最終兵器を出すしかなかった。「彼とデートして
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第169話

内海唯花は深夜11時にようやく店を閉めて、電動バイクに乗って家に帰った。「内海さん、気をつけて帰ってね」隣の店の女店長がいつも通り親切に彼女に注意した。内海唯花は微笑んで「わかりました」と返事した。女店長は遠ざかる内海唯花を見つめながら言った。「本当に努力家でいい子なんだから。可哀そうな身の上で、貪欲なクズみたいな親戚にも付き纏われたけど、彼女はそれに負けず立ち上がることができる子だわ。あのような親戚たちに良いように利用されなくてよかったわ」「見ていよう。内海さんは幸運の持ち主だ。その運は後から開花するんだよ。彼女はやっぱり良い運気を持ってる。それに、後は富や地位も手に入れるだろう。最初は苦しいことが多いけど、それを過ぎれば幸せな人生が待っているんだ。あの彼女をいじめていた奴らは、将来彼女の運にあずかりたいと思っても一滴さえもらえないだろうねえ」女店長は夫をちらりと見て、唇を尖らせて言った。「毎日毎日口から出まかせを。人の運勢を見ることができるなら、なんで占いの店でも開いて金を稼がないんだい?妻の私の運勢を占ってちょうだいよ。私はいつになったら大金持ちになれるのかしらね?さあ、さっさと店の前を片付けて、閉めたら風呂に入って寝るわよ」女店長は夫が運勢占いの本を見ただけですぐに人の運を占えるようになるとは信じていなかった。そんなに簡単に運勢占いができるようになるなら、みんな今頃占い師になっているだろう。内海唯花が家に到着したのは深夜11時半で、家に入った時に中は真っ暗だった。結城理仁がまだ帰って来ていないのを知り、内鍵はかけなかった。こんなに大きな家に夫婦二人だけで住んでいて、普段はどちらも仕事で家にいない。部屋の中は冷たくがらんとしていた。お腹が少しすいたので、唯花はキッチンへと行き、冷蔵庫を開けて中にある食材を確認した。そして、卵とネギ、天かすを取り出してうどんを作る準備をした。外から鍵を開ける音が聞こえ、彼女がキッチンから出ると結城理仁が玄関を開けて入って来るのが見えた。「結城さん、おかえりなさい」結城理仁は彼女のほうに顔を向け、うんと一言返事し、鍵をかけると歩きながら彼女に尋ねた。「君も帰ってきたばかりなのか?」「明凛に用事があるから、今夜は私が店の戸締りをしたの。私はいつもは深夜11時半くらいに家に着
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第170話

「できてたんだけど、神崎さんが突然店にやって来て、気に入ったって言うから彼女にプレゼントしたの。私たち一緒に暮らしているし、いつでもあなたに作ってあげられるから」結城理仁はそれを聞き、顔を曇らせ、真っ黒な瞳で彼女を凝視した。内海唯花「……結城さん、もしかして怒った?」結城理仁は怒った様子で声には冷たさが含まれていた。「君は俺にくれる予定だったものを、俺に聞くこともなく他の人にあげたのか。それを怒ったらだめだって?」しかも神崎姫華にやるとは!神崎姫華は彼女の夫を追いかけ回している女性だぞ、わかっているのか?彼にあげる予定だった鶴を自分の恋敵にあげるなんて。本当に全く心が広いことで!内海唯花は携帯を見るのをやめ、お椀を持って食べながら歩いて来ると、結城理仁の横に座って彼の機嫌を取るために言った。「結城さん、ごめんなさい。私が悪かったわ。明日作ってあげるから、怒らないでね」結城理仁は暗い顔のまま彼女を見つめていた。そして、薄い唇をきつく結んでいる。彼の気が晴れていないのを知り、内海唯花はあのうどんを彼のほうに差し出して言った。「じゃあ、私の夜食ちょっとおすそ分けするから」結城理仁は相変わらず暗い顔をして「君の食べかけを、俺に食べさせる気か?」と言った。彼は少し潔癖なところがある。誰かが食べたものは絶対に口にしない。「さっき数口食べただけなのに。嫌ならいいわ。私お腹すいてるし」内海唯花はそう言うとすぐに手を引っ込め、引き続きうどんを食べ始めた。「私の料理の腕は最高なのよ。普通のうどんが私の手にかかれば、すっごく美味しくなるんだから。要らないって言うなら、本当に損してるわ」「内海さん、話をそらさないでもらえないかな。俺たちはあの鶴の話をしているんだよ」「もうあげちゃったんだもの。まさか神崎さんのところに返してくれなんて言いに行けないでしょ?彼女はお母様と一緒に海にバカンスに行くって言ってたから、たぶんもうこの町にはいないと思うわ。それに、私は神崎さんがどこに住んでるかなんて知らないし」ああいう富豪たちが住んでいる屋敷はとても高級で、安全対策もバッチリだ。たとえ彼女が神崎お嬢様の住んでいるところを知っていても、彼女の家の玄関にもたどり着くことはできないだろう。「ごめんってば。あなたの同意を得ずに、あげるはず
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