元々、晴人はイリヤを五日間だけ拘留させるつもりだった。しかし、このやり取りを経て、彼の考えは変わった。晴人は若い警官に尋ねた。「拘留の最長期間はどれくらいだ?」「三十七日です」「じゃあ、その期間いっぱい留めておいてくれ」若い警官は驚いた顔をした。市役所・一輝のオフィス晴人の決定について、一輝は特に意見を述べず、ただこう言った。「……君がそうするのを、お父さんは認めるのか?」「認めなくても、ここに口を挟む権限はないだろう」晴人はソファに座り、背もたれにもたれかかりながら落ち着いた表情で言った。「イリヤが出てきたら、そのまま嵐月市に送還する」「君、俺をうまく利用しようとしてるな?」一輝は苦笑しながら晴人を探るような目で見た。「今回そんなに怒ってるのは、高村の件があるからか?」先日の警察署で、一輝は晴人が高村に対して特別な感情を抱いていることに気づいていた。晴人は否定せず、ただこう言った。「……あいつの性格、少し直させる必要がある」イリヤは自分の行いが間違っていることを分かっていながら、一輝を頼りに好き勝手してきた。これまでイリヤが問題を起こすたびに、晴人は彼女を叱る程度で済ませ、後始末をして被害者に補償してきた。だが、今回イリヤが標的にしたのは高村だった。それは彼にとって、絶対に許せない一線だった。一輝は軽く首を振った。「あいつもいい歳だ。直すならとっくに直ってるはずだ……高村とイリヤの溝は深まったな。これからもっと厄介なことになるぞ」晴人が行方不明だった頃、夏希夫婦はすべての愛情を娘であるイリヤに注いだ。その結果、イリヤは甘やかされて傲慢でわがままに育ち、天真爛漫というより無知と高慢さを兼ね備えた性格になってしまった。晴人が戻ってきた後も、夏希は埋め合わせをしようとしたが、それでもやはり幼い頃から育ててきたイリヤを特に可愛がっていた。言うまでもなく、ウィルソン氏の態度はさらに顕著だった。一輝は晴人とその父親のやり取りを見たことがある。会話のほとんどが仕事の話で、冷たく疎遠な雰囲気が漂っており、家族の温かみなど微塵も感じられなかった。ウィルソン氏が晴人を扱う態度は、まるで「優秀な後継者」であればそれでいいというものだった。「高村は俺の身分を知らない」晴人は静かに言った。「もし将来高村
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