「シー」彩乃は手で合図をした。香織は相手を見て、眉をひそめた。「何してるの?」どうしてこんなにびくびくしてるの?話があるなら話せばいいじゃない。なんでこんな隠れた場所に引きずり込むの?悪者かと思っていた。「見られるのが怖かったの!」彩乃は笑った。「お礼を言いたくてね」「何に?」香織は服を整え、尋ねた。「わかってるくせに」彩乃はまだ言いにくそうだった。香織は本当に知らなかった。「言わないなら、私は行くわよ?」「急がないでよ!」彩乃は彼女を引き止めた。「もう出勤時間だわ」香織は淡々とした口調で言った。彩乃は気まずそうに笑った。「昨日、私があなたに場所を教えたことを言わなかったよね。あなたが私のことを考えてくれたんだとわかってる」香織は服の裾のほこりを払うようにしながら言った。「感謝しなくていいわ。院内で私一人が排斥されればいいの。あなたたちは少なくとも団結しなさい。そうすれば、私たちはもっと大きな価値を生み出せるでしょう?」彼女の言葉には裏の意味があった。彩乃もその意味を理解し、気まずくなった。結局、最初に彼女を疎外したのは自分たちだったからだ。実際、香織が言う通りだ。みんなが団結しなければ、もっと大きな成果を出せない。ここに来たばかりの頃、みんなが自分は救世主だと思っていた。人類を救えると信じていた。でも、現実はそんなに簡単ではなかった。「実は、私たちは結構団結してるのよ」「私も信じてるわ。私たちは団結していて、未来を共に切り開けると」香織は微笑んだ。彩乃は香織に少し見方が変わった。彼女も全くダメな人間じゃないようだ。みんなが彼女を狙っても、彼女は誰にも復讐しなかった。自分が彼女に逆らっても、彼女は追求しなかった。彼女にはその権利があるのに。何と言っても、もうすぐ院長になるのだから。「じゃあ、あなたをもう邪魔しないわ。先に入って」「出勤時間にサボっちゃダメよ」香織は冗談めかして言った。「私は一番勤勉よ」彩乃は言った。香織は院内に入り、院長室に呼ばれた。院長は荷物を整理していた。ドアは開いていて、香織は中に入った。院長は彼女が入ってくるのを見て、手招きした。「こっちにおいで」香織は近づいた。「俺の個人的なものはもう片
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