部屋の中には圭介だけではなく、憲一もいた。強いアルコールの匂いが鼻を突き、部屋全体に充満していた。圭介がどれほど飲んだのか、彼女には分からなかったが、憲一はかなり飲んでいるようだった。彼はソファに体を沈めていて、薄暗い部屋の中でも、赤くなった顔がはっきりと見て取れた。ジャケットはすでに脱ぎ捨てられ、横に放り出されていた。シャツの襟元も開いていて、だらしなく、露出している肌も赤くなっていた。香織は眉をひそめながら、まず圭介の様子を確認した。圭介は憲一のように泥酔してはいなかった。彼の顔はあまり赤くはなく、どうやら酒が顔に出にくいタイプのようだった。ただ、彼女を見つめる目には、幾分かぼんやりとした色が浮かんでいた。「来たか」彼は香織に手を差し伸べた。香織は手を彼の手のひらに乗せ、その勢いで彼の隣に座った。「憲一はどれくらい飲んだの?」圭介は彼女の質問に答えず、代わりに深い目で彼女を見つめた。香織はその視線に少しぞっとして、目を逸らしながら言った。「そんなに見つめないで、どうしたの?」「君が最初に気にかけるのは俺じゃなくて、他の男か」「……」香織は一瞬言葉を失った。「本当に酔っ払ってるのね」もし正常なら、こんな言葉は口にしないだろう。「外に出るのを手伝うわ」彼女は圭介の腕を掴んだ。彼女は小柄で、一人では彼を支えることができなかった。越人が近づいて提案した。「憲一を先に送り届けるように手配して、戻ってからお手伝いしましょうか?」香織は憲一がひどく酔っているのを見て、「お願いするわね」と答えた。越人はスタッフを呼び、憲一を個室から運び出すのを手伝わせた。すぐに部屋には香織と圭介だけが残った。「歩ける?」彼女は尋ねた。圭介も誰かに運ばれないと、ここから出られないんじゃないか?彼女は心の中で思った。「酔ってないよ」彼は香織の手を握り、体を傾けて彼女に寄りかかり、唇を彼女の耳元に近づけた。「香織……」香織はバッと立ち上がった。彼女はわざとそんなに大きな反応をしたわけではなかった。ただ、無意識にそうなったのだ。圭介のアルコールの匂いがする息が自分に近づいてきた時、彼女の頭の中に、恭平が自分にキスしたことが突然浮かんだ。彼女は拒絶した。圭介に向けて
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