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第六十話。

Penulis: 愛月花音
last update Terakhir Diperbarui: 2025-04-03 17:43:44

 その後、亜季は夕食作りに取りかかる。

 櫻井課長の「出るぞ」の声に合わせて脱衣場に向かった。

 すると和季は、お風呂で温まりポカポカになったせいかボーとしていた。今の内に素早く受け取ると、体を拭いて着替えさせた。

 水分補給をさせていると、しばらくして櫻井課長も着替えて出てきた。

 亜季は和季を幼児イスに座らせると、手早くビールとおつまみの用意をする。

 そうそう。櫻井課長に免許のことを話すのも忘れてはいけない。

 おつまみとビールをテーブルに置くと、思い切ってパンフレットを見せながら事情を話した。

「えっ? 教習所に通いたい!?」

 やっぱり驚いていた。

 櫻井課長は、お酒を飲みながら和季に離乳食を食べさせてくれていた。

「えぇ、近所のママさん達に誘われたの。大きくなると、送り迎えとか必要になるから一緒に通わないかって」

「だが……和季も居るだろ? 大丈夫なのか?」

 櫻井課長は離乳食を食べさせるのをやめて、パンフレットを手に取った。

 そう……そこが重要なのだ。託児所のことも話さないといけない。

「聞いた話だと、一時的に預かってくれる託児所が近くにあるの。申し込めば、その間だけでも預けてくれるって」

 やっぱりダメだろうか……?

 櫻井課長は悩んでいる様子だった。眉間にシワが寄って、渋い顔をしていた。

「お願いします! ちゃんと取れるように努力しますし。できるだけ迷惑をかけないようにしますから」

 亜季は必死に頼み込んだ。そうしたら、ハァ~ッとため息を吐いてきた。

「まぁ、何事も経験だ。やれるだけやってみろ。だが、やるからには真剣にやるんだぞ?」

「もちろんです。ありがとうございます!」

 嬉しさのあまり頭を下げた。

(やった~明日にでも手続きに行こう。あ、参考書とか買わなくては……それから)

 亜季は機嫌よく夕食の用意をした。気持ちは既に取る気満々だった。

 そして夕食を食べ終わると、櫻井課長は和季を寝かせるために寝室に向かった。

 その間に食器を洗うと、お茶の準備をする。ここからは大人の時間だ。

 数時間後。櫻井課長がリビングに戻ってきた。

「ふぅ~やっと寝てくれた」

「あ、お疲れ様です。お茶をどうぞ」

 ソファーの方のテーブルにお茶を置いた。 櫻井課長はソファーに腰を下ろすと、一息ついた。

 和季は櫻井課長に絵本を読んでもらうのが大好きだ。そのために寝
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     その後、亜季は夕食作りに取りかかる。 櫻井課長の「出るぞ」の声に合わせて脱衣場に向かった。 すると和季は、お風呂で温まりポカポカになったせいかボーとしていた。今の内に素早く受け取ると、体を拭いて着替えさせた。 水分補給をさせていると、しばらくして櫻井課長も着替えて出てきた。 亜季は和季を幼児イスに座らせると、手早くビールとおつまみの用意をする。 そうそう。櫻井課長に免許のことを話すのも忘れてはいけない。 おつまみとビールをテーブルに置くと、思い切ってパンフレットを見せながら事情を話した。「えっ? 教習所に通いたい!?」 やっぱり驚いていた。 櫻井課長は、お酒を飲みながら和季に離乳食を食べさせてくれていた。「えぇ、近所のママさん達に誘われたの。大きくなると、送り迎えとか必要になるから一緒に通わないかって」「だが……和季も居るだろ? 大丈夫なのか?」 櫻井課長は離乳食を食べさせるのをやめて、パンフレットを手に取った。 そう……そこが重要なのだ。託児所のことも話さないといけない。「聞いた話だと、一時的に預かってくれる託児所が近くにあるの。申し込めば、その間だけでも預けてくれるって」 やっぱりダメだろうか……? 櫻井課長は悩んでいる様子だった。眉間にシワが寄って、渋い顔をしていた。「お願いします! ちゃんと取れるように努力しますし。できるだけ迷惑をかけないようにしますから」 亜季は必死に頼み込んだ。そうしたら、ハァ~ッとため息を吐いてきた。「まぁ、何事も経験だ。やれるだけやってみろ。だが、やるからには真剣にやるんだぞ?」「もちろんです。ありがとうございます!」 嬉しさのあまり頭を下げた。(やった~明日にでも手続きに行こう。あ、参考書とか買わなくては……それから) 亜季は機嫌よく夕食の用意をした。気持ちは既に取る気満々だった。 そして夕食を食べ終わると、櫻井課長は和季を寝かせるために寝室に向かった。 その間に食器を洗うと、お茶の準備をする。ここからは大人の時間だ。 数時間後。櫻井課長がリビングに戻ってきた。「ふぅ~やっと寝てくれた」「あ、お疲れ様です。お茶をどうぞ」 ソファーの方のテーブルにお茶を置いた。 櫻井課長はソファーに腰を下ろすと、一息ついた。 和季は櫻井課長に絵本を読んでもらうのが大好きだ。そのために寝

  • 鬼課長とのお見合いで   第五十九話。

    (免許……? どうして、そんなことを聞くの?) 亜季は不思議そうに首を傾げた。「いいえ。免許は主人しか持っていませんが?」「あら、そうなの? これから大きくなると、塾や習い事とか送り迎えで必要になるわよ~」「私も普段は自転車なのだけど。上の子の習い事の送り迎えに必要だったから最近、教習所に通い始めたばかりなの。あ、そうだ。良かったら櫻井さんも一緒に行かない?」 亜季は思わない誘いを受けることに。車の免許か……。今まで課長が運転していたので考えてもみなかったことだ。「あ、でも……和季が居るし」「丁度近くに一時的に預かってくれる託児所があるわよ? 私は、その間だけ預かってもらっているの。えっと~確か教習所と託児所のパンフレットを持っているから、あげるわ。良かったら考えてみたら?」「ありがとうございます」 カバンからパンフレットを取り出して渡してくれた。 亜季はお礼を言うと、そのパンフレットを受け取る。 ペラッと見てみると、詳しく書いてあった。 本当に申し込めば一時的に預かってくれるようだ。 その後も免許の便利さや育児のことで話は尽きない。意見を聞いている内に、免許というものに興味を持ち始める亜季。 確かに和季が大きくなると、車が必要になるかもしれない。 習い事や塾……もしかしたら何かスポーツをやるかもしれないだろう。 そうなれば、送り迎えが必要になってくる。櫻井課長は仕事で忙しいだろうし……。 もちろん自分が免許を取れるかなんて分からない。 自分は器用な方ではない。でも櫻井課長に頼むだけ頼んでみてもいいかもしれないと思った。(もしダメなら諦めたらいいし。よし。帰って来たら、ダメもとで聞いてみよっと)  私は軽い気持ちで決断する。 その夜。夕食の下ごしらえをした後に、櫻井課長が帰ってくるのを待つ。 しばらくするとドアが開く音がした。今日は早く帰れるとメッセージがあった。「ただいま~」 櫻井課長が帰宅したようだ。亜季は慌てて、和季を抱き上げてから玄関まで出迎えに行く。「お帰りなさい。どうだったの? 久しぶりの会社は?」「あぁ、皆元気そうだったぞ。もう結婚のことや、お前のことやらで説明責めにあったが。はぁ~疲れた」 櫻井課長は、ため息を吐きながらネクタイを緩める。 (それは……また) 櫻井課長は、また営業部に戻る

  • 鬼課長とのお見合いで   第五十八話。

    「ハァッ……デキの悪い部下を叱り飛ばすより、精神と体力を使うのは何故だ?」 櫻井課長は、ため息混じりに味噌汁を飲み始めた。叱り飛ばすより疲れるらしい。 確かに、櫻井課長をココまで、ぐったりさせて疲れさせる人物を見たことがない。逆ならあったが。 会社の部下や上司たちが、この姿を見たら、きっと驚くだろう。 亜季でも驚いているぐらいだ。 亜季は苦笑いをした。チラッと和季を見ると、まだ半べそになりながら大人しくなっていた。よほど泣いて暴れたのだろう。「和季~ほら。機嫌直して離乳食を食べようか? お腹空いたでしょ?」 そう言いながらスプーンを口元に持っていく。ぐずりながらも口を開けて食べ始めた。「あ~ん」 亜季は、もう一口食べさせる。どうやらお腹が空いたらしく、あっという間に完食をしてしまった。 それを見ながら櫻井課長が「コイツ。ある意味、大物になるかもな」と呟いていた。「フフッ……そうですね。どうなるのかしら」 どんな風に成長するか楽しみだ。 その後。櫻井課長は朝食を食べ終わると、そのまま会社に出かけてしまった。 亜季は食器を洗った後に洗濯物を干していた チラッと庭から家の中を見ると、お腹が膨れて機嫌が直ったようだ。和季はオモチャを使って1人遊びを始めていた。 これなら、しばらくは大人しく遊んでてくれそうだ。 亜季はクスッと微笑むと洗濯物を干すのを再開させる。赤ちゃんだから汚したり、汗をかくので量も多い。干すだけでも一苦労する。今日はポカポカ陽気で天気がいい。(そうだ。せっかくだから和季を連れて、近くの公園に行ってみよう。ママ友ができるかもしれないわ) 洗濯物が干し終わると、和季をベビーカーに乗せて近くの公園に向かった。 公園は歩いて5分近くの場所にある。幼児用の遊具とかあるし、広い遊び場になっている。 幼稚園も近くにあるし、少し歩けばスーパーもある。帰りに買い物ができるから便利だ。 公園の中に入ると、数人の赤ちゃん連れや小さな子供を連れの母親たちを見かける。 亜季は緊張しながらも思い切って声をかけてみた。「あの……おはようございます。昨日から引っ越してきました、櫻井と言います。よろしくお願いします」「まぁ昨日から? はじめまして。私は木田(きだ)です」「私は、樋口(ひぐち)です。 よろしくお願いします」 次から次へと

  • 鬼課長とのお見合いで   第五十七話。

     慣れないことばかりだった海外とは違い、住み慣れた日本での生活。 亜季は不安より期待の方が大きかった。 すると一通りの指示が終わったのか櫻井課長がリビングに入ってきた。「和季の泣き声が聞こえたが。また悪さしたのか?」「あ、ごめんさない。 テーブルに乗り出すから注意したら、そのまま段ボールに頭ぶつかってしまって」「またか……相変わらず、そそっかしい奴だな」 亜季は苦笑いしながら報告すると、櫻井課長は呆れながら和季を抱き上げた。 ため息を吐くながらも、まだぐずっている和季をあやしてくれた。「後で近所に挨拶回りに行くぞ! これから色々と付き合いになるからな」「はい。そうですね」 仲良くなれるだろうか? 新米の母親だし、仲の良かったママ友とは離れ離れになってしまった。 アメリカでは特に仲良くしてくれた友達が1人居た。日本語も話せる人だったから、代わりに通訳もしてくれた。 その人のお陰で、他のママ友たちとも交流ができるようになれたが日本でも、そんな人ができるだろうか? そして夕方頃には無事に片付けが終了する。軽い夕食を済ませると、美奈子が帰ることに。 亜季と櫻井課長は車まで見送ることにした。「今日は、本当に助かったわ。ありがとう……美奈子」「遅くまで付き合わせて悪かったな。今日は、ありがとう」「いえいえ、どういたしまして。また何かあったら、遠慮なく呼んで下さい。またねぇ~」 美奈子は、そう言うと笑顔で手を振りながら帰って行った。 本当に頼りになるし、信頼ができる親友を持ったと思う亜季。 美奈子には本当に感謝ばかりだと。「帰ったな。亜季は素敵な友人を持ったな?」「ええ、自慢の親友なので」 亜季は笑顔でそう答えた。クスッと微笑む櫻井課長を見て嬉しくなる。 これからもずっと変わらない関係だろう。「さて、挨拶回りをしないとな。この日のために買ったヤツを出してくれ」「はい。分かりました!」 亜季は元気良くそう言うと、自宅に入り挨拶回りに必要な物を取りに行く。 そして一軒一軒、挨拶回りをする。これからの近所付き合いに必要なことだ。 子供が居るので特に気をつけないとならない。よく泣く子なので。 終わった頃には辺りも暗くなってしまった。周りの方々は、どの方も親切そうな人が多くて安心する。「ふぅ……やっと挨拶回りが終わったな」「そ

  • 鬼課長とのお見合いで   第五十六話。

    「あの時は、つい怒ってしまったが、確かに亜季は、そそっかしいところがあるな」「あ、智和さんまで酷い。私はそこまで、そそっかしくないわよ」 櫻井課長まで納得してくるので、亜季はショックを受ける。 確かに少しは、そうかも知れないとは思っていたが。それを改めて指摘されると複雑な気持ちだ。「あの時は、たまたま浮かれていただけよ! それは、それで情けないけど」「それよりさ~亜季は、もう会社に戻る気とかないの? 辞めてしまったけど、頼んだら、また一緒に働けない?」 亜季が言い訳をしていると、美奈子がそう言ってきた。 再就職ができたら素敵なことだが。「ごめんなさい。勝手に辞めた手前もあるし。それに和季が、まだ小さいし……」 さすがに幼い息子を残して仕事に行くわけにはいかない。いくら託児所や保育園があるとしても難しいだろう。 和季は、まだまだ手がかかるし、目が離せない状態。 それに亜季は、そこまで両立ができるほど器用ではない。「それもそうか……残念だわ。また、一緒に働きたかったのに」「ごめんね。私も一緒に働けたら嬉しいのだけど」 美奈子の気持ちに亜季は嬉しくなっていると、櫻井課長が声を上げる。「あ、見えてきたぞ。あそこの2階建ての一軒家が、新しく住む住宅だ!」 櫻井課長が言った方向を見ると、確かに2階建ての一軒家が見えた。「うわぁ~いいじゃない。素敵な家だわ」 美奈子が驚きながらそう言ってくれた。亜季も、その住宅に驚いた。 子供が居るなら広い方がいいと思って購入した。 自分だと、よく分からないため櫻井課長に全て任せてある。 少し古いが、木造で落ち着いた造りになっている。ベランダもあるし、庭も子供と遊べるぐらいの広さがあった。「中古だけど構造もしっかりしてあって、中もなかなか広い。庭もあるから和季を育てるのに、いい環境だと思ってココに決めたんだ。亜季もガーデニングができるだろう? まぁ、俺も気に入ったって言うのもあるが……」 少し照れくさそうに、そう言ってきた。古風な家を選ぶところは櫻井課長らしい。「私も気に入ったわ。日本らしくて素敵」 さすがセンスがあると亜季は感心する。 そして美奈子が車を駐車場に停めると降りた。間近で見ても立派だ。 鍵を開けて中に入って行くと、言っていた通りに広々としていた。「荷物の受け取りは、午後からだ

  • 鬼課長とのお見合いで   第五十五話。

     櫻井課長は困ったように、子供をあやしていた。 フフッ……何だか、不思議な光景だ。いつ見ても。亜季はクスクスと笑った。 あれから亜季と櫻井課長は結婚した。 亜季は慣れない環境に戸惑いながらも英会話スクールに通い、必死に英語を覚えた。 そして、二人の間に新しい家族が誕生する。息子の|和季(かずき)だ。 顔は、どうやら櫻井課長に似たらしく、最近の彼の悩みは、この子の将来のことらしい。 顔で怖がられないか、心配だとか。昔の亜季たちでは考えられない悩みだ。 お見合いで始まった亜季と櫻井課長だったが、今は、とても幸せだ。「お~い。亜季。櫻井課長~」「あ、久しぶり~美奈子」 私は嬉しくて、同期で親友の美奈子に抱き付いた。美奈子とはアメリカに行ってからも、こまめに連絡を取り合っていた。 今でも信頼ができる大切な親友だ!「わざわざ来てくれてありがとう。ごめんねぇ~迎えに来てもらって」「いいわよ~私も久しぶりに会いたかったもん。櫻井課長もお久しぶりです!」 美奈子は櫻井課長を見て、頭を下げた。「こちらこそ。本当に悪かったな、玉田」「いえいえ。せっかくですから……さあさあ、向こうに車を停めてありますので」 美奈子は、ニコッと笑顔なると案内してくれた。 櫻井課長が仕事の都合で、また日本に戻ることに。部長として……。 そのため家族で日本に帰国することにした。 そのまま美奈子の車に乗り込み、新しい自宅まで送ってもらう。「しかし、写メとかで見て知っていたけど、和季君って、本当に櫻井課長に似ていますよねぇ~?」「まあな。ある意味、それが心配の原因だが……」 後部座席で櫻井課長は、和季を抱っこしながら心配そうに言っていた。 亜季はクスクスと思わず笑ってしまう。 和季は、それを気にすることもなく、外の景色に興味津々。窓を見ながら、お気に入りのガラガラをブンブンと振り回していた。 しかし、ブレーキの弾みで和季のおでこが、ガラガラとぶつかってしまう。 ゴンッと、もの凄い音が車内に響き渡った。「あっ……!?」 一同、驚くと和季は大泣きをする。車内だから破壊力が凄い。「お前がガラガラを振り回しているから悪い。よしよし……泣くな」 櫻井課長は和季をあやしてあげる。和季は目尻に涙を溜めていた。 亜季は助手席に座りながら和季の様子を見ている。美奈子は

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